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底から  作者: ぼんさい
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人間界 セリカ編 17

夜に街道を通った兵隊に急に襲われた。


その一部を見ていたのはサーシャだけで、他の村人は気付いていなかった。


結局もう一回焚火を起こして、芋を焼いて皆で食べた。



太陽が顔を出してから、昨日まで静かだった街道に人と馬車が流れ始める。


でも、関所の方から流れてくる人は居なかった。




「それ、何ですか? その石の下にある紙。」


村人と別で皆と芋を食べていると、サエルミアが聞いて来る。


サーシャは芋が焼けると、ミカエラの方へ行ってしまった。



さっき貰った許可書?とかいうのが邪魔だったので、地面に置いて石をのっけて置いていた。


「なんか夜にエルフの兵隊から貰ったのさ。 通行許可書? とかいうのなのさ。」


「ちょっと見せてもらいますね。」


石をどけて裏返しに成っている紙を見るサエルミア。


その紙は茶色く部奴い何かの皮。


羊皮紙の様な紙には何やら文字と判子が押されている。


細かい文字は読む気にも成れない。




「これアグラレスってエルフ国の旧女王の名前で判ついてますよ! こんなのどこで貰ったんですか。」


「そこでカレンと喋ってたら、色々あって貰ったのさ。」


「色々ってなんです? 誰からですか? こんなの滅多に貰えませんよ?」


「なんて言ってたかねぇ。 カレン覚えてるかねぇ。」


「エルロンドと言っていました。 オルガとかいうのもいましたね。 プロトン人は忘れました、申し訳ありません。」


「エルロンドってあの騎士団長のエルロンドですか? 鎧着てませんでした?」


「着てたねぇ。 茶色いのさ。」


「夜に一体何があったんですか。 全然気づきませんでした…… 」


「皆、寝てたから起こすと悪いと思ったのさ。」


夜の事を皆に話す。


プロトン人の鎧に襲われそうになったので、処理した事とエルフは動かなかったので、そのままにしておいた事。


「プロトン人って、もしかしてフロイドって言ってませんでしたか?」


「確かそう言っていたと思います。 平凡な人間でしたね。」


「フロイドって、エルフ国に来てる派遣武官ですよ。 やっちゃったんです?」


「そこの茂みで溶けてるのさ。」


紙を手にしたまま、頭を抱えるサエルミア。


「私は知りません。 私は知りません。」と言いながら、ミカエルの馬車へと言ってしまう。


「何か拙かったのかねぇ。」


「向こうが手を出して来ましたし、大丈夫でしょう。」


「そういう問題なんですかね。」

「多分、そこじゃないと思うぜ。」


アズラとミズラに違うと言われてしまった。 でも向こうが手出して来たのさ。




準備をして、またケレブスィールを目指すために出発する。


馬を馬車につないで列に成る。


私達も準備をしようと焚火の始末をしていると、アズラに声を掛けられた。



「セリカ、俺、今日は前に言っても良いか?」


「アズラ前来たいのかねぇ。 別に構わないけどなんでなのさ。」


「ちょっと話したい事があってな。」


俯き加減で言うアズラ。 何だろう。



「かまわないのさ。 カレン後ろで良いかね。」


「セリカ様構いません。 ミズラと一緒ですね。」


「カレンさん。 一日お願いしますね。」


それからカレンと、ミズラと別れて、出発する。




こちら側だけ空いている道、相変わらず森の中にある道をゆっくり進んでいく。


逆側から来る馬車の御者に、やたらとみられる私達。 周りが居ないので目立つ。


サエルミアに抱かれたサーシャは気持ち様さそうに寝ている。 変な時間に起きたから眠たくなったのだろうか。


サエルミアとミカエラは、二人でエルフの国について、話し合っていた。



「なんなのさ。 話ってさ。」


アズラは杖を持って私と馬車の前で歩いている。 黙々と歩くアズラに、声を掛けた。


「願い事があるんだ。 俺に稽古つけてくれないか。」


紫の目をこちらに向けて、話してくるアズラ。 目が真剣だ。


