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底から  作者: ぼんさい
32/98

魔界編 ススカ 22 ~メラン編 1~

今回も時は動きません。

セリカとルルちゃんと未開の森で、コテツの作った武器の試し切りをした私達。


前来た、ルルちゃんの居た村、あぜ道、街道の上を飛び続けてススカの街が見えてきた。


街道を流れる人が全てススカから出ていく。


異様な状況を感じ取った私達は、門の横に居るヒヒの元へ降り立つ。


やはり門は住民を全て吐き出している。

悲鳴を上げながらススカから逃げていく住民。


ヒヒに会うと、メルサとムーを助けてくれ。と言われる。

何も聞かず飛んでいくルルちゃん。


理由を聞くと、勇者が攻めて来たとヒヒが言う。



「主、北に1 東に1 ルルが向かった南に1」

セリカが場所を知らせてくれる。


私もなんとなく解っている。 異物を感じる。


セリカに無言で頷いて、上に跳ぶ。




やはり異物が3個


北、東、南だ。


街の東からは何も感じない。

人が居ない空っぽだ。


北以外、魂だけが所々浮いている。

南は酷い、所々魂が残っている。


吸収されるわけでも無く、食い荒らされた肉体。

虐殺が目に浮かぶ。


私がこの世界に来て、初めての街、大切な街。

メルサのご飯を食べて、ヒヒと皆で笑って廻った街、ススカ。


特別な街が見る影も無い。


あの象徴的だった高炉の煙突が倒れてしまっている。

赤く今でも溶けている煙突の根本、その先は街を破壊して倒れている。


そのすぐ奥に異物を感じる。

この街に必要ないもの。


私の街に害を与える異物。



初めてかもしれない、頭痛以外で体が熱い。

セリカが良く言う言葉を思い出す。

主、街が吹っ飛んでしまうと。


あまり感情的に行動してはいけない。

私が全部吹き飛ばしてしまう。



いつも私が気を付けている街、私の街になんてことをしてくれるんだ。

そんな思いが頭を駆け巡る。


殺すのは簡単だ。 吹き飛ばすのも簡単だ。

あれは、壊すまで思い知らせてやる。



急に高炉の辺りで、何か収縮する。

途端に爆発する高炉。

赤い鉄が炉から噴き出している。


「セリカ、北。」


それだけセリカに言うと、セリカの返事も待たず、

高炉に空間を蹴りもせず飛んで行った。


下は逃げる魔人の群れ、皆一様に西門へ向かう。


ちらちら建物の中にも居る魔人。


そのまま隠れているつもりなのか、動かない。

確かに生命は感じるが、動いていない。


とりあえず高炉の異物が先だと、意識を強める。

自然と飛んでいく感覚。


高炉の向こう側に抜けた。


徐々に高度を下げながら周囲を確認する。


高炉の向こう側は、溶けた鉄で覆われていた。

一部だけぽかんと空いたその溶けた鉄。


そこに白いローブの女が居る。

彼女は、何か杖を掲げて高炉の方を見ている。


目を北にやる。


沢山積まれた鉄の瓦礫が、高炉の溶けた鉄を防いでいる。

その奥に倒れる肉体。

どれも、どこかの部位を切られている。


まだ魂を刈り取っていない。

ただの虐殺。

その魂が震えている。


その一番端、白い鎧を男が血を被って楽しそうにしている。

あれが勇者か。


虐殺された魔人達。

今まで何も思わなかった。


だが魂を置き去りにされている。

ただの破壊。


鼻の奥が力んで、目が飛び出しそうなほど怒っている私。

無意識に口で呼吸を始めている。


体が怒りに支配され始める。



生きているのを2人見つける。


高炉の残っている壁に埋もれた二人。


その背中を鉄で焼いていた。


その横にはレンガの炉が4個綺麗にこちらに中身を見せている。


故意に爆発させように、中身が綺麗に無くなっていた。


あの2人見た事がある。


冒険者ギルド買い取り窓口に居た男と、総合受付に居たサキュバス。


二人で残った高炉の鉄板に背中を焼かながら、埋もれている。


前から押しつぶされたように、肋骨が、鼻が折れているのがわかる。


立ち向かったのだと本能的に気付いた。


彼等にとってはかなり大きな存在の勇者。 それに立ち向かったのだと。


あまり好きでは無かった冒険者ギルドだが、私の大切な街を守る仲間なのだと

この時思った。


それを害する異物、勇者。

あれは許されない。



