魔界編 ススカ 66 ~セリカ編 17~
主が戻ってきた。
手にはムジが抱えられている。
「お帰りですか、どうでしたかな? 北門の場所は。」
「ミドラ、もう山削ってきたんだぜ。」
ミドラが唖然としている。
まだそんな時間たってないもんねぇ。 主だからねぇ。
「早く終わって良いでしょ! 次は壁つくるのよ。」
主は壁を作るようだ。 ムジがその説明をしている。
なんだ積み上げれば良いのか。
石なんか切らなくても積み上がるんじゃないのか?
主が作業に取り掛かろうとしている。
先に木の話をしなくては。
「主、先に良いかね。」
「どうしたの? セリカ。」
主に、木をミドラに売ってそのお金をコテツとメルサの所に分けたいと話をする。
「良いんじゃない? ミドラいくらで買い取るのよ。」
「100万金貨でいかがでしょうか。」
ムジが何やら騒いでいる。 そんなにするのかこの木。
まぁ高い分には良いじゃないのさ。 2人には世話に成ってるしな。
主が良いと言ってくれた。 少しコテツにも楽させてやれるかな。
「魔王様、これ領外に売る許可を頂きたいのです。 他国を助ける事に成るかもしれませんが。」
「良いわよ、そんな脆い木、何につかうのよ。」
そうだ何に使うんだ。 食器とかか? メルサの所ではそうしてたぞ!
ミドラの顔が引きつっている。 具合でも悪いのか?
その後準備があると言って立ち去るミドラ。
一応また買い取ってくれと声を掛けておく。
主すまなかったね。 壁をやるんだね?
門は切り取るのか、成るほど。 私には、よくわからん。
「壁を作るのよ。 セリカ西側お願いできる?」
西側、良いのさ。 道の横から積んで行けばいいんだろ?
とりあえず石の山を一個持って行こう。
主も一つ浮かしたようだ。
さてやるかね。
「セリカ、競争ね。」
競争? 主に勝てるかもしれない!
少し気合が入る。
3叉路の手前から始めればいいんだね。
皆がこちらを見ている。
「そこら辺の奴ら、石飛んでくるから逃げとくのさ。」
とりあえず私は言ったぞ、競争なんだこれは。
浮いた石を一個づつ飛ばしていく。
とりあえず適当に飛ばした後は、そのままぶつけて積み上げていく。
多少石が飛び散るが、周りには何も存在を感じない大丈夫だ。
今ある壁の高さを意識して、同じことを繰り返していくだけ。
途中で削れた山が見えて来た。
主か削った山、両側が崖になっているそこにもとりあえず投げて積んでいく。
途中からどんどん早く成る。 競争なのだ出来るだけ早くやる。
何個か石がダメになったが、割れたのもそのまま持ち上げて突っ込んで行った。
北の街道が見えた。
終わりだ。
主は太刀を持って、すぐそこまで来ている。
主切って私とそんなに変わらないのかね?
でも私の勝ちだ。 主に勝ったうれしかった。
主とムジの元に戻る。
「石足りなかったか? まだまだあるぞ!」
もう終わったぞムジ、何言ってるんだ。
次は南側だと主が言っている。
固まってる場合じゃないぞムジ!
「まだ半分あるでしょ、セリカ私がムジの指示で、1段目置くからその上お願い。」
主が置いた所の上に置いて行けばいいんだな。
さっきやったから、大体の数は解る。
一気に飛ばして積み上げるやっている事は一緒だ。
森を抜け、南の街道を超えて、また森を抜ける。
東の街道が見えて来た。
これで一周だ。
「ムジ、終わったわよ。 次は門ね。」
ムジが何か言おうとして諦めていた。 まぁ主だからな。
主はダンテが居る西門から始める様だ。
「セリカ、西門行くわよ。 残った奴は元の場所に戻しましょ。」
解ったのさ主。 ムジ古い壁残ったままだと不便だろ?
魔獣達が寝ている近くに残っている石を置く。
ずっと寝てるなあいつ等。
石は道などに使うタイルに加工されている様だ。
すぐに主は西門へ行ってしまう。 主待ってくれ!
主がダンテを見つけた様だ。
門から退かすように話している。
切るんだもんなこれ。
「セリカもやったわよ。 ねぇセリカ?」
石の壁かい? さっきやったねぇ。 もうすぐお昼じゃないのかい? 早く食べたい。
「門と壁からはなれろ! 死ぬぞ!」
鐘が鳴りだす。 勇者が来た時と同じだ。
主の方が偉大だけどな!
「セリカ、やる?」
私は、あまり想像がつかない、切るだけならできるけどさ。
主のを見てから他のをやるようにするのさ。
「わかったわ。 皆どいててね。」
主が太刀を抜いた。
地面でも切るのかね。
動いたと思ったら浮いている門。
今何したんだね? 主。 どんどん私も見えなく成ってるよ?
