108話 緑と希望の協奏曲
「ただいまー!」フローリア村の入り口に、ミツルたちの乗った荷馬車が到着した。街道整備の仕事でリハルトを拠点にしていたので久し振りの帰郷となる。
荷馬車が止まると同時に、ミツル、エルザ、アリーシャは飛び降りるようにして村へと駆け出した。
「懐かしいなぁ、この風景! 空気が美味しい!」ミツルは深呼吸をすると、故郷の風景を懐かしむようにゆっくりと見渡した。
「ミツル!おかえりなさい!」「ミツル、エルザ、アリーシャ、待ってたよー!」村人たちからの温かい歓迎の声が、ミツルたちの耳に届く。そこには懐かしい面々の姿もあった。
「みんな、ただいま! ちょっと見ない間に、村がさらに活気づいてるみたいだな!」ミツルは、活気に満ちた村の様子に目を丸くした。
街道が完成したことで、フローリア村にも多くの商人や旅人が訪れるようになり、村は以前にも増して活気づいていたのだ。
「ああ、ミツルたちのおかげで、フローリア村は大きく変わろうとしているんじゃよ!」背後から優しい声が聞こえ、振り返ると、そこにはアーノルド村長が立っていた。
「村長、お久しぶりです! お元気そうで何よりです!」ミツルは、アーノルド村長に駆け寄り、深々と頭を下げた。
「ああ、わしも元気じゃよ。それよりも、ミツルたちこそ、長い旅の疲れはないかの?」
「はい、おかげさまで大丈夫です!」ミツルは、笑顔で答えた。
「それよりも、村の様子が前より活気づいてますけど、何かあったんですか?」
「実はなぁ…」アーノルド村長は、ミツルたちを村の中へと案内しながら、最近の村の変化について語り始めた。
「街道が完成したおかげで、フローリア村で作られた蜂蜜やミードが、元祖と言う事で各地で大評判なんじゃよ!評判を聞きつけて村に来てくれる人が増えてな。嬉しいんだが…多すぎるて困ってしまってるわい。」アーノルド村長の言葉に、ミツルたちは顔を見合わせた。
「え、蜂蜜やミードがですか?まさかリハルトじゃなくてこんな辺鄙なフローリア村にまでわざわざ来るなんて驚きですね!」ミツルは、少し驚いた様子で聞き返した。
「ああ、ミツルたちの作った蜂蜜は、今までにない美味しさだと、色んな所で評判になっておる。それに、アリーシャが育てたハーブや果物も、大人気なんじゃよ。やはり元祖と言うのは強いのかの?」アーノルド村長の言葉に、今度はアリーシャが驚きの声を上げた。
「えぇーっ!? 私の育てたハーブや果物が?」「ああ、アリーシャが丹精込めて育てたハーブや果物は、香りも味も格別だと評判になっているんじゃ。特に、ハーブを使った石鹸は、女性の間に人気が広がっているんだとか。フローリア村は今、まさに生まれ変わろうとしているんじゃよ」娘をほめるアーノルド村長の言葉に、アリーシャは照れくさそうに頬を赤らめた。
「お父さんに言われるとちょっと照れるけど…これも、ミツルやエルザ、そして、村のみんなが協力してくれたおかげよ。」
「いやいや、アリーシャの頑張りがみんなを動かしているんじゃよ。わしは、そのことを、ちゃんとミツルたちにも伝えたかったんじゃ」アーノルド村長は、アリーシャの頭を優しく撫でた。
「本当に、アリーシャはすごいよ! 各地で評判になってるなんて、知らなかったよ」ミツルは、アリーシャに笑顔を向けた。
「ミツル、よかったわね! アリーシャの努力が報われて、本当に嬉しいわ」エルザも、アリーシャの肩を抱き寄せ、自分のことのように喜んだ。
「えへへ…///」アリーシャは、嬉しさと照れくささで、顔を真っ赤にしていた。
「そういえば村長、ベリル村の収穫祭は、いつでしたっけ?」エルザが、アーノルド村長に尋ねた。
「そうじゃ、ベリル村で収穫祭があるんじゃった。アリーシャ、ミツルたちも、一緒に行くかの?」
「「もちろんです!ベリル村の人達にも久しぶりに会いたいですし、養蜂やミードの製作状況も確認したいですからね!それに今回の本題は蜜源植物の大量栽培の見学ですからね!」ミツルが本題を話す。
「賛成! せっかくフローリア村に帰って来たんだし、ゆっくりしていきましょうよ!」エルザとアリーシャは笑顔で頷いき声を揃えて答えた。
「それにこの辺の蜜源植物の栽培状況も確認したいし、それを学んで園芸部隊には各地で実践して欲しいからね!」とアリーシャは真面目な一面も見せる。
「よし、決まりじゃな! 卿はゆっくり休んで、明日はベリル村で盛大にお祝いじゃ!」
アーノルド村長の言葉に、ミツルたちも笑顔で頷いた。フローリア村での再会と、ベリル村での収穫祭。ミツルたちの心は、新たな希望と期待で大きく膨らんでいた。
年始で色々と忙しく執筆時間の確保が難しい状況です。
今迄1日2話更新で頑張ってきましたが、落ち着く迄の間1日1話更新とさせていただきます。
落ち着き時間が取れましたらまた1日2話更新に戻る予定なので、よろしくお願いします。