ふと思う、あの鉄くずの向こうに倒れて虐殺されたのは冒険者達では無いのかと。


私達を馬鹿にしていた冒険者。


だが、大きな勇者に立ち向かって死んだ。


胸が熱く熱く成ってくる。

初めての感情、頭で考えれば考えるほどムシャクシャしてくる。


全部を解放したくなる。

でもそれじゃ意味が無い。



生きているのが先だ、あの二人をとりあえず助けよう。

熱いか私は解らないが、あの鉄を冷まそう。


指から無意識に小さい黒雷が出ている。


それを周囲の空気に拡散する。



「この辺熱いんだけど、ちょっと冷やすね。」



周囲の空気を急激に下げる。

高炉の鉄板も、地面に広がっていた鉄も冷えて固まっていった。



「強いの来ましたよ、ミノル!」


女が叫んでいる。 勇者はミノルというのか。


何か女と私の間に、シールドが現れる。

薄い薄い白色。 なにしてるんだこの異物。


それが向かってくる。

だからなんだというのだ。


「メラン! それはダメだ逃げろ!」

ダンと言う男が叫んでいる、私を心配してくれているのか。


少し待ってほしい、今、魔力をダンに裂くとダンが破裂してしまいそうだ。

収まらない魔力。 頭の中がボーっとする。


「下等生物・・・悪は、黙らないとだめだよ。」


ミノルという勇者がダンに向かってしゃべっている。

下等生物? お前らだろ勇者。 


白いシールドが私に向かってくる。

なんだ良ければいいのか?

どういう遊びなんだ。


後ろで、高炉の残った鉄板がそのシールドの形にへこむ。


その形、あの二人にも付いてないか?

お前がやったのか……


「それなんて遊びなの?」


「避けた! これなら!」


質問にも答えない、勝手に大きなシールドを出している。


街の残骸が押し流されながら、こちらに向かってきている。


「あれ?壁を破るゲーム? どっちが〇なの?」

答えてくれないかなぁ。



「逃げろ! メラン!」

またダンが叫ぶ、こんなんで私がどうにかなる訳ないでしょ。



「下等生物は黙ってろよぉぉぉ!」

勇者がダンに向かって地面を蹴って跳んだ。


私の目の前で街の人を殺させるわけ無い。


太刀を抜く、この太刀も私に共感してか、爆発しそうに成っている。

すこし、あれを止めてくれないか?


腕を振るう。

太刀から放たれた超高速の斬撃は魔法で守られ勇者を切らない。


ただ、地面に埋める。


「ちょっと叫ばないでくれる? わからないじゃない。」


言葉なんてどうでも良いん、こいつらを壊す。


何かが体に当たる、忘れたあのシールドか。

通った跡が地面むき出しに成っている。


私の街が……


ダメだ抑えないと。


「ねぇ、今ので正解なの? 教えてよ。」

答えてほしい、すこし私を抑えてくれないだろうか。


「クソッ! これなら!」

また何枚も出してくる薄い色のシールド。

一斉に私に向かってきて砕けた。


何回やるの?これ。


「くそ! ボスか!」


無意識に腕を振るう、少し大人しくなるように、深めに埋めておいた。


「ちょっと黙ってなさい。」

注意してあげる、言わないとわからないもんね。


女が、勇者に何かを送り出した。


せっかく黙らせたのに、止めてくれないかな。

あなたから答え聞いてないんだけど?


女の背後に移動する。

遠くて、聞こえてないかもしれないもんね。


「ねぇ、正解だったの?」


「ヒィ!」


悲鳴を上げる女、何がそんなに怖いんだろう。

脚が震えている。


「ミホをいじめるなぁぁぁ!」


あの埋めたのが飛んで来た。

この女、ミホというのか。

こいつのせいでまた勇者が飛んで来たじゃないか。


遅い勇者、なにやら剣をこちらに振りかぶる。

太刀が鼓動して反応したが、魔力で抑えてやる。 いい子だ。


答えを聞いてない。 遅い勇者、普通に避ける。


「私ずっと質問してるのに、答えてくれないじゃない。」


何故か泣き顔の聖女と、その横に居る綺麗な勇者。

体は壊さずに出来た様だ。


「悪に答える言葉なんてない。」

こいつ何を言っているんだ。

とりあえず壊さなきゃ。


「悪って何なの? 私?」


「そうだ、魔界の物は全部悪だ。 駆逐しなきゃダメなんだ!」

メンドクサイタイプだ。


「全部なの? なんで駆逐するの?」


「正義は俺達にあるからだ!」

正義とか言い出した、もう消していいよね?