「この前のドラゴンもだけど、ミズラと俺、何もしてないんだ。 少しでも何かできるように成りたいんだ。」


「アズラが、何もできないなんて思わないけどねぇ。」


「関所での出来事何かしようと思ったんだ。 けど出来なかった。 なんにもできなくて気付いたら終わってたんだ。


ミズラはカレンに同じ話をしてるはずだ。 二人で決めたんだ。 なんとか頼む。」


歩きながら私に頭を下げてくるアズラ。


アズラは魔法を飛ばす戦い方をする。 私は魔法制御は得意ではない。


彼に教えて上げれることはあるんだろうか。


「教えるのは出来ないのさ。 でも、一緒に訓練は出来るのさ。」


「それでもかまわない。 何か進みたいんだ。」


「じゃぁ、これやってみるのさ。」


手の平に載せた小さな火の玉、ルルやラーナがやっていたのと同じ事。


でも私はその量の調節をずっと練習している。 食べている時以外ずっと、手にこれを出して練習していた。」



赤から黄色、青白くその後に白く変わるその火の玉は、セリカの手の中でずっと同じ大きさで、変わり続ける。


彼女の練習は最近はずっとこれだった。



アズラが自分の手を見ながら、魔力を流している。


灰色の魔力が、手に現れると、そのまま弾けてしまう。


「これ難しいんだな。 全然できないや。」


「簡単に見えるけど難しいのさ。 でも出来るとやれる事が増えるのさ。」


セリカの手の中の火の玉が、そのままの大きさで分裂していく。


16個程に成った火の玉は、また変色を始める。


「魔界にルルってのが居るのさ。 ルルはもっとできると思うねぇ。」


「そんな事が出来るようになるのか。 でもそれが出来ると戦闘でなんか役に立つのか?」


「アズラはあれだね、あのレーザーを同時に撃てると思うのさ。」


「ありがとうセリカ、やってみるぜ。」


それを聞いたアズラは、そこから前も見ずにひたすらその練習を続ける。


手から出てくるグレーの魔力は、徐々に徐々に玉の形に成ってきていた。



左手から同じぐらいの幅の街道が合流してきた。


サエルミアとミカエラが言うには、プロトン本国から続く道。


そこにはまた多くの馬車が行き来している。


道が合流すると、真ん中を通る馬車が多くなる。


多くが箱で覆われた馬車は、4頭から6頭馬をつけて走り抜けていく。


合流してから、街道から見える馬車がギリギリ通れる獣道のような道は、エルフの村へと続く道だそうだ。


そこからは何も出てくる所を見ることが出来なかった。



周りが賑やかに成ってサーシャも起きる。 賑やかな馬車の上とは対照的にアズラは、ひたすらにその訓練を繰り返していた。




太陽が少し沈み始めた頃、街道はまた流れが悪くなる。 昨日ドラゴンに破壊された関所と似たようなのがもう一つあった。


塔の上には、バリスタが8個も並んでいる。 昨日の事を思い出すと、あれはただの飾りにしか見えない。



「また関所かよ。 俺もここまで来たこと無いから知らなかったぜ。」


「また止まるんですね。 人間って効率悪いですよね。」


後ろからジッダとカレンが前に出てくる。


「ここを抜けたら半日でケレブスィールです。 もう目前なんですけどね。 太陽が沈むと関所がしまっちゃいます。」


「夜は通してくれないのかねぇ。 中々着かないねぇ。」


遂に止まってしまう街道の流れ、周りの御者たちが馬車の中に入り始める。


空は赤から黒に変わって、月が丸く上がって来る。 合流してからそんなに行っていないのに夜に成ってしまった。



「なんでも、ドラゴンが出たとか、東方巡回軍が全滅したとかで、全部検査されるみたいだぜ。」


「そうなのかよ。 ちょっと危ない奴捨ててくる。」


前の馬車の御者達が渇いた芋を食いながら、そんな話をしていた。


道の端も御者地べたに座ったり、寝たりしている。



昨日みたいに安易に野営が出来る雰囲気では無かった。


「今日は馬車で寝るしかないな。 セリカもギルドの馬車に来るか?」


「私は寝なくても平気なんだねぇ。 カレンも3日目だけど大丈夫かね。」


「セリカ様、私は大丈夫です。 何も異変はありません。」


「おまえら寝ないのかよ。 龍ってのは寝ないんだな。」


「そうみたいだねぇ。 最近知ったのさ。」



