表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
底から  作者: ぼんさい
70/98

魔界編 ススカ 60 ~セリカ編 11~

ダンテについて、裏路地を抜ける


そこに馬車が2台並んでいた。


ケンタウロスと、オロバスの馬車。


「すまん、俺は他の門に言いに行かなきゃならんので、先に行く。」


ダンテがケンタウロスの馬車に乗って行ってしまう。


オロバスの馬車はヒヒが引いていた。


「セリカねぇ、久しぶりだぜ。」


「ヒヒ、元気してたかねぇ。」


「おう、ダンテに使われてたぜ。」


「セリカねぇ、ダンテも助けてくれたんだってな。ありがとうだぜ。」


一人の男の魔人が馬車に乗っている。


シルクハットにタキシード、革靴を履いた男はさっき会ったミドラだった。


「あんたも街会議なのさ?」


「ええ、商人ギルドのマスターですので。」


「そうかい、その街会議って何なのさ。」


「街会議はですね……



ミドラが街会議の説明をしてくれた。


ススカの街は統治者が居ない。


あのドワーフのムジがやっている様だ。


何かを決める為に、月一回会議を開く。


大体はご飯を食べて終わり。 その時噂話を話し合うぐらい。


でも今回は臨時で何か内容がある。


それがミドラの話だった。



魔人も色々大変なんだねぇ。


難しい事はわからないや。



「ところでセリカ様は龍だと、お聞きしましたが。」


「そうだねぇ、なんか成ったねぇ。」


「成った?のですか、一つ昼間の買い取りという所でご相談が。」


「何なのさ? 牙でも取ろうってのかねぇ。」


「いえ、そのように大きな物では、鱗は取れますかな?」


「鱗かい? 取れるとは思うけど、あんた達持ったら溶けちまうのさ。」


「と、溶けるのですか? それは難しいですね。」


私は火を吐く龍だ。 赤い龍。 だが蛇だった頃の名残か毒もまだ持って居る。


鱗に一度魔法を通してから、どうもその毒が回っている感じがする。


実際は試した事ないんだけど。


黙り込んでしまうミドラ。 何か他の事を考えている様だ。




しばらく進む大通り、ここは被害が無かっただけあって、相変わらずの賑わいだ。


でも進むにつれてどんどん人は減っていく。


「セリカねぇ、ミドラさん、着いたぜ。」


高炉があった広場。 そこには炉も無くなっていた。


主が近くに居る存在を感じる。


馬車を降りた。


長机と椅子だけが置いておる場所。 天井も何も無い。


そこの北側に主が座っていた。


周りには魔人の輪、野次馬だろうか。


「メランねぇさん、久しぶりだぜ。 昨日は、ありがとうだぜ。」


「なんだねぇ、主、何かまたやったのかねぇ。」


ヒヒに続いて私も挨拶をする。 炉が無くなってるんだ。 主なにかやったな。


ミドラが後から出てきて、主に膝まづいている。


主に魔王様とか言っている。大げさな奴だ。



長居机の南側にはムジが座っている。 足着いてないぞあいつ。


私も座ろうと歩いて主の方に近づく。


その様子を見てか、デーモンの女が椅子を主の後ろに用意してくれた。


主に挨拶をして、それに座る。


剣を置く場所が無い。 仕方ないが地面に差しておこう。 結構深く埋まるなこれ。



次にダンテがやってきた。 どこ行ってたんだアイツ。


主がダンテと挨拶をしている。


主はダンテの事知ってるのかね?


昼間一緒に街を治していたようだ。 ずっと働いてるんだねぇこの男。



次にあの牛頭がやってきた。


冒険者ギルドのマスター名前をロレーヌというらしい。


良く聞いてくれた流石主だ。


ダンが後ろに居るが喋らない。 腹でも痛いんだろうか。



矢次端に、ムジと同じような背丈のドワーフが現れた。


なにやら最初からムジと喧嘩をしている。


彼女は木工ギルドのカガラというみたいだ。



カガラの馬車からルルが出てくる。


ルルと挨拶した後、カガラに主と私の事を紹介してくれた。


ラーナは帰ったのか?


