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異世界養蜂革命  作者: 華蜂師
第6章:変革への門出
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110話 自然と共存するための学び

リハルトのギルド本部の一室では、新規参加者に向けた「蜂の魔物と安全対策」についての講習会が開かれていた。講師を務めるのは、建築部門のリーダーであるミリアムだ。

彼女の周りには、ミツル、エルザ、そしてこれから街道整備プロジェクトに参加する様々な地域から集まった人々が、真剣な面持ちで座っている。


「これから、みんなには街道整備の様々な作業を手伝ってもらうことになるけど、その前に、まず知っておいてほしいことがあるの」ミリアムは、優しい口調ながらも、その言葉には強い意志が感じられた。

「それは、この世界には、蜂の魔物と呼ばれる存在がいるってこと。彼らは、私たち人間にとって、蜂蜜をもたらしてくれる大切な存在であると同時に、危険な魔物でもあることを忘れてはいけないわ」ミリアムの言葉に、参加者たちは、緊張した面持ちで頷いた。

特に、農村部出身の人々は、蜂の魔物についてはある程度の知識を持っていたが、都市部出身の人々にとっては、未知の存在だった。


「特に、ハチミツを集めるために、巣に近づく場合は、十分な注意が必要よ」ミリアムは、大きな紙に炭で蜂の魔物の巣の絵を描きながら、説明を続ける。

「蜂の魔物は、種類によって、生息地や習性が大きく異なるの。フローリア村やベリル村周辺に生息しているハニィウィングやスティンガービーは、比較的おとなしい性質で、ミツルくんたちが安全に蜂蜜を採取できる方法を確立してくれてるわ」ミリアムは、ミツルの方を見て、軽く微笑んだ。


「でも、これから私たちが進んでいく地域には、まだまだ未知の蜂の魔物が生息している可能性がある。凶暴な性質を持つ種類や、毒性の強い針を持つ種類もいるかもしれない。だから、見慣れない蜂の魔物を見つけても、安易に近づいたり、刺激したりすることは、絶対に避けるようにしてください」ミリアムは、参加者たちに、蜂の魔物に遭遇した場合の対処法について、より具体的に説明していく。


「もし、蜂の魔物に遭遇したら、まずは、落ち着いて、距離を取ること。そして、大声を出したり、急な動きをしたりせず、ゆっくりとその場を離れて」ミリアムは、ゆっくりと手を動かしながら、蜂の魔物から逃げる様子を再現してみせる。

「もし、蜂の魔物が攻撃してくる気配を見せたら、慌てずに、この防護服をかぶって、身を守ってください」ミリアムは、実際に、養蜂部隊が着用している防護服をテーブルの上に広げながら、その使い方を説明する。


「この防護服は、蜂の魔物の針を通さない特殊な素材で作られていて、顔全体を覆うことができるフードも付いているので、安全性は抜群よ」参加者たちは、興味深そうに防護服を眺めていた。

「もし、万が一、蜂の魔物に刺されてしまったら、すぐに私に、もしくは、ミツルさんやエルザさんのような、養蜂に詳しい者に知らせてください。適切な処置を行えば、大事に至ることはないから、安心して」ミリアムは、参加者たちの不安を少しでも和らげようと、笑顔を見せる。


「蜂蜜の採取や巣の管理は、主にミツルくんたち養蜂部隊が担当するけど、みんなにも、蜂の魔物の生態や安全対策について、正しく理解しておくことは、とても重要なことなの」ミツルは、ミリアムの言葉に頷きながら、参加者たちに語りかけた。

「このプロジェクトは、単に、道を作るだけじゃないんだ。人と自然、そして魔物が共存する、新たな未来を切り開くための挑戦でもある。だから、みんなには、蜂の魔物とも、正しく向き合ってほしい。怖がるだけじゃなく、彼らの生態を理解し、敬意を持って接することが大切なんだ」ミツルの言葉に、参加者たちは真剣な表情で耳を傾けていた。


「そうそう! 蜂の魔物の種類によって、集めてくる蜂蜜の味や香りが全然違うのよ。中には、薬草の効果を持つ蜂蜜もあるんだから、本当にすごいわよね!」エルザが、目を輝かせながら、蜂蜜の魅力について語り始める。

「エルザさん、そんなに蜂蜜のこと好きなんですね…」参加者の一人が、少し呆れたように呟いたが、エルザは、全く気にする様子もなく、蜂蜜の話を続けた。


「例えばね、高地に住む“クイーンティラワスプ”っていう蜂の魔物が集める蜂蜜は、リラックス効果があって、不眠症に効くって言われてるのよ。それから…」エルザの蜂蜜話に、参加者たちは、次第に引き込まれていく。蜂の魔物への恐怖心は、少しずつ薄れ、代わりに、彼らへの興味と好奇心が芽生え始めていた。

「このプロジェクトを通して、みんなには、蜂の魔物との新しい関係を築いていってほしい。それは、きっと、この世界を変えるための大きな力になるはずだから」ミリアムは、力強いまなざしで、参加者たちを見つめた。彼女の言葉には、このプロジェクトにかける強い信念が込められていた。


講習会が終わると、参加者たちは、興奮冷めやらぬ様子で、口々に感想を語り合っていた。

「蜂の魔物って、最初は怖いと思ってたけど、話を聞いてたら、ちょっと興味が湧いてきたな」

「私も! 蜂蜜の種類によって、こんなに味が違うなんて、知らなかったわ」

「それに、ミツルさんやエルザさんの話を聞いてたら、蜂の魔物と共存することの大切さが、よくわかったよ」ミリアムは、そんな参加者たちの様子を見て、心の中で、静かにガッツポーズをした。


「よし、これで、みんな、蜂の魔物のことを、少しは理解してくれたみたいね。

これから、一緒に、この世界を変えていきましょう!」ミリアムは、明るい未来に向けて、力強く歩みを進めていくのだった。

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