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底から  作者: ぼんさい
73/98

魔界編 ススカ 63 ~セリカ編 14~

ベルゼブブと主の会話はすぐに終わり、城を出た。


ヒヒは何も言わず進んでいる。


ただ後ろにある岩だけの山が遠ざかっていく。



あれからずっとイライラする。


よく考えてみればあんな上から見下したような会話。 逆だと思う。


思い返すだけでどんどん魔力がまた溜まっていく。

 

「主、あんな奴あそこで殺してしまえばよかったのさ。」

口に出てしまう。 わかってはいるんだけど。



「セリカ、戦争したってしょうがないじゃない。 とりあえず要望が通ったからそれで良いのよ。」


「でも、主、あんな弱い奴と交渉すること無いのさ。」

あんな奴と交渉する必要あったのかね主。


どうも気に食わない。 私が制御を出来ないせいだろうか。



「セリカにお使い頼んで良いかな?」


お使い? ススカに忘れ物かい?


「未開の森で、実取ってきてよ、ついでにあそこで練習してこれば良いじゃない。」


違うのかい、嬉しいけど、主はいいのかい? 主も溜まってるんじゃ。


「私はヒヒとゆっくり帰るから、後で追いついてきてよ。」


何か気を使わせてしまっている気がする。


でも主が言っているんだ、行って来よう。


剣をきちんと振りたくて仕方ない。 最初にあの場所に行こう。


そう思うと既に体は上空に浮いてた。


真下にヒヒの馬車。


そこから、普通の森、その奥にあの大きな木が見える未開の森。


全速力で飛ぶ、早くこのイライラを何かに変えたい。


主がさっき何か言ってた気がする。 魔獣を連れてこい? お土産の事か。



でもまずはあそこだ。


高く飛び上がった私は、巨木より上を飛ぶ。


流れていく下の風景、途中で鳥を何羽も追い越した。


少しびっくりする鳥、当たらないだけ良いと思え。


見えてくる土。 あの練習場。


高度を落として、そこに降り立つ。


相変わらず何も生えてこないその場所。 初めて一人で来た。


ただ木の葉が揺れる音と、風の音だけがしている。


存在は感じるがどれも小さい。 いつもの事だ。



剣に布を吸わせる。 さっき魔力を出したせいか、緑の部分が苦しそうに点滅している。


とりあえず素振りから。


広い方に向かって、頭の上で素振りをする。


1回、2回、やはり前より早くできる。 どんどん、早く振るように加速していく。


上でビュンビュン成る大剣。 それだけでも気持ちよかった。


そこから横薙ぎを加える。


縦、右、左、体全体を使って、剣を振る。


地面を踏みしめる度に、削れていくのが解る。


また集中してしまった。 


私の足元の地面が他の場所より体一個分ぐらい下がってしまって居る。


目の前に土、ちょうどいい。


剣に魔力を込める。 少しだけ。


それを思いっきり目の前の地面に叩きつけた。


周囲が割れる。 広がる地割れ。


あまり抵抗の無い剣は根元まで入ってしまう。


そのまま一周くるりと回った。


後ろまで綺麗にV字の後が続いている。


脚の下には底が見えない奈落の底。


少しでこの威力なのか。 ちょっと発散不足だ。


全力でやると地面が完全に割れてしまいそうな気がする。



気を取り直して、森を向いて斬撃を振るう。


巨木目掛けて、何回も飛ばす。 それを早く早くしていく。


一撃で切れてしまう木。


何本倒したか解らない。 少し草原が出来てしまった。



でもまだ森は残っている。 また同じことが出来そうだ。



一度息を吐いて、呼吸を整える。


次も斬撃と思って居ると、小さな存在が近づいて来た。


他のは全て私から離れようと遠ざかっているのに、一つだけ近づく存在。


草むらで姿が見えない。


確実に私に近づいてきている。


草を揺らすことも出来ない小さな奴。


そいつが、草むらから姿を現した。



赤と褐色のストライプ、青の目をした私の靴より小さな蛇。


私の同種。


それが、草むらから出てきて首をもたげてチロチロ舌を出している。


どこかで見たような。その蛇


横に優しく大剣を置おいて、しゃがんで指で頭を撫でてやる。


何か同じ事をした記憶がある。 この前訓練した時同じように蛇を撫でた。


「この前の奴かい? わざわざ会いに来てくれたのかね?」


その言葉に反応して、蛇が止まって私を見てくる。


何か言いたいのだろうか。 首を傾げて考える。


「一緒に来たいのかね?」


チロチロしだす舌。 主に会った時と同じ状況。


私も行きたいと言いたかった、でもあの時は喋れなかった。


指を地面に差すと、その指を伝って私の腕を昇って来る蛇。


すこし、くすぐったいが可愛く思える。


そのまま肩まで来て蜷局を巻いた。


顔を向けて、また指で撫でてやる。


舌をチロチロして答えてくれる。


でもそこに居ると、飛ばしてしまいそうだ。



主はどうしていただろう。 思い出した。


「そこは危ないのさ。」


指を出すと素直に手に巻き付いて来る。 そのままこちらを見て止まる蛇。


「ここに入ってるんだねぇ。」


シャツの胸元を開けて手を入れると、中に入って行った。


主と同じような状況。 何か嬉しく成って、さっきまでのイライラが消えていた。



お腹を少し叩くと、モゾモゾ動くその蛇。 でも噛んでこない。


もう練習は良い気がした。 相手が居ないとこれ以上出来ない。


お土産を取りに行かなくては。


