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底から  作者: ぼんさい
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人間界 セリカ編 14

カレンと話す内に空が明るく成ってきた。


起き出す村人達、アズラとミズラにも挨拶をして、皆で焼いた芋を食べる。


今日もエルフの国を目指すのだ。


結局夜は何にも起きなかった。 眠くも無いし、どちらでもいいんだと思う。


ただカレンとずっと話をするのは楽しかった。


そのカレンが、馬に魔法で水を出している。



私は生活魔法を皆に掛けてあげる。 嬉しそうにしてくれる彼等を見るのが楽しく成ってきた。


サエルミアは生活魔法を掛けると、その緑の髪がキラキラ輝くように綺麗になる。


エルフは綺麗、そう言う事なのだろうか。


男性陣がその髪を見て、何か話している。 やはり惹かれる物があるのだろう。



「皆に話すことがあるぜ。」


芋を食べている村人達がジッダを見る。


「行先なんだが、変更しようと思う。 サエルミアの店の宿舎が空いてるんだ。

なのでそこに一旦行こうと思うんだ。」


「その店ってのはどこなんじゃ。」


「ケレブスィールだ、プロトン人が一杯いる街だ。 嫌な奴は言ってくれ。 一人でもいたら予定通り辺境の村に行く。」


「私からもお願いします。 是非皆さんにお店に来ていただきたいのです。」



ケレブスィール、その言葉に村人達が話し出す。


やはり有名な街なんだろうか。



「セリカ達は、どうなんだよ。 それに従うぜ。」


「セリカさん達についていくの。」


そんな事を言いだす村人、皆同じ意見の様だ。


私を見てくる皆。


「私はサエルミアの店に行こうと思うのさ。 プロトン人は、まぁなんとかなるのさ。」



私の言葉に頷く村人達、本当にそれでいいのだろうか。


皆が馬車に乗り込んで、また同じ布陣で出発する。


相変わらず何も無いあぜ道、森の中を進む道の先に、多くの存在が流れていた。


急に石畳が横から現れて続いている。 行き交う馬車が沢山。


この道は支流だったようだ。 6台も馬車が通れるのでは無いかという道。 その道は多くの人間が行き来している。


布を積んだ平たい馬車や、木を積んだ馬車。 それが交互に行き交っていた。


森の中に急に現れる街道、両端の森と比べてその場所だけ異常な雰囲気だった。



「街道に出たんじゃ。 関所が近いのぉ。」


ミカエラがこちらに言って来る。 街道。 ススカの街も門の前は常に長蛇列だった。


またあれを待つのかと少し憂鬱に成る。


その街道にキャラバンが入って行く。 走り去る馬車が沢山追い抜いていく。


たまに罵声を浴び掛けてくる人間、カレンが怒って、車輪を凍らせてこかしてしまった。


流れが悪くなる街道は一気に渋滞に成ってしまう。


でも真ん中は皆走らない。 少し不思議だった。



「ミカエラ、なんで皆真ん中走らないのさ。」


「あれはねぇ、プロトン人様専用のはずじゃ。」


コケている馬車を退かせた人間達は、また通行を再開する。


罵声を浴びて走り去った人間は、道端でいろんな人から罵声を浴びていた。



真ん中を走る馬車それが現れる。 白い馬に箱型の宝石を付けた馬車。


それが優雅に私達を抜いていく。


窓は閉められ何が乗っているのかわからない。 貴族、そんな感じだった。


逆からは、馬に乗った鎧が走って来る。


腰に剣、背中に盾を持った真っ白な鎧達は、荒々しく逆側に抜けて行った。



そしてすぐに流れが止まる。


先の方に見える関所、木でできた砦の様な所に全ての馬車が吸い込まれていた。


砦の両端には塔があり、大きなバリスタが6個も乗っている。


前に来ていたジッダに聞く。


「あのバリスタは何につかうのさ。 村にもあったのさ。」


「あれか? あれはドラゴンに対応する為だ。」


「ドラゴンはあんなので倒せるのかね。」


「そうだな、あれ一発で大体沈むみたいだ。 見た事は無いが。」


「最近エルフの方にもドラゴンが来るんです。 北の勇者が負け続けるせいで、逆に攻められてるって聞きました。」


「なんだい、負けてるのかね?」


「噂ですよ。 あんまり大きな声で言わない方が良いです。」


「勇者なんて大した事無いからねぇ。」


「セリカ様は1人倒されています。 消し去ったと聞いております。」


「勇者に勝ったのですか? 一人で?」


「手ごたえ無かったのさ。 所詮は人間なのさ。」


「セリカさんはすごいですね。」

「俺も倒せるようになるかな。」


ジッダとサエルミアが驚いている。 ここの勇者は私みたいなブレス吐けるのかもしれない。


少し警戒強めた。


進まない列の横を何台も真ん中の馬車がごぼう抜きしていく。


誰も文句は言わない。 異様な風景。


他の御者に、猫の耳が生えた人間や、犬の耳の奴が居る。


みんな首に鉄の首輪をつけて、ひたすらそこで待機している。


「あの首輪付けた奴はなんなのさ。」


「ありゃ商用奴隷だな。 あんまり関わらない方がいいぜ。」



サエルミアも売るとか山賊が言っていた、ひどい世界だと思った。


後ろで村人達が、持ってきた作物を馬に与えている。


私もやってみたくなって、少し分けてもらって馬にエサやりをして時間をつぶした。



進まない列。 その列の先の門が急に閉まった。


木で出来た大きな門は、道を完全にふさいでその先に行けなく成ってしまう。


塔に昇って来た白い服を着たローブ姿の奴と、一緒に出て来た鎧がバリスタを動かしていた。


一様に私達から見て右の方向を向いたバリスタ。



「おい、門が閉まったぞ。 来るんじゃないのか。」


「来るって何が来るのさ。」



周りの馬車が列を無視して逆走し始める。


"ドラゴンだ! 逃げろ!"


