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底から  作者: ぼんさい
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魔界編 ススカ 41 ~ダン編 3~

体が暖かい、気持ちい気分だ。


炎を当てられて死んだんだ、体も暖かいよな。


スカアハの火魔法と、ドラゴン達のブレスによって死んだんだ。


ススカももう終わりだ。 彼女達も居ないしな。


最後ぐらいこんな気分で良いだろう。





「ダン、後で詳しく話聞かせなさい。」


声が聞こえると、あの巨木が作るトンネル。


東門に戻った。


東門のトンネルから、スカアハが高笑いする声だけが聞こえる。


そうだ、ドラゴンはどうした。


上を見ると、6匹のドラゴンがこちらに興味を失い街へ体を向けている。


真っ黒い目の無いドラゴン。


その奥では雪崩の様な黒い軍隊が壁を乗り越え殺到している。


何も状況は変わっていない、絶望的な状況。


「一郎、二郎、寝てるんじゃないの! そこの何とかしなさい!」


頭に入ってくる言葉、黒の軍団も止まる。


メランの声だ。


「何、一郎ってダサダサじゃん。」


スカアハにも聞こえているのか、馬鹿にして笑っている。



"ンモォォォオ"


西の方から咆哮が聞こえてくる。


動き出したメラン達の魔獣達。


ここからでも見えるその巨大な背中を見せて動いている。


「本気でやらないと、殺すよ。」


またメランの声だ、魔獣達から何やらレーザーが放たれている。


急に魔法を使い始めた魔獣達。



黒い兵達は、動きを止めて止まっている。


北の山まで続く黒い大地、近くには犬や人間の形の黒い兵がはっきりと見える。


急にそれが奥から消えていく、流れるように消える黒い兵。


斬撃だけが何百と見える。 言葉も悲鳴も発しないその黒い兵はただただ消えていく。


そのまま目の前まで消えてしまうと、ドラゴンも関係なく消え失せる。


一瞬真ん中から上下にズレたドラゴンは、そのまま黒い霧になって消えてしまった。


逆側もすごい勢いで消えていく黒い兵、やがて全て消えてしまう。



「ちょっと、弛んでるんじゃない?」


後ろからメランが話しかけてきた。


白い髪を靡かせ、太刀を抜いている彼女の顔には素顔が張り付いている。


表情の無い顔。


消えたその時のままの姿の彼女は鎧も着ていない。


「メラン、お前どっかに飛ばされたんじゃないのか?」


「帰ってきたわよ。 どういう状況なの? 教えて。」


「帰ってきたってお前、どこに飛ばされたんだよ。」



トンネルから今度は黒い魔法が飛んでくる。 トンネルを埋め尽くす薄い黒、グレーに近いそれは中に電気が走るような様子でこちらに向かってくる。


「私の軍隊、殺しちゃダメじゃん?」


冷たいスカサハの声。


思わず顔を腕で覆う。


メランが目の前に入った。


白い髪が、横に流れる。


そのまま黒い魔法の塊を、体で受けると、顔だけ向けて、赤い目を流し目でこちらに向けてくる。


「あれにやられたの?」


その顔が怖くて頷く事しか出来なかった。


「なんなのよぉ、あんた! 余裕かまして、気分悪いじゃん。」


スカサハの水晶が黒く染まる、そこから黒く輝きだす水晶。


その水晶から魔法は放たれなかった。


急に移動したメランが、スカサハの頭を手で掴んで上に向けさせる。

背の高い彼女は、上からスカサハをのぞき込むように顔を近づけている。


「飛ばしたはずじゃん? なんでこんなのが居るじゃん。」

少し焦ったようなスカサハの声。


「あなたが飛ばしてくれたの? ねぇ、他の子達はどこなの?」


「私が知るわけないじゃん。 どっかの人間界じゃん?」

メランの髪の毛が浮きだす、足元の土が凹んでいる。


「わ、私がしたわけじゃないじゃん。 人間の賢者共が飛ばしたんじゃん。」


「貴方解らないの? 困ったわね。」


メランの手がスカサハの頭に食い込んでいる。

聞こえないがミチミチ言う音が頭で再生される。


「だから、その手やめてほしいじゃん?」

声が震えてくるスカノハ。


「私の街襲ったんだ、命令までしてくるんだ。」


手だけを動かして、スカサハをトンネルの中の壁に投げつけるメラン。


スカサハはその体を打ち付けて、口から血し、メランを見ている、


「ねぇ、あなた誰なのよ。」


