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底から  作者: ぼんさい
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魔界編 序章 5 ~セリカ編~

魔物達もサイクロプス達も消え、誰も居なくなった村


その真ん中で主がプチデーモンのルルと話をしている。

それまで私はルルとずっと睨めっこをしていた。


この世界の話のようだ。

奴隷の話は知らなかったが、他はまぁ知っていた。


主はいったいどこから来たんだろう。


あの森の中心地を破壊し、動くだけで恐怖をまき散らす主。

でも本当は優しいが、力がたまに爆発する最終兵器その物のような主。


でも今は優しい主の方のようだ。


名前を貰ってから、火が口から出るように成った。

最初は解らず、口の中がずっと火でモゴモゴしていたが、少し抑えられたようだ。

主から貰う力は不思議だ。


私の住んでいた森の話をしている。

周辺の村までしか行った事の無い私。


あの森はかなり危ない場所の様だ。


「レッドセリカサーペントって火吹くんですね、知りませんでした。」


「この子珍しいの?」


「はい、飛べるセリカサーペントは、現れると街を何個も滅ぼしてしまうと言われています。」


「そんなに凄いんだ。」


私も同族が火を扱っているのなんて聞いたことない。

森で火を吹くのは、あの鳥ぐらいだろうか。


頭を撫でてくれる主。気持ちいい。

でも、主の方がもっとすごいと思うぞ。


なにやらルルは街とやらに行くらしい。私も行った事無い連れて行ってくれ。

この喋れない体に若干の不便を感じる。


正直、主とルルが話しているのは羨ましい。


ルルが主の名前を聞いている。

そうだ名前だ、よくやったぞルル


「メランっていうの、よろしくねルルちゃん。」


主の名前はメランと言うのか。

心に大事にしまっておく、メラン良い名じゃないか。


「ずっと森に住んでたからね、古いのかもしれないわね。」


主はずっと森に住んでいたのか、もっと早く出会っていたかった。

でも、今のこの状況に感謝だ。



主の肩位に浮いて、ルルと一緒にススカと呼ばれる街を目指す。


途中横に木々があるが、私の居た森と比べて存在がかなり小さい。

大きさも小さいのだが。


私の存在が大きく成った事でこうなったのか、単純に弱い草木なのか。

それはもう解らない。大きく変わりすぎて全ての感覚が今までと違う。


何やら、主とルルがこの世界の事を話している。


「白時間と赤時間があります。今は赤い月が昇っているので赤時間ですね。」


空か、今まで考えた事がなかったが魔人達はこの赤い月が昇っている間に寝る様だ。


主から優しい魔力が溢れてくる。

そうだ平和にゆっくり行こうや。


「ルルちゃん、良かったら私が背負ていくから休憩しておいてよ。」


どうやらゆっくりしない様だ。

またあの超高速移動が始まる。

そう思った私は、主の服に飛び込むのだった。


大きくなろうとする体を抑えるのがきつく成っている。

無意識に少し大きくなってしまったのではないか。


ルルを大事に抱え込んだ主。


私の近くにルルの小さい魔力を感じる。


主のお腹の中で魔力がわずかに動く。


ドッ!土を蹴り風を引き裂く音がすると、あの移動が始まった。


ドッ!ドッ!何回も地面を蹴り速度を上げていく主。

森では木が邪魔で加速できなかったのだろう。主のお腹の中から、楽しい感じの魔力を垂れ流している。


主も大分落ち着いて来たのか衝撃波に怖い魔力はあまり乗っていない。


駆ける主、でもちょっとスピードが速すぎやしないかい。


小さい力の存在が感じたと思った瞬間、後ろにすごいスピードで離れていく。


近くに居るルルが黙り込んでしまい、少し時間が経った。


止まった主

主の胸から顔を出すと、山が見え森は無く成っていた。

遠くにある山にはまた森があるのだろうか。

遠くて解らない。


その手前に草原。低い草がびっしり生い茂っている。

主の視点の妨げに成るのはたまにある大きな岩ぐらいだ。