でも、まだ壊れてない。



「正義? 私も正義あると思うけど、私の正義はどうするの?」


「悪の正義なんて無いんだ! お前協力しろ、俺達を手伝え。」

話が通じないタイプだ、なんて私が貴方手伝わなきゃいけいないの?

馬鹿なのね。


「私の正義は良いんだ。 協力なんてするわけないじゃない。」


「そしたらお前は悪だ! 敵だ!」

ループする話、イライラする。



「正義と正義がぶつかったらどうなるのか知ってるのね。」


「わけのわからない事を言うな!」


勇者が剣を振りかぶってこちらに襲ってくる。

勝手に話を終わらせる勇者。


もう良いよね? 我慢したよね私。


太刀が答えてくれるように鼓動する。

今回はいいよ、もう切っちゃって。


体が動く、剣ごと体を上から真っ二つに切る。

何も感じない。


「終わりなの? あっけないわね。」



聖女が魔力で、勇者の魂の周りに肉体を再構築する。

リサイクルだ。


「俺は悪が消えない限り何度でも蘇るんだ!」


「めんどくさいわね。」


本当にメンドクサイ。 そのまま何回も切ってやる。


上から下から横から斜めに。

何回やっても、魂から肉体と魔力が魂にへばりつく。


送っている魔力も全然減らない。

あの杖何かを感じるな。


何度も戻って来る勇者に、聖女の顔が前に戻ってしまう。


壊すって決めたのに……


とりあえず別の方法を考えよう。


「そんなんじゃ、俺は倒せないんだよ!」


「神の力は偉大なのです!」


神の力? それがあの杖から出ているのか。

そんな小さい魔力で喜んでいるこいつらに、大きい魔力見せたら壊れるかな?


「私もそれ出来そうだわ。」


放置されている魂を地面に引き戻す。

この街全てだ。


見合った肉体をその魂に纏わせる。

消えた魔力は適当に私ので補填する。


微小な魔力しか入らない彼らの肉体。

結構疲れるなぁこれ。


冒険者ギルドの受付2人は、体だけ補填しておけばいい。



皆が起き上がる、あの二人もだ。


何か変な事は無さそうだ。 皆自分の体確かめちゃって、可愛い。


とりあえず訳が分からないと思うから声掛けとこうか


「皆、ゆっくりしててね。 後、爪と牙買い取ってほしいの。」


ダンに言ったつもりだったが、それどころでは無いようだ。

無視されたけど、まぁいいや。


「別の事も出来るけど?」


良いぞ震えている、もっと壊れて私の怒りを鎮めてほしい。


"下等生物"言葉がずっと残っている。

ルルちゃんの事を馬鹿にされているようで、すごく腹が立つ。


言わないように教えてあげないと。

私が爆発しちゃう。


「あと、下等生物とか言ってたわよね、私その言葉嫌いなの。」



「なんでだ! お前ら下等生物だろうが!」


脳天まで突き抜ける怒り。

私は制御できているのだろか。

目の前のクズ共は生きている。


これにこんなに我慢しなきゃダメなのか。

これに私の街を荒らされたのか。


「あなた達、私が怒ってるの解らないのね。 私の街に何してくれてんのよ!」


「知るか! どうせ斬撃しか飛ばせないんだろ!」


さっき何を見てたんだ、どうでも良い、これとは会話に成らない。

さっさと壊してしまえ。


勇者の持っている剣が光っている。

それを振りかぶって来る。


そんなのは解っているんだ。 後ろでコソコソ溜めていたのが解らないとでも?


太刀が反応して鼓動する。

いいわ今度は私がやるわ。

素直に収まる太刀。 コテツはいい仕事をする。 武器に魂を吹き込めるコテツは貴重だ。



彼も元気だろうか。


何かあったらと思うと、魔力と感情が一瞬で跳ね上がる。

無尽蔵に湧き上がる魔力。


一発大きいの当てたら消し飛ぶんじゃない?


「死ねぇェェ!」


やっと剣が目の前に来る。

そのちっぽけな剣なんてどうでも良い。


指で物理的に壊してやる。 纏っている魔力なんか見ただけで逃げていく。

しょうもない魔力。


「なんだと! 剣が!」


何を驚いているのか剣が砕けたことに驚いている。


とりあえず一回殺してみるか。



勇者を魔力で浮かす。 手足をバタバタさせている。

それ何か意味あるの?