「少し飛ぶのさ。」


お腹の蛇に声を掛けて、大剣を背に背負って森に飛んだ。



私から逃げている沢山の魔物。 クマや蛇、イノシシ。


大きいのはそれぐらいだ。


前はあまり気にしていなかったが、何か役に立ちそうな奴は居ないかと見ながら考える。


地響きを立てながら走る2足歩行のイノシシ。 あいつなら毒も無いし良いんじゃないか。


決まれば早い、そいつらの群れの前に立つ。


地響きを立てて此方に向かってくるイノシシ。 私に気付かない。


お腹でモゾモゾ蛇が動き出す。


「大丈夫だねぇ、負けやしないのさ。」


少し手を添えると、モゾモゾが止まった。


益々迫って来る30mぐらいのイノシシ。 どうしようか。


横にある巨木を使おう。


手に拳を作る。 それをそのまま巨木に叩きつけた。


抉れる巨木。 徐々に私の方に倒れてくる。


イノシシは止まっている。 作戦通りだ。


倒れて来た巨木をそのままアッパーで殴って、粉砕させた。


そのままの勢いで、浮かび上がって、イノシシの顔の前に行く。


ウルウルした目で見てくるイノシシ。


そいつらに声を掛ける。


「あんたら、私を手伝ってくれるかね?」


"ンモンモンモンモ"


凄い勢いで頭を縦に振る2匹。


他の群れは逃げ出してしまう。 ドドドドドと足音を立てながら逃げていくイノシシの群れ。


それを見てさっきまで頭を縦に振っていた2匹がそっちを見ていた。


「なんなのさ。 逃げたいのかい?」

優柔不断な態度に少し怒ってしまった。


”ンモモモモモモモモ"

首を横に高速で振るイノシシ。


「そうかい、じゃぁ決まりだね。 そこで待ってるのさ。」


"ンモンモ"

大きく縦に首を振ったイノシシ。 そのままそこに立って待っている様だ。


場所が分からなくなるので、周辺の巨木を20本程度倒す。


主がやっていたように、全部蹴って跳んだ。 少し楽しい。 



周囲からぽっかり木が消えた所にぶるぶる震えるイノシシ達。


逃げないし一石二鳥だろう。



後は実だ。 巨木の実。


上からだと小さくてあれが見えない。


どうやって探そうかと、悩んでいると上空から鳴き声が聞こえてくる。


あれは卵を産まなかっただろうか。 昔見たことがある。


その白い太った鳥は卵生産する。 街に役に立つはずだ。


ついでに実も探させればいい。


メルサのエッグサンドを思い出す。 あれに使えるはずだ!



あれをやろう。 斬撃を飛ばす奴。


剣でやったら死んでしまう。 今回は爪でやるんだ。


右手の爪を伸ばす。



お腹でモゾモゾが始まる、私も主の魔力を感じて怖かった。


大丈夫と少し手をかざしてあげる。


モゾモゾは収まった。 可愛い奴だ。


後は鳥だ、空に飛ぶ4匹の群れ、それを落とす。


僅かな魔力。 出来るだけ小さく。


そいつらに向けて、手を振って斬撃を飛ばす。


向かって行く斬撃、鳥は気付かない。


少しだけ空間がゆがんで見える透明の斬撃が鳥に当たる。


急に無く成る泣き声。


落ちていく鳥。


そのまま落ちると死んでしまうのでは無いか?



急いで飛んで拾いに行く。


5mぐらいある鳥、それの脚を掴んで集める。


片手で2匹、両手で4匹まだ生きている様だ。


イノシシの所に持って行く。


「あんたら、これ持っててくれないかい?」


2匹が寄ってくる。


「お前はこれなのさ。」


2匹が寄ってくる。


ちょっとイライラする。 指は刺せない。



「お前はこの2個持つのさ。 お前は一郎なのさ。」


顔の傷が1本の方に左手で持って居た鳥を投げる。


器用にキャッチする一郎。


「残りは二郎、あんたが持つのさ。」


顔の傷が2本の方に右手の方の鳥に投げる。


バタバタしてなんとか受け取る二郎。


「名前覚えとくのさ!」


"ンモンモ"


両腕で鶏を抱えたイノシシは、首を縦に振っている。


理解したようだ。



鳥が気絶してしまって居る。 巨木の実を探さなくてはならない。


すこしめんどくさく成りながら、倒れている木を見ると、普通に実を付けていた。


木の図体に似合わない小さな指でつまめる実。 それを適当に取って胸にしまう。


後は帰るだけだ。 このお腹の子を早く主に紹介してあげたい。



目の前には30mぐらいのイノシシ。 どうやって運ぼうか……



思いつく、青目の蛇をお腹から出して、ジャケットのポケットに入れる。


相変わらず従順な蛇。


「そこから出るんじゃないのさ。」


優しく伝える。



魔力を体に纏い、久々に体を変化させる。


龍の姿になるのだ。


視界がどんどん上がって行く。


小さく成るイノシシ達。 すこし怯えてしまっているが仕方ない。


主から貰った大事な服は、首の鱗の所に挟んである。 ここなら落ちないし大丈夫だ。


変化が終わった。


巨木と同じぐらいの視点。 こんなに大きかったか?私。


でも早く主に会わなくては。


前足で、怯えるイノシシを掴む。


従順なイノシシ。


鳥が意識を戻したのか騒いでいる。


「うるさいんだねぇ。 食ってやろうかねぇ。」


小さな鳥、そいつらに顔を近づけて言ってやると静かに成った。


一郎と二郎ももっと静かに成る。 なんだか可愛いじゃないか。


そのまま上に上がって、生えている巨木を後ろ足で抜いた。


ミドラの頼まれ事だ。


より騒がしく成った森。 それを無視して主の元へ急いだ。

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