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底から  作者: ぼんさい
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魔界編 ススカ 64 ~セリカ編 15~

未開の森から、デカイイノシシと、太った卵を産む鳥、そして私と同種の蛇を連れて竜の姿でルルの村を超えた。


誰も居ない道。


主のお腹に入れてもらって最初に移動した頃を思い出しながら空を飛んでいく。


人型と違ってこの龍の身体は大きくて長い。 でも移動速度は変わらない。


髭が長いせいか、存在を遠くまで感じられる。


普通の森では怯えて隠れる者が多い。 別に私が何かするわけでも無いのに。



しばらくたって、大きな存在が感知できた。 主だ。


褒めてもらいたくて速度を速めた。



相変わらず森に逃げ込む小さな存在。


存在が大きな主だけ街道に居る。


その前に主の馬車を引いたヒヒ。 何故か止まっている。


近くには、最初の頃主が放ったレーザーの跡。


ヒヒに初めて会ったのもこの辺だったと思い返しながら、その存在に近づいていく。


とりあえず主に声を掛ける。 馬車の中に居る主が私を見ている。


早く主に会いたかった。



荷物が邪魔だった。


とりあえず草原におろす荷物。 イノシシは意識はあるようで地面に着くと、そのまま立っている。


木は適当にその辺に転がしておく。 岩を砕いてたけど被害は無いだろう。


手ぶらに成って、人型に戻る。


主の顔が良く見えた。


「セリカ、お土産大きすぎない? 何に使うのそれ。」


主が馬車から街道を歩く私に聞いて来る。


何故か周りの魔人は森の中だ。



主に説明する。


イノシシは力があるし、鳥は卵を産むんだと。


そして、こいつらは言葉を理解する。 どうだ主!良いもの持ってきたぞ。


主あんまり反応無いな。 なんでだろ。


アイツらが突っ立ってるからか!


ちゃんと主に挨拶するんだ。


イノシシが土下座をして頭を地面に着けた。


主が安心できるようにちゃんと見せないと。


イノシシの頭に足を乗せて、安全をアピールする。


お前ら動いたらどうなるか解ってんだろうねぇ。


言ってもいないのに震えるイノシシ。 何をそんなに震えているのか。



「とりあえず門の外に居てもらわないとね。」


主から許可が出た。 持ってきた甲斐がありそうだ。


ちゃんと働くんだぞお前ら!



「持って帰るんだぜ? その魔獣。」


ヒヒが何か言っている。 あんたは反対なのかね?



「それであの木はなんなのよ。 実じゃなくて木なの?」


あれはミドラからの頼まれ事だ、実は胸に閉まってある。


こいつも主に紹介しないと。


実を出して、主に渡す。


「ありがとう、セリカ。 でもあれ持って行けないわよ?」

主に礼を言われた嬉しい。


実だけで良かったんじゃないのか? そんな訳無い。 主が魔獣欲しいって言ってたんだ。


言ってたよね?


あいつ等は自分で歩くのさ。


主に伝えて、私はヒヒの馬車に乗る。


何を怯えてるんだいヒヒは。


さぁススカに帰ろうぞ!