村人は、今日は野営出来ないと察したのか、皆自分の馬車から芋を出してかじりついている。



「皆もこれ食べるの。」


サエルミアに連れられたサーシャがその芋を持ってきてくれる。


焼かないと味のしない芋を皆でかじりついていた。


「カレンとミズラに見張りを二人でお願いしても良いかね。」


「かしこまりました、セリカ様」

「セリカさん、いいですよ。 どこ行くんですか?」


「アズラとちょっと出かけてくるのさ。」


「俺とか? どこ行くんだよ。」


「ちょっと近くなのさ。」



ずっと魔力の訓練をしていたアズラ。 球が出来なくて、夜に成ってしまい少し落ち込んでいた。


彼に自信を持ってもらおうと思ったんだ。



カレンとミズラの了解も貰った、少し森の奥まで行って周りに人が居ない事を確認する。


「おい! 俺も飛べるって!」

アズラを背負って、そのまま飛んだ。


向かうのはドラゴンが逃げた方角だ。 アズラとドラゴンを戦わせるつもりでいた。


存在でいうとアズラの方が上なのだ。 アズラも自信を持てなくなるほど落ち込むほどじゃない。


大きな森の地帯が終わると、今度は木が低く草原が続く。


あの獣人たちの気配が沢山。 右手は人間の気配が流れていく。



そこを無視して、そのまま進むと、ドラゴンの存在が出てくる。


3個の他より3倍は大きい山、真ん中の山は火山だろうか、上がぽっかり空いて湯気が出ている。


両隣の山も木は生えているが他より尖った印象だった。



少し高度を下げる。 普通の森から人間の気配。


その先は焼け焦げた荒野が広がる。 そこにも人間の気配。 よく見ると白い鎧が沢山居た。


奥の方を見ると、ドラゴンが空を舞っている。


暗い夜に、口から履いているブレスは明るく地面を照らして何かを焼いていた。


人間とドラゴンの争い。 それが見えた。 人間は地面を掘って、長い長い塹壕を作っている。



「セリカ何処まで行くんだよ。 ここ戦場じゃないのか?」


「そうなのさ。 アズラはドラゴン1匹狩ってもらおうと思ったのさ。」


「ドラゴン? あれを俺がやるのか。」


「出来るはずなのさ。 ずっと一日訓練もしてたからねぇ。」


「1日でそんな変わるかよ!」



塹壕を超えた先、少し何もいない空間がある。


焼け焦げたその場所は、土以外何も無い。


人間の長い塹壕から少し離れているこの場所なら邪魔が入らなそうだ。



「ここに降りてどうするんだよ。 このまま待つのか?」


「もう居るのさ。」



向こうから見覚えのある存在、黄色のドラゴンが飛んでくる。


口に雷のブレスを溜めながら此方に突っ込んでくる黄色のドラゴン。


その右腕は綺麗に無くなり、サイズに合わない細い包帯が幾重にも巻かれていた。



「私とまだやるのかね?」


「その赤い髪! なんでこんな所に!」


急に口を閉じて、空中を引き返そうとする黄色いドラゴン、羽を必死で羽ばたいて、速度を緩めようとしている。


アズラが杖を構えた。


「戻るんじゃないのさ。 腕を返してやろうと思ったのさ。」


空中で止まったドラゴンは、大きな顔をこちらに向けたまま話してくる。


大きな羽の風がこちらに吹きつける。


「私の腕? 返してもらえるなら返して欲しいですけど…… 殺しません?」


「今日はそんな用事じゃないのさ。 その代わり、一戦模擬戦をやってほしいのさ。」


「模擬戦ですか? 貴方とは戦いになりませんよ。」


「私じゃないのさ、アズラなのさ。」



横で杖を握ってその頭をずっとドラゴンに向けているアズラ。


私の横に立っているアズラを見た黄色いドラゴンは、その口を少し緩めた。



「アズラ行って来るのさ。 アイツぐらいなんとか成るのさ。」


「こう見るとデカいな。 でもやってみる。」


前に出ていくアズラ。 私は少し後ろに飛んで、二人だけにする。


「やっちゃっていいんですか? 人間ですよね? 貴方も見た目人間ですけど。」


「手抜いたら、後でお仕置きだねぇ。」


笑いながら黄色いドラゴンに言うと、一度高く空に上がり、アズラの真上へ突っ込んで行った。

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