第9話：養蜂本格稼働
ミツルがフローリア村での養蜂を本格化させてから、幾分かの時間が経過していた。
彼の努力はハニィウィングを中心に進展しており、村人たちへ安定した蜂蜜の供給を実現し始めていた。
ハニィウィングはその比較的穏やかな性質とテイムのしやすさで、養蜂の基盤を支える柱となっている。
煙を使った一時的な排除によって、蜂蜜の採取は手軽に行えるという利点があった。
村の食料事情も少しずつ改善されてきた。ハニィウィングの労力次第で、農作物の受粉が促され、収穫量が増加していることを実感している村人たちは、ミツルの功績を素直に認めていた。
彼らはミツルと一緒に働くことで、生産性を高める新たな方法を習得していた。
一方で、スティンガービーの蜂蜜には未だにハードルが付きまとっていた。
スティンガービーは非常に攻撃的であり、特に煙を使うと逆に動きを激しくしてしまう傾向があったため、蜂蜜の採取は容易ではなかった。
加えて、その蜂蜜には毒性があり、軽減するには特別な方法が必要だった。
しかし、この障壁を乗り越えることができれば、スティンガービーの蜂蜜が持つ特有の魔力を有効に活用できるため、ミツルはその可能性を放棄できなかった。
エルザとの協力は続いていた。彼女は薬草の知識を活かし、スティンガービーの毒性を軽減するために新たな方法を提案してくれた。
幾度となく検証を重ねる中で、ミツルは徐々にインセクトテイマーとしてのスキルも向上させていった。
彼のテイム能力が上がるにつれて、何かしらの進展が見え始め、スティンガービーの中でも比較的攻撃性が少なく、大人しい個体を養蜂用に使う道を探し出すという方向性が見えてきた。
エルザは、この成果に彼女なりの感慨を抱いていた。
「あなたの尽力は素晴らしいわ。これでスティンガービーを使った新たな養蜂の一歩を踏み出せそうね」と彼女は笑顔で言った。
彼の取り組みを認め、更に多くの植物を調査し、毒性を完全になくす手段を見つけることに彼女も協力する姿勢だった。
その過程で、ミツルは新しい可能性を見出した。蜂蜜に特有の魔力を持たせることができれば、村の医療や魔術的な用途にも活用できるという考えが浮かび上がったのだ。
エルザと共に調べ上げた結果、特定の薬草や花がスティンガービーの蜜と相性よく組み合わせられることが分かった。
そして、その応用により、ただの食品としてではなく、新しい価値を持たせることができると確信した。
一方で、ミツルは村の農作物の面でもさらなる工夫を凝らしていた。
彼が導入した受粉の促進は、村の畑全体に大きな影響をもたらしていた。
村人たちは、その成果を実感し、小麦や果物などの生産量が増えていることを誇りに思っていた。余裕ができた食料を村外に販売し、必要な物資を交換することで村の経済状況も少しずつ改善されていった。
ミツルのインセクトテイマーとしての能力もまた、彼の取り組みを後押しした。
彼のスキルレベルが上がるにつれ、彼が操れる虫の種類や、その精度が向上し、ハニィウィングや新たに飼育可能となったスティンガービーの扱いも上手くなっていた。
このスキルの上昇は、ミツルに新しい方法や考え方のヒントをもたらし、彼のプロジェクト全体を推進する助けとなった。
このプロセスの中で、ミツルとエルザの間には強い信頼と友情が育まれていた。
彼女はミツルの情熱と粘り強さに感化され、その情熱を応援し続けた。彼女の知識はミツルにとって大きな力となり、彼女の協力なしではこのプロジェクトがここまで進むことはなかっただろう。
ミツルは村人たちと共に、さらなる挑戦のために村の発展を見据えた計画を立て続けた。
彼の目標はただ食料の安定提供にとどまらず、新たな価値と可能性をもたらすことで村全体の豊かさを実現することにあった。
それには村人たちとの強い絆が不可欠であり、彼らの信頼を一層深めていくことで、彼の夢を現実のものにしていくのだった。
失敗にもめげないミツルの姿勢は、村人たちだけでなく、彼自身にも大きな力を与えていた。
未来を見据え、希望を胸に抱いて、彼はフローリア村での新たな収穫を信じ続けていた。
エルザやゴードン、そして村全体との連携を強化することで、ミツルは目指すべき目標へと邁進し続ける決意を新たにした。
混沌とした中に光を見出し、彼が築く未来には、これまでの努力が花開くと信じて疑わなかった。