「ルルちゃん、ラーナちゃんは?」


「馬車の中で寝ちゃってます。」


なんだ寝てるのか、大きく成りたいんなら良く寝なきゃダメだぞ。



席が埋まった。 何やら主に関係ある会議が始まった。


「最初に本題だが、この街の所有者がメランに成った。」


本当に魔王になったのかい主。


さっき、からかってしまった。 怒られないだろうか。


でもあまり驚かない。 主より強いのが居るとは思えない。


「所有者って、ベルゼブブは死んじまったのかい?」


「商業ギルドの情報では、死んではいません。 他の街は彼のままです。」


「その情報正しいんだろうね。」


「他に行かないと調べようがありません。」


「まぁ、いいけどさ。」


ベルゼブブか、一度だけ未開の森から逃げ出したのを見たことがある。


周りがそう呼んでいた。 ススカってベルゼブブの物だったのか。


「メラン、お前、魔王に成っちまったのか。」


「メランさん、魔王ですか。 すごいです。」


ダンテとルルが主に話している。


私も少しびっくりだ。 魔王に成ると何が変わるんだい?


「という事で、メランがこの街の所有者だ。 報告は以上だ。」


終わりなのかい? ここに来る意味あったのか。


拍子抜けだ、コテツの作業を見ていた方が良かったかもしれない。


コテツ最後に待ってるって言ってたよな。 早く終わるのわかってたんじゃ。



「ムジ、ここは高炉だったんだよねぇ。 もう新しいの作ってるじゃないか。」


「メランが全部やっちまったんだ、もう炉の作成に取り掛かってる。」


カガラとムジが話し出した。 この二人は仲が悪いのか。


主が全部やってしまったのか。 まぁ主だしなぁ。


コテツ待ってたりしないよな…



「それで、メラン様はどうなさるんです? 何か要望があったりするのでは?」


ロレーヌ、冒険者ギルドのマスターが主に聞いている。


そうだ主のしたい事、良い事を聞くじゃないか。


「木が足りないと思うわ。 鉄ばっかりじゃない? この街。」


言われればそうだ、この街で木が生えているのを見た事が無い。


森育ちの私としては、良いと思うぞ。


早く終わらんかなぁ。


「魔王様がおっしゃられているのは、街の風景では? 確かにススカの街は鉄の街ですが、木が一本も生えていない町というのは他にありません。」


そうだぞ、ミドラそう言う事だ。 あんたも解ってるじゃないか。



「メランさん、あの未開の森の木植えたら良いんじゃないですか? 大きいですし。」


「ルルや、あれは切れないんだよ。 無理だね。」


「切れましたよ?」


ルルが、未開の森の巨木を植えれば良いのではないかと言っている。


カガラわかるぞ、私も昔はそんな事出来ないと思っていた。


でも切れるんだ。 なんなら砕けるぞ。


「切れたのかい? でも、どうやってあそこまで成るんだい? 誰も知らないだろ。」


誰も言わない。 見たこと無いのかい?


「あの木は木の実を落とすのさね、何回も見たのさ。」


「あんた、なんでそんな事知ってるんだい?」


「私は、あそこに住んでたのさ。」


もう龍だとか言ってるし良いだろうと思った。


未開の森の出身で有る事も明かした。


特に大きな反応は無い。 まぁそうだろう。 主のやってる事は殆ど無茶苦茶だ。


「植えるったって、どこに植えるんだよ。 そんな広場ねぇぞ。」


「ここにあるじゃない。 炉の位置ちょっと変えてみてよ。」


「位置は変えれるけどよ、飲み込まれちまうぞ炉が。」


「私がなんとか出来る気がするから、大丈夫よ。」


此処に植えるのか、何とかするのか主。 ほんとに何でもできるねぇ。


未開の森に実を拾いに行くようだ。


私しか知らないみたいだし、私は行くだろうなぁ。


ついでにあそこに行って剣の練習をしよう。


コテツほんとに待ってたりするのか…



「一つ大きな問題がございます。」


ミドラが言う。大きな問題?


「食料に御座います。 この街は食料を一切作っておりません。 他の街からの流入が途絶えると皆死んでしまいます。」


飯はダメだ。大問題だ。


ミドラが言うにはベルゼブブが街道を止めてしまうと、食料が入って来なくなるらしい。


ベルゼブブなんてぶっ飛ばしてしまえばいいのさ。


誰もそんな事は言わない、魔人の世界は難しいな。


「ミドラ、どうしたら良いのよ。」


「恐れ入りますが、魔王様には一度ベルゼブブと話をしていただきたいと。」


「ベルゼブブと話をするのかい? 殺されないかい?」


あのクマから逃げ出す奴が主に勝てるとは思えない。


話すんじゃなくて、条件飲ませに行くんじゃないのかい?



「私がベルゼブブに会いに行けばいいのね。 どこに居るの?」


「未開の森沿いに街道を進んで行けば居城がございます。」


あのあぜ道を逆に行けばいいのか。


「ヒヒ知ってる?」


「知ってるんだぜ、って俺行くのか?」


「なんでよ、一緒に行ってよ。」


ヒヒは何でも知っている。 頼りになる奴なんだ。


何で行かないんだ?