「持って行くわ、セリカ、ダンテ連れて行って。」
こいつ連れて行くのかい?
目の前に行ってしゃがんでやる。
剣に捕まるダンテ。 余りしゃべらない。
緊張してるのかね? なんかコテツもこんなんだったな。
「ダンテ、捕まっとくんだね。」
コテツの時の教訓を生かして、とりあえず伝えておく。
主と門と一緒に飛んだ。
ダンテは何も言わない。 でも足が震えてるぞ大丈夫か?
「皆、そこに門置くから、避難しててね。」
積んだ石壁の間に来た。
奥には3個の道、その少し手前。
門が着地した。 土埃を立ててドンとそこにある門。
「ねぇちゃん、端がちょっと空いてるんだが石詰めるか?」
ムジが言うように少し隙間が空いている。
何か主には考えがあるようだ。
地面に降りて、ダンテを降ろす。
ダンテは立っているが、意識あるか? 大丈夫かダンテ!
背中を叩いてやると、顔が動いた。
とりあえずは大丈夫なようだ。
「セリカ、ちょっと魔力貸してくれない?」
主の為さ、もちろん良いのさ。
木を生やすと主は言っている。
よくわからないが、主が出来ると言っているんだ。 できるんだろう。
門の中に入って、真ん中あたりで主は実を植えた。
生やすのか。
「セリカ、手貸してね。」
腕を掴まれた。 主の魔力に直接触れるのは久しぶりな気がする。
主も私の魔力は久しぶりのようだ。
共同作業、なんだか嬉しい。
主の魔力をきちんと感じるべく目を閉じた。
黒い膨大な魔力、それが私の魔力を吸い取って、どこかに運んでいく。
足しても足しても持って行かれる魔力。 どれだけ持って行くんだい?主。
それがかなりの間続く。 でも主の魔力はやっぱり優しい魔力だ。
どれだけ持って行かれても不安を感じない。 すこし気持ちいいぐらいだ。
主が魔力を止めた。 終わったようだ。
もう少ししていたかった気分。
「木が生えて、門を吞んじまったぞ。 ねぇちゃんがやったのか?」
「そうね、セリカの魔力でやったわ。」
私の魔力か。 ほんとに出しただけだけどねぇ。
主は何をやったんだい。
外に出て見てみる。
巨木が生えている。 門をぱっくり開けて。
それなりの存在を持つ特別な巨木。
上の葉から私の魔力を感じる。
主はこれをやったのかい? やっぱり滅茶苦茶だね主は。
「木が生えたんだぜ。 メランねぇまた偉い事してるんだぜ?」
ヒヒが街の方からやってきた。
飯だ、皆で飯を食う時間だ。
道から少し離れて、草原に腰を落として皆でご飯を食べる。
皆で巨木の感想を話していた。
私も森の木とは違う気がする。 大きさは一緒だけどね。
それより飯だ! ムーから貰った紙袋を開ける。
中に二個入っている紙袋、片方を主に渡す。
早速紙袋を開けた。 パンにはさまれた肉。 長細い肉。
「ソーセージは自家製なのニャ。 昨日から仕込んで置いたのニャ。」
ソーセージというのか、上手そうじゃないか。 ムーもこんなの作れるのか。 凄いな!
「ムーちゃん、凄いです。 どうやって食べるんです?」
「このままかぶりつくのにゃ。」
ムーがそのままかぶりついた。
旨そうに食うなムー!
私も食べるぞ!
凄いシンプルな味なのに、このソースと絡まって口の中がどんどん複雑に成っていく。
噛めば噛むだけ肉の味が広がっていく。
幸せな味だ。
ダンテが門から降りて来た。 主と話している。
なにやら他の門もやるようだ。 昼が終わったんだ。 私も門のあれやるぞ!
コテツの所で武器買ったのかい? それを先に見せておくれよ。
カレンが馬車から持ってきた。
大きな刃がついた鎌、青い鎌、刃だけ紫だ。
刃には一本白い線が入っていた。
いいじゃないのさカレン。 大きいのは良いのさ。
なんだそれ動くのかね。 私にも一回使わせてほしい!
ルルが魔力流したのか、ルルの魔力制御には正直敵わないと思う。
ルルは新しい刀を出して来た。
2本目ずるいぞ!
その刀は魔力が桁違いに詰まっている。
なんなんだそれ…… 根本的に何か違うぞ。
「ルルちゃん、出来たばっかりの刀だけど、試し切りしない?」
主あそこに行くのかい? ルルのそれ受けてみたい!
「違うの、古い壁切り崩してほしいのよ。」
壁かい? ルルが崩すのか。
新しい刀つかいたいよねぇ。
「その前に門を作らないといけないから、セリカとムーとラーナちゃんは東門にヒヒと行って待ってて。」
門かい?切るさ。 さっき見てたからね!
ムーとラーナでヒヒに乗り込む。 そこから東門を目指すのだ。




