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底から  作者: ぼんさい
35/98

魔界編 ススカ 25

意識が戻って来る。


メルサの店のベッド。 その上で目が覚めた。

鎧は部屋の隅に置いてある。


昨日、街の日人々と一緒に食事を楽しんだ後、3人で自分たちの部屋に戻った。


3人ベッドに入り、一緒に食事を取った町の人々の話をする。

楽しそうなルルちゃんと、照れくさそうなセリカ。


私も、話した魔人を思い浮かべ、色々彼女達に話す。

ただ、それだけなに楽しかった。


昨日は最後には、楽しい1日だった。



横を見ると、セリカとルルちゃんはベッドには居ない。


先に食事に行っているんだろうか。


最初に泊まった時と比べて、宿の中が賑やかだ。


家を失った人達、彼等を宿の部屋に招き入れたメルサ。


今は満室のメルサの店。 下から賑やかな声が聞こえている。


私もそこに行こうと、壁に立て掛けてある太刀とブーツを履き取り、部屋を出た。


「メランさん、おはようございます。」

「白い髪のお姉ちゃんが起きたよ!」


通路に居た魔人達が話しかけてくる。


骨の人、コボルトの子供。


「おはよう、皆。」


昨日知合った人達、顔を見ただけで挨拶してくれる。

一日で変わった物だと、少し嬉しい気持ちで階段を降りる。


相変わらず家具は端に避けられ、床に座る人々。


ムーが、パンとスープを持って配膳して回る。

持って行くたびに、そこの魔人達と軽く話し笑顔になるムー。


別の色のヘルキャットも配膳を手伝っていた。

入っては出るを繰り返す黒や茶色のヘルキャット。


ムーはその子達とも、すれ違い際に何かを話す。



小さな輪が何個も出来ている風景。


見慣れた赤髪の背の高い女性の横に、黒髪の女性が背中を見せて座っている。

その脇には、セリカの大剣が壁に立て掛けてあるのが目立つ。

大股で脚を開きどっしり座るセリカと、足を折りたたんで凛と座るルルちゃん。

食堂の隅に座る彼女達。


横には使われていないテーブルと椅子が狭そうに端に寄せられていた。


そんな風景を見ている間でも、周りの人が挨拶してくれる。

軽く挨拶を返し、彼女達の輪に歩みを進める。


「おはようなのさ、主」


「おはようございます、メランさん。」


気付いた彼女達が挨拶をしてくれる。


「おはようございます。 メランお姉ちゃん。」


一人、女の子がその輪に居た。


軽く手を顔の横に上げて挨拶を返す。



黄色い髪、黄色い目をした白い肌のデーモンの女の子。

10才にも成っていないようなその子。


昨日最初にルルを見て、指さしていた子だ。


ラーナと呼ばれていたその子は、セリカにパンをちぎって渡していた。


「ラーナ、ありがとうねぇ。 でもあんたの方が食べなきゃなのさ。」


そう言いながら、貰ったパンを幸せそうに食べるセリカ。


「結局セリカが食べるんですか。」

笑いながら話すルルちゃん。


にこやかな食事をしている彼女達、そのわずかに空いているセリカとルルの間に、私は座った。




「おはよう、皆、楽しそうね。」


皆の前にスープの入った木の皿、そこに長細いパンが浸かっている。


「お返しなのさ、食べないと大きくならないのさ。」


「セリカお姉ちゃん、大きいもんね。」


貰ったかけらよりも大きなパンの欠片をちぎって返すセリカ。


それを受け取ったラーナは小さな口でモグモグ食べていた。


「ラーナちゃんだっけ、この子どうしたの? 両親は?」



ルルとセリカが教えてくれた。


彼女の両親は家具屋をやっていたが、その店が勇者に破壊された。


今は店があった場所を見に行っている。


ラーナも連れて行こうと両親がしたのだが、ルルから離れたがらない彼女。


そのまま両親に頼まれて此処にいるのだと。



その話している内容を聞いてか、パンを加えながら上目遣いで私を見ているラーナちゃん。

追い出されると思って居るのだろうか。


「ラーナちゃん、ゆっくり食べてね。」


「メランお姉ちゃん、ありがとう。」


それだけ言うとまたパンをモグモグし始める。



また二人が、この子の体験した話を話してくれる。


急に浮いたお店。


両親ごと、どこかに飛んで行ってしまう。


活発なラーナちゃんは、親の言う事を聞かないで、外に居た。


ラーナちゃんは一人に成ってしまう。


近くで家が降っては落ちて轟音がする。


荒れ果てた街を、両親が居るはずの家を探して、その方向飛んで行った方に、彷徨い歩く。


見慣れた両親が居た店は、逆さまを向いて、2階が潰れていた。


何かが横から当たったのか、左側半分も潰れている。


幼いながらも、その風景に両親は生きていないと思った。



後ろで聞こえる悲鳴。


遠くの空で、何故が人が浮いてはどこかに去っていく。


また聞こえる悲鳴。


ただただ怖かった。


悲しみと恐怖が蔓延する。


急に静かに成る空。


怖かったが、好奇心が勝ってしまう。


通りに出て見てしまった。


死体の山に、杖をかかげて、その死体を光に変えてしまう聖女。


その腕の中にはムーが居たのだと。


奥に、勇者が見える。


ただ、向こうに歩いているだけなのに怖かった。


急に、ムーが地面に叩きつけられる。


何やら叫んでいる聖女。 ムーが浮いたと思ったら。


そこにルルちゃんが現れる。