その言葉を聞いた馬車たちは一斉に逆側を向いて走り出した。


動かないのは首輪をつけた御者の居る馬車と私達だけ。


「おい、セリカ逃げようぜ。 ドラゴンが来るってよ。」


「別に良いんじゃないのさ。 さっさと進むのさ。」


「進むっておい。 俺等は襲われたら死んじまうぞ!」


「そんなので死なせないのさ。 カレン、ミズラ、アズラ頼むのさ。 ジッダは皆に馬車に戻るように言うのさ。」


「構わないがよ。 わかった。 言って来るぜ。」


頭をくしゃくしゃと手で搔いていたジッダは走って後方に移動した。


アズラとミズラも後ろに走る。


私とカレンは一番門に近い前だ。


横で馬車が人が逆方向に流れる。



私はその存在を感知していた、右側から3匹。 小さな存在。


カレンも気付いている。 右を見て森の奥をじっと見つめている。



今までで一番大きいその存在は高速で関所に向かってきている。


森の木で視界が遮られ見えないが、何も無ければその姿が見えるのだろう。



塔からバリスタが発射されると、その塔が雷撃に見舞われた。


一瞬で崩れ落ちる塔、その横に黄色いドラゴンが羽ばたいて浮いている。


顔がやたらとデカイ西洋風のドラゴン。


龍とは違うそのドラゴンは、15mほどの大きさで羽を広げるとその倍はある。


塔に向いて口を開けたその黄色いドラゴンは、雷のブレスを吐いてその塔を完全に破壊してしまう。



もう一方の塔に火が降り注ぐ、火だるまに成って落ちていく人間。


それをあざ笑うかのように、塔の頂上に降り立った赤いドラゴンは、大きな足で塔を踏みつけ、そのまま重さで塔を潰してしまう。


人が掃けて見えている門の真下には、地上の白い兵隊が弓を魔法をその赤いドラゴンに放っている。


急に木の大きな門をぶち破って、緑のドラゴンが顔を出した。


突然頭の上に現れたドラゴンに対応が間に合わない地面の兵士達、そこに緑のモヤのようなブレスを緑のドラゴンが吹きかけると、そこに居た兵士たちはパタパタと倒れていく。


毒だと気付く。 幸い風は向こう側に吹いているのでこちらには来ない。



あっという間に関所は陥落してしまった。


「人間なんてこんなもんよね。 逆らうのが間違えてるのよ。」


「あぁ、あいつだけだな。 他はどうにでも成る。」


「ねぇねぇ、他のも殺していい?」


黄色いのと、赤いのと緑のが話している。


黄色いのは女の声、赤いのは男の声。 緑のは少年のような声をしていた。


「俺が駆除する。」


赤いのが羽根を広げて飛び立つと、街道に向けてその火炎を吐いて来る。


まだ残る人間達の馬車は、その火に呑み込まれてしまう。


「カレン、お願いできるかね。」


「はい、セリカ様。」


カレンが、青い魔力でキャラバンを覆う。


そこに到来する火のブレス。 カレンが張った魔力の外は真っ赤になった。


通り過ぎたブレス。 周辺の森は燃えて、馬車も燃えてしまって居る。


後ろまで誰も居なくなった街道に、私達だけポツンと残されてしまった。



「なんか残ってるわよ。 ちゃんとしてよ。 ファブラ」


「すまない。 ライラ、出来る奴が居たようだ。」


もう一度旋回してわざわざ前から飛んで来る赤いドラゴン。


そのドラゴンが私達の前に降りて来た。




その大きな足で、燃えている馬車を踏みつぶし、街道の石畳をめくりあげる。


私達を真上からドラゴンは口を開けて、懲りずに炎を放ってきた。


また赤く染まるカレンの魔力の外。 中は何もならない。


しばらく続いたそれが消えた時、周りの森は真っ黒に焼け焦げていた。



「ちゃんとやってって言ってるじゃない。」


「違うんだ、こいつらのバリア破れないんだ。」


「なによそれ、人間でしょ?」


黄色いのが飛んでくる、左に降り立った黄色いドラゴンは真上から雷のプレスを打って来る。


