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底から  作者: ぼんさい
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魔界編 序章 8

また頭が痛くなって、やってしまった。

どうも感情が高ぶると魔力を放出してしまうようだ。


紫の空、白い丸、丸くえぐれた山。

そこからずっと、土がむき出しに成っている。

その周りで草が燃えていた。


私がやったのだ、はっきりと思えている。

手から出た黒い柱。

それが全てを破壊して進んでいった。

最後はどこまで行ったか解らない。


でも今はそんな事より周りの方が大変だ。


途中で無く成っている石畳、こっちを向きがら頭を下げて固まっている馬。


レーザーの通ったギリギリ石畳の残っている道にひっくり返っている馬車。

そこからは荷物だろうか、樽が落ちている。


ここまでは良いのだ。


抱き着いてずっと泣いているルルちゃん。


「メランさん、メランさん……」


呪文のように言いながら泣いている。


私より少し低い位置で黒髪の頭頂部が見える。

ずっと胸で泣いている。


その少し遠くに立っている大女。


赤い髪、赤い目、筋の通った鼻に深い掘りの顔、目は切れ目で、眉も少し吊り上がっている。

大人の雰囲気で、全部が大きい大女。

多分、セリカだろう。雰囲気でわかる。


褐色の肌は素っ裸で仁王立ちして泣いていた。


ずっと泣いている二人に、声のかけ方が解らず、そのままの体制でとりあえず待つことにした。



状況を打ち破ったのは、馬だった。


「申し訳ない、そろそろ限界。」


パカパカと足を鳴らしながらその場に普通の体制に成る馬。


睨みつけるルルちゃんとセリカ。


「もう、動きません。」


ぴたりと動きを止める馬の口がカチカチと鳴っている。


「セリカ、あの馬なんなのよ。」


「主、私もわからんのだ、何か助けてくれと言っていたぞ。」


「ぇ、あの人セリカって・・・蛇さんですか。」


「ルルよ、そうだぞ!」


そう言って形を赤色の魔力に纏われ、形を変えていくセリカ。


そのままドンドン上がっていく赤い魔力。


紫の空に漂う、大きな龍が居た。


「な、蛇だろ?」


それは日本神話に出てくるような細長い龍。


口は大きく、目は褐色で薄い赤色のタテガミ、鱗は濃い赤。

体に比べ短い手と足には黒い鋭い爪が光っている。

角も黒い。


口は大きく何本も鋭い歯が見て取れる。

その間から炎が出たり入ったりしている。

呼吸と共に炎が湧き出ている。


長い牙が2本口を閉じてもずっと見えていた。


牙先と爪先から落ちる液体。

地面に落ちると、"ジュゥゥ"という音と共に草と土を溶かしている。


でもさっき見たのと大きさが全然違う。

大きい、50mはあるのでは無いか。


そのまま、また赤い魔力に包まれてさっきの赤い女に戻った。

ケラケラと笑う口には2本の牙が残っている。


「龍、龍ですよね?」


ルルちゃんが怯えている。


「セリカ、いつからあんな大きく成ったのよ。」


「主から名前を貰った時から抑えてたのさ。」


「そうなの、よく我慢してたわね。」


モジモジし出すセリカ。横では馬がまた前足を広げて頭を下げていた。



「ルルちゃん、全然変わったじゃない。」


「そうですね。どうですか?」


離れてクルクル回るルルちゃん。


長い黒い髪がサラサラと流れる。

その顔は赤い目、少しだけ深い顔に、ふっくらした顔立ち。

日本美人なルルちゃん。クリっとした目が可愛い。


あのヌイグルミからここまで変わると、別の生き物の様だ。


「ルルちゃん、可愛いわよ。」


「メランさん、ありがとうございます。」


モジモジし出すルルちゃん。 馬の前足が震えている。


「あなたは、お馬さん?」


パカ!と普通の立ち姿に戻る馬さん


「俺はオロバスのヒヒと言うんだ、よろしく頼むな。」


馬車より大きい馬体は、角と目を除いて真っ黒だ。

角はまっすぐ一本顔ほどの長さで白い。

目は真っ赤でどこを向いてるか解らない。


「ススカの街に行きたいんだけど、連れて行ってくれる?」


「かまわないが、」


馬車を見るヒヒ


近づくセリカがヒョイと馬車を持ち上げる。一緒に持ち上がるヒヒ。


そのままセリカがゆっくり下ろすと、ちゃんとした馬車の形に成った。


「たのむよ、ヒヒさんや。」


「セ、セリカねぇさん、かしこまりまた!」


軍隊の様に言うヒヒに皆で笑うのだった。



裸だった二人に馬車に有った服を着てもらう。


中は広く、3人座るには十分だ。

半分近く積まれた荷物はそのままにしてある。

樽や箱全部木でできている。


両脇に座る長椅子があり、私とルルが左側。

二人で脚を組んで座っている。

ルルは両手を組んだ足に乗せて、お姫様みたいだ。


セリカが右側で足を股を開いて大きく組んで座る。

膝に肘をついて、その上の手に顔を乗せている。

彼女の赤い髪の毛が馬車の振動で揺れ、大きな胸は合わないサイズの服を破ろうと暴れている。


「なぁ、ヒヒや、もうちょっと揺れ何とかならないのかい?」


「セリカねぇ無理言わないでくれ、下の道が悪いんだよ。」


街道を行く一行。

ヒヒが引っ張る馬車には白いホロがついていて中身は見えない。

しかしホロの中から綺麗な女の声が3個、楽しそうに話している。


その大きな場体に似合わない同じ背丈のホロ付きの馬車を丁寧に引いているオバロス。

そのオバロンは他のオバロスより2周り大きかった。


街道を道行く人がヒヒを見上げて、感嘆している。

それを無視するように進むヒヒは、内心止まると殺されると必死であった。



カラカラ進む馬車。

これの前の持ち主が気になる。


「ねぇ、ヒヒあの灰色の魔人は何だったの?」


「ねぇさん達がやった奴らですかい?冒険者でっさ、ドラゴン退治に行ってましたぜ。」


「私も死ぬかと思ったねぇ、結構腕利きなんじゃないのかい?」


「ススカの街では一番の冒険者ですぜ。」


「それで、ヒヒは仲間なの?」


ルルとセリカが見えない前方を睨む。


「勘弁してくだせぇ、俺は馬ですぜ使役されれば付いていきますよ。」


「ヒヒさんは私たちに使役してくれるの?」


「ルルねぇさん、もちろんですとも、もちろんですとも。」


「だって、メランさん。」


「害は無さそうだし、良いんじゃない。何かしても大丈夫でしょ。」


「そうですね。」「そうだねぇ。」


それから何も言わなくなったヒヒ。内心ビビり倒していた。


メランは内心楽しかった、仲間が出来た。

でも、それを失う恐怖も増えていく。

"今度は"失わない。

若干痛くなる頭を押さえつつ、彼女達との時間をすごして居る。


人が増え、石積みの城壁が見えてくる。10mは積まれたその城壁。

門に列ができている。その上に<<ススカ>>と書かれた大きい看板が見えていた。




街道にたどり着いたサイクロプス達、その風景に頭をかしげる。


大きくえぐれた地面、それがずっと草原を続いている。

そこにあった鉱山の山は、ぽっかりと円を描いて消えている。


周囲の草は不自然に焼け、少し向こうの方で、何かの液がジュウジュウと地面を侵食していた。


ベルゼブブ様に報告しなければ!


ススカの街と逆の方向に向けて、進むサイクロプス。

街道もえぐれて、立ち往生の馬車が渋滞していた。

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