その手前に石畳の街道があった。

さっきのあぜ道の何倍もの幅の道。

魔人どもが使っていた馬車とかいうのが3台は並んで通れそうだ。


それがずっと続いている。


服を出て主の肩ぐらいにずっと浮いている。

主の目は道の奥を見ていた。


その下ではルルが完全に伸びている。


それに気づいた主。困った顔をするとその場に座り込んでしまった。


「セリカ、火出せるんだね。 ちょっとこの辺焼いてみてよ。」


主からの命令、名一杯の力で火を吐いてみる。

目の前の草原が、3mぐらいだろうか、その火に包まれ焼けた。


「すごいねセリカ。 でももうちょっと出来るんじゃない?」


頭を撫でながら言ってくる主。主の合格点は絶対に取れないと思う。

私は主の手ぐらいしか無い蛇なのだぞ、十分ではないのか。


その後も何回も出している内に質が倍々に高まっていく。

火の色が青く変わっている。

主が言っているのはこの事だったのか、やっぱりすごいぞ我が主。


「ちょっと強くなったね、練習ちゃんとしないとダメだよ。」


ちょっとなのか、もう私の魔力は限界だ、この体じゃこれ以上は無理だ。

周囲20mぐらいは私の練習で焼野原に成っている。

誰だこんな事したのは。


また主が別の方を向いている。

さっき向いていたのとは逆の方だ。


少し森で隠れていた石畳の道を、大きな馬と馬車が歩いて来る。

オロバスと呼ばれるその馬は、よく魔人が使役している馬だ。

別でユニコーンやケンタウロスなんかが良く馬車を引いているのを見た事がある。


その中からかなりの力と魔力を感じる。

あの厄介な魔人共だ、確実に角有りだ。

角有りの中でもこんな力の大きいのは見た事が無い。


存在があれだけ書き換わった私でもそうなのだ、強者だと思った。

それが15個確認できる。

一人ひとりは倒せそうだが、全員で来られると倒せそうにない。


その力が霞むぐらいの主のお腹に隠れた。


「おい、ツノなしの別嬪が居るぞ。 馬車を止めろ。」


その大きな力が、止まってしまった。

そうだ主が異次元に美人なのを忘れていた。

男の魔人なら、ほっとかないだろう。


「あんなのが街道に落ちてるのかよ、持って帰って遊ぼうぜ!」


持って帰って遊ぶ。角ありに初めて会った時の奴らの巣を思い出す。

角無しの女が至る所に転がる巣。


主があんな事に成るとは思えないが、暴走だけはさせないでくれ。


そんな心配を元に主から嬉しい魔力が溢れてくる。

状況を分かっているのか主。


「すいません、ススカ街はどちらでしょうか。どっちに行ったら良いか解らなくて。」

街の方向を聞いている主、絶対状況をわかっていない。

あの高速移動で逃げる時だぞ。


ゲラゲラ笑いだす男の声。


「声まで綺麗だな、おい、楽しんだら、売ろうぜ。」


一つの力が強い奴がこっちに近づいて来る。

また暴走させるのか、どうなっても知らんぞ男!


その時、近づいて来る男に小さい魔力が当たった。

主と遊んでいる内に遠くへ行ってしまったルルが起きて男に攻撃したのだ。


絶対に勝てる相手じゃないぞ、ルル。

何してるんだ。


「メランさん!逃げてください。」


「プチデーモンが居るぞ、奴隷の癖に反抗しやがって。」


どうしてこうなるんだルル。


主の魔力暴走は起きていない。

だが、男共から小さな魔力を何個も感じる。

あれがルルにぶつかると消し飛ぶぞ。


主は男共の魔力が小さすぎて感じていない様だ。

マズイ、これでルルが死んでしまうと色々マズイ。

私も嫌だ。


隠れていた服から出て、大きく成りたがっていた力を解放する。

男共がより小さく感じる。


状況の確認もしたいが、まずはルルを守らなければ。

必死に角あり共とルルの射線に私の体を入れる。


間に合った、私の身体に若干の傷をつけて終わったその魔法。

ルルはまだ生きている。


私の体を盾にまだ魔人共と攻撃しているヌイグルミの様なルル。

その攻撃は全く魔人共に届いていない。

でも目は真剣だ、主を守ろうとしている。


自分は何なのか、ふと頼りきりの私にやるせなさを感じる。


"グオォォォォ"