周囲の土がえぐれで飛んでいく。 石畳が全て粉々になって土がめくれ上がる。



「なによこれ。 壊れないじゃない。 人間の癖に生意気ね。」


「僕もやらせてよ。」


緑のが飛んでくる私達の右側森に降りて来たその緑のドラゴン。


口を開けた緑のドラゴン。


「セリカ、カレン。 怖いの。」


ミカエラに抱きかかえられたサーシャがこちらに訴えてくる。


何か一気に魔力が頭まで昇った。


私の横でも、増幅する魔力。


カレンの髪が浮いて、牙が伸びて真っ赤な爪が伸びてきている。


なんとか人化を保っている状態のカレンは、その顔を下に向いたまま吠えた。


「セリカ様が、優しいからって調子に乗りすぎじゃないの、おまえらぁぁぁ!」


その覇気に、緑は口を閉じた。



「なんだこいつ、なりそこないか?」


「こんなバリアどうせ魔法だけでしょ。」


前足の長い爪をセリカの魔力に突き立てる黄色のドラゴン。


その手が落ちた。


カレンが飛んで鎌で落としてしまう。


顔を上げて、叫ぶ黄色のドラゴン。 その音は体を震わすほどに大きい。


「やかましぃぃ!」


その音をかき消すようにカレンがまた吠える。


黄色いドラゴンは、遠くに飛んで行ってしまう。


カレンが黄色いドラゴンを蹴った。 超高速で飛んでいくドラゴンはそのまま空へ消えてしまう。



「なんだ、ライラはどうなった。」


「ダメだ、逃げるよ僕。」


2匹が逃げ出そうとする。


緑のドラゴンに鎌を構えるカレン。


私も剣を持って、目の前の赤いドラゴンを真上から剣の腹で胴体を叩きつける。


「少し邪魔だねぇ。 もう何もしないなら許してやるのさ。」


赤いドラゴンは地面に叩きつけられて、なにやらもがいている。


「あなた達は龍の前に居るのです。 頭を下げて謝りなさい。」


鎌を緑のドラゴンに付きつけたカレン。 そこから垂れる毒が、その鼻を溶かし始めていた。



「僕が溶けるなんて! おかしいよ!」


緑のドラゴンの頭が地面に激突する。 バリアの範囲以外の地面が陥没してクレーターに成っている。


カレンが鎌の背で緑の頭を上から殴りつけた。


「謝りなさいと言っているの。 少し似てるからこれで許してあげるって言ってるの。 わかる?」



「悪かったよ。 もうやらないから許して。」


牙が折れて、顎がグシャグシャに成っている緑のドラゴン。


「お前らは一体なんなんだ。 龍だと?」



「謝れって言ってるのぉ!」


また鎌の背で赤い龍の頭を地面に埋めるカレン。


「わ、悪かった。 殺すのは勘弁してくれ。」



「次邪魔したら、どうなっても知らないのさ。 ちゃんと皆にいうのさ。」


「似たようなのが一匹でも来たら、絶滅させてやる。 覚えときなさい!」


「わかった。 すまなかったもう来ないから。」

「僕ももう来ないよ。 約束するから、見逃して。」



カレンはまだ怒りが収まらないのか、爪からボトボト毒を落とす。


更にひどくなる地面の状況。 緑の龍の羽が少し溶けてしまっている。



「さっさと行く!」


「「はい!」」



カレンに言われて、顔の潰れたドラゴン達はフラフラと飛んで行った。



「さっさと消える!」


溜めていた魔力を手から放つカレン。 飛んで行ったドラゴンの方に着弾したそのレーザーは、広範囲に森を一瞬で凍らせる。


それに気付いたドラゴンは、急いで飛んで逃げて行った。




「サーシャ、龍は怒らせてはいけないのじゃ。」


「そうなの。 ミカエラのいう事が正しいの。」


「私は一体今何を見たのですか。」


立派な街道は無く成ってぽっかりとキャラバンの所だけ道が残っている。


その外は荒れ果てた地面だけに成っていた。

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