私は行くぞ! 主連れて行ってくれ!


「ルルちゃん、お留守番できないかな。 また勇者来たらダメじゃない?」


「メランさんが言うなら、ラーナちゃんと遊んでます。」


私も剣を改造したかったかもしれない。


でも主と一緒に居るほうが大事だ。


「そしたら明日行くわ、ヒヒ、セリカよろしくね。」


「わかったぜ、今日はメルサの所泊まるぜ。」


私も行く準備するのさ。


ミドラが鉱山からの街道も言っておいてくれと言っている。


ルルが反応している。 彼女は鉱山で良い思い出が無いんだよなぁ。


主が何か追加があると言っている。


「奴隷は禁止ね。 あと、訳の分からない種族差別も禁止よ。」


「主、それはもう大丈夫みたいなんだね。」

昼間見た感じだと大丈夫だった。 ミドラをぶっ飛ばしかけたのは秘密だ。


「メラン様、領主が変わったので、住民は意識が変わっているのだと思います。

冒険者ギルドの文献で見ました。」


それであんなに急に変わったのか。 何か納得できる。


本当に主の街に成ったんだなススカは。


主は食料を作れないススカにご立腹のようだ。


ムジが場所が無いと言っている。


壁なんてつくりかえればいいのにねぇ。


主も同じ意見の様だ。


石なら街道沿いにいっぱいあるさね。



「じゃぁ、終わりね。 皆よろしく。」


会議は終わった。 皆でメルサの所へ行くんだ。


でも、私はコテツが待っていると言っていたのが気になる。


あの男、カウンターで寝てしまう男だ。 またあそこで寝かせてしまうかもしれない。


でも寝ていたら起こしてしまう。 私が行くと無理に作業をしそうな気がする。


もどかしい。 何が良いんだろうか。


主と行くのに剣無もどうだろう。 でもベルゼブブだ。 最悪竜の姿に成ればなんとかなるだろう。


誰かに預けてコテツの所に剣を預けとけばいいのではないか。



「セリカ様、お時間よろしいですかな?」


「どうしたのさ、何か思いついたのかねぇ?」


「未開の森が切れるとおっしゃられておりました。 一部で良いので木を持って帰って来ていただけないかと思いまして。

もちろん買い取りさせていただきます。」


「それぐらい構わないのさ。 私も一つお願いがあるんだけど良いかね。」


「お願い? なんでしょうか。」


「この剣をコテツの店に届けてほしいんだね。」


「この剣ですか、馬車まで乗せてくだされば、そうさせていただきましょう。

持ち込みはダンテ殿に任せてもよろしいですか?」


「構わないのさ、ありがとうなのさ。 あと無理して完成させなくて良いって伝えてほしいのさ。」


「かしこまりました、お伝えいたしましょう。」


乗ってきたヒヒの馬車は私達が使う。


ミドラはどうするんだろう。


「私は馬車を手配いたしましたので待ちます。」


「ダンテ殿。 少し届け物を良いですかな?」


馬車に乗り込もうとしているダンテを引き留めるミドラ。


最初からダンテに頼めばよかったかもしれない。


ダンテは了承してくれた。 ケンタウロスの馬車に私の剣を乗せる。


軋む鉄の馬車。


「こりゃ大荷物だな。 門で何人か拾って届けてくる。」


「ダンテ、ありがとうなのさ。 よろしくたのむのさ。」


「おう、任された。」


ケンタウロスの馬車は行ってしまう。


剣が無く成った感覚、なんだか背中が寂しい。


そこから、主とルルでヒヒの馬車に乗り込む。


ラーナはルルが連れてきていた。 まだ寝たままだ。


鉄の馬車お尻が痛い。


「主、明日最初にコテツの所寄ってもらえないかねぇ。」


「いいけど、剣どうしたの?」


コテツに細工をお願いしている事を伝える。


明日の朝だ出来てないだろう。 とりあえずちゃんとお願いをしに行こうと思った。


「セリカずるいです! 私も少しこの子良くしてもらいたい所があるのに!」


ルルが自分の刀も、と言っている。


ヒヒに聞くと、2日は掛かるみたいだ。


その間に行ってこればいいのさルル。


「とりあえず、最初にコテツの所行って、それからベルゼブブの所ね。」


主は了承してくれたようだ。 ありがとうなのさ主。


メランの晩御飯の話をする。


ルルは相変わらず目を光らせる。


ヒヒが食べ物の話をしてくれていた。


人参以外食えるんだなヒヒって。


馬車に揺られ、メルサの店を目指す。


私の剣はコテツの所に届いただろうか……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