勝手に出る咆哮、男達を威嚇してやる。

全部一斉に来たら死ぬかもしれない。でも良いんだ、主を守らなくては。


「小龍だ、どこから出て来た。赤いぞ、火を吹くかもしれん気をつけろ!」


ああ、その火をお前らに叩き込んでやろうでは無いか。


前の方で結構な魔力を飛ばしてくる魔人。これはまだ良い、火でなんとかなる。

奥の方で増幅する魔力、あれはヤバイ、4人で地面に魔法陣を作っているのが見える。あんな物当てられたら体が吹き飛んでしまう。

ルルと一緒に消えてしまう。


痛いがなんとか、あの奥で魔力を作っている魔人の完成を阻止させねば。

首をもたげてめいいっぱいの火を吹いてやる。

あの青い火だ。


口に魔力が集まる、できるだけ濃縮する。

その口に前衛の魔人が水魔法を叩きこんでくる。

弱まる私の口の中の魔力。

ヤバイヤバイ! あの魔法陣が完成するぞ。


「あなた達、やめなさい。」


冷たい声が主から放たれる。

主の周りは魔力で空間が湾曲している。


だが魔法陣は止まらない。

ルルが魔力切れか地面に落ちてしまう。

そこはダメだ、あいつらから見えている。なんとか救う方法は無いのか。


「やめなさい! いってるでしょぉぉぉ!」


主の魔力と力が爆発した。

見た事の無い黒いレーザーそれが魔人共を一瞬で飲み込んでいく。

瞬間、肉体も魔力もそのレーザーに剝がしとられ、魂だけになる魔人共。

あんな魔法陣の魔力なんか塵みたいなもんだ。


奥の方に見えていた山まで破壊したそれは地平線の彼方へ飛んで行った。

レーザーの跡に残る黒い何かが地面を占拠している。地平線までずっと。

その周りでは、草原が燃えている。


「た・・・助けてくれ、俺の意思じゃないんだ。」

生き残ったオロバスの声に頭が一気に動き出す。


主はどうなった。


「大丈夫か、主!」


ルルを抱いた私が主に叫んでいた。

主はそのまま倒れてしまった。



駆けよるが返事が無い。

息はあるがまたあの顔だ苦しんでいる。


近づいて来るオロバス。


「来るな、殺すよ。」


この状況、誰も近づけたくない。冷たい声を魔力と一緒に飛ばす。

固まるオロバス。

この忙しいときに邪魔するな。


腕の中のルルも魔力の使い過ぎで、体が消えかけている。


「ルルダメだ、あんたが逝っちゃ、"メラン"が悲しがるよ!」


少し戻って来る存在。でもダメだ根本的に解決しないと消えてしまう。


「………ルルちゃん?」


主が意識を取り戻したようだ。


「主、ルルが消えてしまう。 あの魂をルルにやってくれ。私じゃできないんだ!」


「セリカ?………わかった。」


魂だけ残ったあの魔人共の魂がルルに入って行く。

その魂はさっきのレーザーのせいか全て黒い。

次から次へと入って行く魂。一体どれだけあるんだ。


黒いレーザーが破壊した体を持って居た全ての魂がルルに入る。

その時光るルルの体。

狐のぬいぐるみの身体が真っ黒に成り、人の体の形をしていく。


収まった時、そこには黒髪の女性が腕の中に居た。

この気配はルルだ。


主はそのまま寝てしまっている。


「あなた誰?」


唯一響くルルの声に、涙が出てくる。


その頭に顔を押し付け"私達"の時間を噛みしめるのだった。

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