ムーを抱きかかえたルルちゃんは、勇者と聖女を簡単に倒してしまう。


それを最後まで見ていたラーナちゃん。


気付くと、両親がラーナちゃんを後ろから抱いていた。


そこからお店のあった場所に3人で戻るも、場所さえもわからない程に何もない町。


3人で歩いていると、メルサの店を見つけた。


そんな話だ。


「ルルお姉ちゃんは、強いの。」


食べ終わったのか、手を刀を持つようにしてルルの真似をするラーナちゃん。


「私より、メランさんとセリカの方がずっと強いんですけどね。」


少し照れながら言うルル。


「そうなの!?」


興味が沸いたラーナちゃんに質問攻めにされるのだった。



「メラン起きてたのかニャ、朝ごはんニャ。」


何も言っていないのにパンとスープを持ってきてくれるムー。


「ムーだ! ムーだ!」


と、嬉しそうに指さして叫ぶラーナちゃん。


「なんだか照れくさいのニャ。」


ムーは、私の配膳だけして仕事に戻っていった。



目の前に置かれたスープとパン。

パンが、スープの皿に橋渡しのように置かれている。


透き通ったスープに浮かぶ色とりどりの野菜。

あの鳥のような肉の入ったスープに、パンを浸しながら、彼女達と楽しい食事の時間をすごした。



周りの魔人達が、次々と宿を出ていく。


彼等も自分たちの場所を確認しにいくのか、手に地図を持って出ていく。


少し空いて来た店内、メルサが出てきて、こちらに向かってくる。


「よく眠れたかしら? 久しぶりの大忙しで顔出せなくてごめんねぇ。」


顔に両手をスリスリしながら話してくるメルサ。 心なしか今日は薄化粧だ。


「忙しいのに、わざわざ顔を出してくれてありがとうメルサ。 今日は街を廻ってみるわ。」


「そうなのぉ。 気を付けて行ってきてね。 ご飯作って待ってるわ。」


内股でまたカウンターに戻っていくメルサ。


その足取りが前より軽そうだ。



「主、私はコテツの店の方に行くのさ、そこで店やら家を直してくるねぇ」


「メランさん、私はこの周辺をやりますね。 ラーナちゃんをお母さんに届けないといけませんし。」


「じゃぁ、私は高炉方を見てくるわ。 その先の北東の街も手伝ってくる。」


壁に掛けてある大剣を手に取り、背に背負いながら言ってくるセリカ。


ラーナちゃんと手を繋いで立ち上がるルルちゃん。


二人の準備が終わると、店を出るのだった。


「行ってらっしゃいなのニャ!」


楽しそうなムーがその手を昨日のように振っていた。


店の前には馬車が並ぶ。 最初来た時とは全然違う馬車置き場。

その馬車の周辺の人にも挨拶をされる。


ただこの周辺の建物は本当に少ない。 何も無い広場に経っているメルサの店。

道だけがその場所を示している。


「主、行ってくるのさ。」


上に跳んで、西門の方へ向かうセリカを見送り、ラーナちゃんとルルちゃんで歩いて大通りまで向かう。


途中潰れた家などがポツポツあるが、中に魔人が入っている。


そのまま修理はできないので、後でルルが声を掛けて直すと言っていた。



途中で細い道に入って行くルルちゃんとラーナちゃんと別れて、私も上に跳ぶ。


結局南門と高炉を繋ぐ大通りには出なかった。


でも途中で見える壊れている建物。


誰も居ない建物は、魔法で直しながら跳んで行った。



途中木材が転がっている地域で、2人の魔人が浮いて来る。


冒険者ギルドのマスターと呼ばれていた骨の人と、受付で怠そうにしていたローズと呼ばれていたサキュバスだ。


ローズは体より大きなコウモリの様な羽をバタつかせて飛んでいるが、骨の彼女は魔力で浮いている。


少しびっくりした。


「昨日は、助けてくれてありがとう。 ダンと一緒に死ぬかと思ってた。」


ローズが飛びながら頭を下げてくる。


「もう体は大丈夫なの? 結構酷くやられてたじゃない。」


高炉の壁に埋まっていた彼女。 その白い肌を鉄に焼かれ腕まで赤く成っていた。


今はその火傷の跡は見えないが、あの後姿を見ていない。



「おかげ様で大丈夫だわ。 凄いもの見せてもらったしね。」


「ローズから聞きました、他の冒険者まで助けていただいて、何と感謝すればいいか。」


「偶然出来ただけよ、気にしないで。」


骨の彼女も頭を下げてくる。


責任者とセリカに名乗っていた彼女、全体の事も考えている様だ。


「あなた達の冒険者ギルドは大丈夫だったの?」


「中の物は壊れましたが、建物は少しの被害ですみました。」


振り返り、その街の中では小さな建物を見る彼女。


多くの冒険者たちが中から何か運び出している。


スレイと呼ばれた魔人もその中に確認できた。


「ダンは他の冒険者と一緒に東の復旧作業に当たっています。 よろしければ声かけてあげてください。」


「私も、そこ手伝おうと思って来てるのよ。」


「復旧作業を! またなんとお礼をすればいいか。」


「いいのよ。 行ってくるわ、あなた達も頑張ってね。」



頭を下げる骨の彼女とローズを背に、高炉へ向かう。


昨日歩きながら直したのもあってか、近づくにつれてまともに成ってくる街。


ズレた建物を引っ張る馬等が見える。


ヒヒはあれから会っていないが元気だろうか。


そんな事を思いながら、周りの潰れた建物を直しつつ、高炉へ飛んだ。

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