魔界編 ススカ 68 ~セリカ編 18~
東門へ向かうヒヒの馬車その中で、相変わらずラーナは手で魔力の練習をしている。
中々上手くいかないみたいだ。
「ラーナはそれ上手くいかないのかね?」
「セリカおねぇちゃん、そうなのです。 ラーナ才能無いのですか?」
「才能無い奴は全くで出ないよ。 出てるんだ、練習すれば出ると思うんだけどねぇ。」
「ルルおねぇちゃんにも言われたのです。」
「そうだねぇ、もう一回やってみてくれるかねぇ?」
ラーナが手から電気を出す。
確かに出ているその電気。 でもやっぱり魔力がプツプツとしか出ない。
存在は、それなにあるラーナ、さっきからずっとやっているなら普通の魔人は切れているはずだ。
量はあるんだと思う。 でも、なんでか出ない。
「どうなのです?」
「そうだねぇ、私には正直どうしようもないねぇ。 主に見てもらうのさ。」
「メランおねぇさんですか? そうするのです!」
「ムーは全然使えないのニャ、ラーナちゃんは凄いニャ!」
ムーもあると思うんだけど、あえて言っているのか。
今言う事じゃないのはわかるぞ!
高炉は段々積み上がってきている。 もう半分ぐらい行ってるんじゃないか?
黒い木がどんどん小さく見えてくる。
相変わらずラーナの魔力は出ない。 ムーがずっと少し心配そうに見ている。
私も何か助けられればいいんだけどねぇ。
結局ラーナは進展がないまま東門に付いてしまった。
少し残念だ。
東門、あの勇者が来た門、でも壊れていないな。
周りの群衆が集まって見に来ている。
さっさとやってしまおう。
私だけ馬車を降りる。
二人には待っててもらう。 すぐ終わるしねぇ。
これぐらいなら爪で出来るんじゃないかと思う。
私は龍だ、その利点も取り入れていかないと、ルルに負けてしまう。
人差し指の爪を伸ばした。
毒は通さない。 門が溶けてしまう。
その爪を、東門に魔力を乗せて、切りつける。
左から、上に、横に下に、横に。 □の形。
簡単に切れてしまった。 余り練習に成らない。
少し残念に思いながらそれを浮かせる。
「私は門を持って行くから、3人は後で付いてきてほしいのさ。」
「セリカおねえちゃん。わかったのです!」
「わかったニャ!」
ヒヒは頷いている。 何をそんな驚いた顔してるんだい。 今更だろ?
「お前ら東門どこ持って行くんだよ。」
緑髪の男、ダンが声を掛けて来た。
何処持って行くって、新しい所さね。
「新しい所? いいや、馬車乗せてくれよ。」
馬車に乗りたいらしい、ヒヒに任せて、私は門を運ぶ。
少し先に言って、遠くを見ていた。
一応危ない奴が来るかもしれないからだ。
でも人も馬車も通らない。
一時多くの人が居ると聞いたのだが。 こんな物なのかもしれない。
草原に突然現れる石壁はさっき主と作った物だ。
今は周りに何も無いが、そのうちここまで街が来るんだろうか。
どんな店が増えるんだろう。 少し楽しみだ。
そんな事を考えていると、馬車が追い付いてきてしまった。
さっさと門を降ろしてしまう。
そのまま馬車で待つことにする。
ラーナが、今までとは違う事をやっている。
体に手を当てて、何か込めている。
ラーナに魔法が出来たか声を掛けてみた。
「ダンに、強化魔法教えてもらってたです。」
強化魔法なんてあるんだねぇ、教えてあげるなんてダンは良い奴だ。
「いや、結局あんまり上手くいかなかったけどな。」
やっぱり上手くいっていないのか。 私が見ていてもやはり断続的な魔力。
どうしてもつながらない。
それからダンは門が気になったのかどうするのか聞いて来る。
木で覆うのさ。 見ないと解らないと思うねぇ。
喋っている内に主がやってきた。
