2話 冴えない青年、アキバを歩く
「何でマスクしたままなんだ?」
「だって化粧してないんだもん」
何の気なしに聞いてみた質問の返答を聞いてセナもあれから成長したのだと実感する。
当時は化粧なんて言葉が出てくる感じでもなかったしな。いつも俺と外で遊ぶかゲームして遊ぶかの二択だった。おままごとなんてした事ないんじゃないか?
「ていうかよく俺だって分かったよな。こんな平凡な顔した奴、来るって分かってなかったら気付かんだろ」
「ギクゥッ! く、来るって分かってなんか無かったし!」
「いやだからそう言ってんだろ」
「あ、そうか。たはは、勘違いしちゃった。てかカイ君の顔は平凡じゃないでしょ。世の男子が聞いたら怒るよ」
「はいはい、そうですな」
しっかりとフォローを入れてくれるセナを前にして俺はどこか卑屈になってしまう。どうせお世辞なんだろうなと。何故なら俺の顔が平均くらいだと思う根拠があったから。
特別悪くないけど良くもない、そんな味気のない顔。
そう思うには理由があった。高校に入学したての頃、その時はまだ入学ブーストもあって普通に女子と会話していた。
その時にクラスの一軍女子からこう言われてしまったのである。
『揚羽君って何か味気ない顔してるよね』
その時は「そ、そう?」とか言って流していたが内心では深く突き刺さっていたのである。それからというもの俺は出来るだけその女子と会話することを避けていった結果、クラスではボッチとなってしまった。
最悪である。男子に話しかけようにもその時の容赦ない感じを思い出してしまって中々に一歩が踏み出せないまま今日までを過ごしてきた。
もういっそこのままボッチで居続け、たまに林道に声を掛けられる高校生活を送るのだと考えていた所である。
「な、何か暗くなったねカイ君」
「そうか? 俺はいつだって誰にも見られないような日陰で他人の悪口を気にしながらコソコソ一人で生きていってそのまま周囲に誰もいないまま朽ち果てていくみたいな性格だぞ」
「訂正。暗くなったどころじゃないねこれは。重症だ」
まあ半分誇張だけど。半分は本当なのかよとお気づきのそこのあなた。鋭いですね~。
「って言ってる間に着いたぞ。ほれ」
やはり地図アプリは優秀である。こんな俺ですらここまで何の迷いもなく来られるんだからすげえよな。
言葉は要らない。ただ、人類の英知の結晶に対してじんわりと感動を覚えながら目の前の建物の中へと入っていく。
「おーすげー、セカイちゃんの看板建てられてんな~」
「そ、そうだね。うわ~すご~い」
何かぎこちない相槌だな。セナもここに行きたいって言ってたからてっきりセカイちゃんの握手会に来たと思ってたけど違うのか?
「そういやセナってここに何しに来たんだ?」
「え、あー、セカイちゃんの握手会だよ」
「なんだよ、やっぱ一緒だったのか」
その割にはぎこちない相槌だったけど。もしかして俺がセカイちゃんファンであることに対して引いてるんじゃないだろうな?
だとしたら割とショッキングです!
「ていうかさ、握手会までまだまだだよね? どうしてこんなに早く来たの?」
「下見だよ、下見。絶対に遅刻したくないから先に来て道を覚えておいて、そんでどっかで時間つぶそうって思ってたんだ。てかセナも他人のこと言えないだろ」
「え、私は……だってこんなに早く来ると思ってなかったんだもん」
「ん? なんて?」
「だから~カブトムシを食べる時って何で角から何だろって」
「いや普通食わねえから知らねえよ! あと全然俺の質問に答えてなかったのかよ! ちゃんと答えてるって思って聞き直した俺が惨めじゃねえか!」
まあどうせ俺と同じく下見に来たんだろうから敢えてもう一回聞き直しはしないけどさ。
「てことで私も今から1時間くらいは暇だからカフェ行こ」
「1時間で良いのか? こっから3時間くらいある気するけど」
「私この後友達と会う予定あるから」
「ふーん、そうなのか」
こっちに来て間もなさそうなのにもう友達いるんだなんていう格の差を味わいながら俺は建物を出るのであった。
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