スカサハが落とした水晶を、ブーツで踏みつけて割りながらスカサハに近づくメラン。


「わ、私はスカサハじゃん。 私を殺したら、ルシファー様が来てしまうじゃん?」


「それは困るわね。 どうすればいいのかしら。」


広い門のトンネル、メランの歩みは止まらない。 コツコツという足音だけが響くトンネル。


「私からルシファー様にお願いするじゃん。 もうここは攻めないように言うじゃん。」


「攻めてたんだ、それで私の街の住民殺したんだ。」


「魔界で一番強いルシファー様じゃん? でも、私が言えばなんとかなるジャン?」


スカサハの目の前まで行ったメランは太刀の剣先をスカサハに向ける。


「そんな雑魚はどうでも良いのよ。 先に言うことあるんじゃない?」


剣先を近づけるメラン、スカサハの額から薄く血が垂れる。


足と手を動かして、後ろに行こうとするが、後ろは壁。 地面の土だけが削れる。


「わ、悪かったじゃん。 だからもうしないじゃん。」


剣先を向けたまま顔だけ近づけるメラン。


「謝ってもダメ。」


その刀を、そのままスカサハに突き刺してしまう。


返り血を浴びるメラン。 そんな事は気にもせず、そのまま刀を上に180度振り上げる。


逆側の壁に当たったスカサハは、衝撃で消えてしまった。




「ねぇ、セリカとルルちゃん何処に行ったか分からないの?」


血を払いもせずこちらに向いて歩いて来るメラン、 剣先からポタポタとスカサハの血が垂れる。


「スマン、分からないんだ。 急に消えてしまって。」


自分の姿に気付いたのか、自分に着いた血を魔法で落としたメラン。


刀は血を吸ってしまった。


「召喚魔法? をやった奴はどうなったのよ。」


「皆、その魔法をしたら死んじまったよ。」


「死体はあるの? どこ?」


衛兵が慌てて階段を昇っていく。


「メラン、お前何処から帰ってきたんだよ。」


「私? 人間界だけど、どうして?」


「人間界に飛ばされたのか、よく帰って来れたな。」


「滅ぼしてきたのよ、ベルゼブブが滅ぼしたら帰れるって言ってたから。」


コツコツこちらに近づいて来るメラン。


滅ぼした? 半日も経ってないぞ。


衛兵が走って蒼穹の遺体を持ってきた。


3体全部。


全員緑の髪の人間、似たような見た目。



「ありがとう。 ちょっと貸してね。」


床に転がったそれを、しゃがんで頭を手で掴んだメラン。


死体が、痙攣しだす。


「何も残ってないわね。」


次の死体も同じように頭を掴むと、痙攣する死体。


「これも残ってないわ。」


最後のも同じようにすると、立ち上がる。


「だめね。 何にも残ってない。」


「メラン、何してるんだよそれ。」


「魂に聞いてみようと思ったんだけどダメだったの。」


魂に聞く? そんな事が出来るのか。


「あの子達を待つしかないわね。 まぁ大丈夫でしょう。」


いつもの顔に戻ったメラン。


違う、終わってない西から鐘が鳴っていた。


「メラン、西にも何か来てるぞ。」


「あぁ、ベルゼブブでしょ。 もう終わってるんじゃない?」


西ではヘルキングボアが両手を挙げて吠えている。


「それより、話聞かせてよ。 召喚魔法した奴をダンは待ってたんでしょ?」


赤い目を真っすぐ向けて聞いて来る彼女。


「私から説明させていただきます。 メラン様。」


「ロレーヌだっけ、聞かせてよ。」


マスターが答えた。


ドラゴン退治の要望で、他の街に助けを求めた事。


それに答えてくれたのが、ルシファー領ムムジだった。


それを俺は待っていた説明をマスターがしてくれる。


「それ以外は解らないんだ。 そういう相談私にもしてよね。」


「以降、気を付けるように致します。 申し訳ありません。」


「まぁ、もう、ドラゴン退治なんてしなくて良いけどね。」


頭を下げるマスターに肩に手を乗せるメラン。


「今回はいいわよ。 次回から気を付けてね。」


「有難いお言葉頂きありがとうございます。」


「いいの、顔上げて、帰りましょう。 メルサのご飯まだ残ってるかな。」


ほかの固まる衛兵を横目に、ヒヒの馬車に乗り込むメラン。


「ヒヒ、メルサの店までお願い。」


「メランねぇ解ったんだぜ、俺も電撃撃ってさ……


そのまま街の方に街道を、まっすぐ進んでいくその馬車。


こうして、ルシファーとベルゼブブから、ススカの街は守られたのだった。

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