カレンと、ルルも一緒だ。
内壁と新しい門は終わったようだ。
ここが最後だ。
「皆、お待たせしたかな。」
今さっきついて、門を降ろした所だねぇ。
「セリカおねえちゃん凄いんだよ、爪でだぁぁぁて。」
ラーナが話してくれる。 ちゃんと見ててくれてたんだねうれしいよ。
「ムー、ラーナちゃん、ちょっと手伝ってほしいの。」
主に呼ばれて、二人は行ってしまった。
馬車を降りて主と二人のやることを見守る。
ルルがラーナの手を繋いでいる。 何か手伝うようだ。
ダンも馬車を降りて見るようだ。
カレンがまた私の顔を見ている。 頷いてあげる。
カレンが挨拶して、今からやる事を説明している。
見ないとわからないねぇ。
4人が門の中に入って行った。
主が種を植える。
太刀でなにやらやっている様子。
太刀で魔力を何かしているのか。 私にはわからない。
ルルが一番真剣な顔でラーナの手を握っている。
ラーナずっと悩んでたもんねぇ。
地面からツタが現れる。 1本が2本に、4本にドンドン分かれて、門の天井を覆うように広がっていく。
高速で伸び続けるツタ。 そのまま別れて門を呑み込んでしまう。
入口を作るように絡まっていく蔦。 急に上に伸び始めるとドンドン伸びる。
上でわかれて葉を付けた。 黄色い葉っぱ。
蔦が溶けるように幹に変わる。
真っ白な幹。 見たことない幹の色。
あれは、ムーの魔力なのか。 でも総量が絶対に足りない。
主が増やしたのだろうか。 相変わらず滅茶苦茶な事をする主。
終わったようだ、主が太刀を閉まっている。
これで壁と門は完成だ。
カレンのさっきの鎌が気になる、ちゃんと見てみたい。
「カレン、ちょっと鎌見せてくれるかねぇ?」
「セリカ様、構いませんよ。」
背中から取り出すカレン。 布を取ってくれる。 青い鎌が現れる。
綺麗な少し白い青。
「セリカ様、少し武器の使い方を教えていただけませんか。 初めてな物で。」
「使い方かねぇ。」
そのまま持っている体制で腕をつかんで動かしてみる。
狩る動作の鎌、他とは少し違う気がする。
刃が内にある分、こんな動作をするのかと、新鮮な気持ちに成る。
基本は鎌先で刺す事にあるんだろうか。
カレンと話しながら、色々と試してみる。
上薙ぎ、下薙ぎ、振り下ろし。 少し大きな動作に成るがそれは大剣も同じだ。
鎌は冷気を纏っているのか周辺が冷たく成ってくる。
「ルルちゃん! 下!」
主が何か叫んでいる。
ルル? ルルの方を見ると景色が黒一色に成っていた。
何かが、起こったのは解る。 突然風景が飛んだ。
何が起こったかはわからない。
カレンの手を持って居たからか、カレンは一緒に居る。
それ以外の存在は何も感じない。 誰も居ない、久しぶりの感覚。
カレンを離したらどこかに行きそうで、ずっと持って居た。
カレンは何も話さない。 私もよくわからない状況に少し混乱していた。
ずっとただ暗い空間、上も下もよくわからないが、何か足だけは着いている。
先に明るい所がある。 それがどんどん広がっていく。
目の前が真っ白に成った。
高い石の天井。
何かの台座だろうか、沢山の魔法陣の書かれた床。
人が10人は乗れそうなその床に、私とカレンで立っている。
そして目の前に、3重の鉄の柵。
ぐるりと囲う鉄柵で、あまり外が見えない。
隙間から人が見える。 聖職者のような恰好をした人が数人。
横には沢山の魔法陣が書かれた紙の山、文字はよくわからない。
「当たりか?」
「デーモンが2匹です。 何か大きな鎌を持って居ます!」
私達の事だろうか。 当たり?なんだろうか。
「目が動いてるぞ! 弱らせろ!」
床から上がった電撃が目の前を真っ白に染め上げた。