アイツらの歩く振動が馬車に伝わる。


跳ねるんだ。 ちょっとは気使わないかね。 そんなんだから主に喜んでもらえないんだよ。


魔獣達は遠くの方へ移動していく。


これで後は一つだけだ。


少しお腹で魔力を練ると、青い目の蛇が私の胸から顔を出した。


相変わらずチロチロ舌を出して、可愛い奴だ。


主の方をじっと見ている。



「主、持って帰って良いかねぇ。 なつかれちまったのさ。」

主に許可を貰うんだ。


「良いんじゃない? これセリカと同じ種類の蛇よね。」

案外あっさりだった。 流石主よくわかっている。


まぁまだ飛べないんだけどさ。


主が寄ってきて、蛇を指で撫でている。


私も前してもらっていた、主のは不思議と気持ちいいんだ。



「それ、あの毒蛇なんだぜ? 村壊滅させるっていう。」

ヒヒが前から聞いて来る。


村を壊滅させるとか懐かしい話だ。


主がこの胸元に居る蛇と私が同じだった事をヒヒに言ってくれている。


「そ、そうなんだぜ? 蛇って強く成ると龍に成るんだぜ?」


私も最近知ったのさ。



相変わらず撫で続けてくれる主。 主が気に入ってくれて良かった。


ずっと蛇と顔を合わせている。 主はしゃがんで出来るだけ目線を合わす。 ルルの時もそうだった。


その赤い目に吸い込まれそうになるんだ。


「セリカ、名前つけてあげた?」


名前、主に付けてほしかった。 私はあんまり自信が無いのだ。


「じゃぁカレンね。 よろしくねカレン。」


決めていたかのように名付ける主。


カレンいいじゃないか、よろしくなカレン。



新しく名前を主から貰った蛇を見る。


存在が揺らいでいる、大きくグニャグニャに動き出す存在。


魔力も同じだ、体から始めんばかりに膨張縮小を繰り返す。


色んな物が混ざった黒。 それがカレンを包み込む。


真っ黒な長細い何かに変化していくカレン。


主は何をしたんだ。 ルルの時と同じだ。 カレンが変わっていく。


私の胸から飛び出して、馬車の外に出てしまう黒く成ったカレン。


浮いている。 そのまま長く太くその黒い塊が変わっていく。



拡大し続けたそれは、青い龍に変わった。


赤い角、赤い爪。 私もあんな風に見えているんだろうか。


大きい龍。


口から青い何か出たり入ったりを繰り返している。


決して小さくないその魔力。


私も最初口の中で火が暴れた。 急に大きく成った魔力を抑えられないんだ。


そのまま吐いてしまうとヒヒが死んでしまう。



「カレン、それは草原に捨てるんだねぇ。」



叫んだ。 草原を向くカレン。 その魔力が口から放たれる。


キラキラと空気をも凍らせるカレンのブレスは草原に着弾して、周辺を氷漬けにしてしまった。


「ごめんなさい、あなた達。」


落ち着いた声が聞こえる。 カレンの声?


「主様、セリカ様、カレンでございます。 よろしくおねがいします。」


カレンがこちらに向いて頭を下げて来た。 カレンの声だった。


主が名前を付ける行為に何か意味があるんだろうか。


私も名前を貰った時、何も我慢しなければこうなっていたのかもしれない。 


ルルを守るために中途半端な大きさに無理やり留まって、その後大きく成りたい衝動を解放したのを覚えている。


やはり主はすごい。 存在を簡単に変えてしまう。



竜の姿だったカレンが人型に成った。


青い髪、青い目、私と同じ褐色の肌。 何か姉妹が出来た様だった嬉しかった。


また主が何かしている魔力が動く。 それがカレンに纏わりつくと、カレンが服を着ていた。


ミドラの様なスーツ姿の青髪の女性。 それが街道に立っていた。



「セリカ様、私があれを持って行きましょうか?」


さっき聞いた声がその女性から出てくる。


魔獣達の存在を忘れていた。 それほどカレンが龍に成ったのが驚きだった。


急に知らない竜が街に行ってもパニックに成るだけだと言うと。


カレンは私の横に座る。 背丈もそんなに変わらない。


姉妹が出来た。



「カレン、良い主見つかったねぇ」

森で初めて会った時に、良い主を見つけるんだと行った事を思い出す。


「セリカ様のおかげでございます。 主様よろしくお願いします。」


「よろしくね、カレン」


主ともうまくやれそうだ。


そこから主に、前皆で未開の森に行ったときに会った事、先ほどカレンが一人で私の所に来た事なんかを話す。


主は笑顔で聞いてくれた。


カレンもたまに相槌をくれる。


やっぱりイノシシとかは要らなかったんじゃないだろうか。 彼等は、遠くの方で前進を続けていた。



気付けば、道が合流する地点に来る。


魔人が騒いでススカに逃げ込んでいる。


また勇者でも襲ってきたのか。 そんな騒ぎっぷり。


「セリカ違うと思うわ、あの子達名前無いの?」


主に聞かれる。 名前? 適当に付けた一郎二郎を主に伝えた。


アイツらを恐れて魔人は逃げているのか。


イノシシが鉱山からの街道に差し掛かろうとしている。



「一郎、二郎、その道踏むんじゃないのさ。 踏んだら殺して食っちまうからねぇ。」


「私も協力しますわ、セリカ様」


私とカレンの言葉に反応したイノシシは遠くで顔を縦に振っている。


あいつら耳は良いんだ。



人気の無く成った街道をヒヒが進む。


「メラン! 助けてくれ街が魔獣に襲われる!」


ダンテが血相を掻いて走りながら叫んでいる。


魔獣に襲われる? どこの不埒物なんだ! 主の街を。


「あぁ、そうだ、ビッグキングボアとファットコカトリスだ。 なんで未開の森の魔獣がこんな所に。」


「あれセリカのよ。」


アイツらの事か、大騒ぎしすぎじゃないか?


主のいう事も聞くと思うぞ。


「そうなの? 皆待機して、そこで待ってて。」


主が言うと、イノシシは担いでいた木を降ろしてそこに座り込んだ。


いつからか付いてきていた鶏も一緒になって休んでいる。


何、安心したような顔してるんだあいつ等。 私にはあんな顔見せなかったぞ。


「セリカ様、あの子達少し教育が必要では?」


カレンは解ってくれている様だ。 でも、あんまりそんな真剣な目で見ないで欲しいんだ。


カレンが本気でやったら死んでしまうぞ!

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