浮かすのは、街を壊さないようにだ。


後ろに山が見えるけど、街の外だから大丈夫。



湧きあがっていた魔力を、あの街道の時のように解放する。


音も吸収するその黒いレーザー。


山をえぐってどこかに行ってしまう。



魂にまたこびりついて来る肉体。


「はぁ・・・」


メンドクサイけど、何回も殺すか。

そろそろ何に怒ってるのかわからなく成ってきた。

どうにか私を抑えてほしい。


さっきのレーザーを空間でとどめて勇者をやるために、少し移動する。

街を壊さない為だ。


「逃げるのか! ハハハハハ! 所詮魔物だ!」


何か言っている、彼は私を怒らせるのが得意な用だ。



空中にまだまだあふれ出る魔力を停滞させる。

さっきより強く、膨大に。


ルルちゃんがやっていた練習を思い出して玉を作っていく。

中で龍のように暴れるレーザー。


「何回死ねるか、試してみよっか。」


その中に勇者を入れる。


魂さえも押す暴走した魔力は、中で何回も何回も魂から、肉体を剥がし、魔力を剥がす。

別に見ていても何も面白くない。


「ミノル! それ魔力も吸ってるわ! 私の魔力が帰って来ない!」


さっきから女の杖がひたすらに魂に神の力?を送り続けている。

それだけは通すように調整している。


だって、すぐ終わっちゃうじゃない。


吸っている? 通してあげてるのに。

何を勘違いしているんだ。


どんどん魂に肉体が纏わりつくスピードが遅く成ってくる。

終わっちゃうじゃない。

ちゃんとやってよ。


「遅くなってきてるわよ、もうちょっと頑張ってよ。」


「もう、魔力が!」


なんだ終わりか。


貴方たち、殺しきっちゃダメよ。

最後は私なんだから。



一瞬で私の身体に戻って来る魔力。


道の真ん中に人形のように座っている勇者が居る。


完全に壊れたそれ、私の街を荒らした罰だ。

でもまだ腹の虫がおさまらない。



「ミノル! あなたミノルに何したのよ!」

女は、何が起こったか解ってないのか、貴方が送り続けるから、こんな事に成っているのに。


教えてあげないと。


「何って、最後の1回まで死んでもらっただけだけど?」


「最後の一回って・・・1000回は行けるはずよ。」


「999回死んだんじゃない? 知らないけど。」


あの壊れた人形の勇者を、私の手で壊さないと気が済まない。


ついでにあの女も黙らせる。


わざとゆっくり近づく。

鉄の地面がこの靴の音を響かせてくれる。


コツ、コツ……



音が鳴る度に、女が震えている。 でも女を見ない。

終わっちゃうから。


人形の頭を持って、あの女のぎりぎりに投げる。

家に埋まる勇者、お前等がダンにしたのと一緒だ。


埋もれた勇者にまたゆっくり近づいていく。


女が何か叫んでいるが、貴方は後だ。


もう一回頭を掴んで投げる。

少し壊れていたのか血が舞っている。

また家に埋もれる。

受付のサキュバスの分だ。


壊れないように慎重に慎重にやっている。



女がうるさい。


「次は貴方ね。」


顔を見ないで歩きながら言うと黙った。


埋もれた勇者は、鎧が砕け、手と足が訳の分からない方に向いている。

意識があるのか、唸っている。


まだ足りない。 お前がしたのはそんなレベルじゃない。


埋もれた勇者の顔を乱暴につかみ、女の方に投げる。

さっきと逆側。

また埋もれる勇者。


詳しくは知らないけど30人ぐらい殺してたよね。

まだ終わりじゃないよ?



顔を掴んだせいか、顔がグチャグチャに成っている。

虫の息、終わってしまう。

まだ人数分やってないのに。


「壊れちゃうでしょ? 再生魔法かけなさいよ。」


女は震えているだけで何もしてこない。


次投げたら死んじゃいそう。

もう終わりで良いか。


一応動いている心臓を確認して、もう一度女に声を掛ける。


「あら、もう良いのね?」


何もする気配が無い。


30人分一気にぶつけてしまうか。

手にデコピンを作って、そのグチャグチャの顔に向ける。


魔力を込める、皆が怖いという魔力、私の底にある黒い魔力。


心臓の鼓動だけが、彼の恐怖を教えてくれる。

でも本当は足りないんだよ?



放つ。



後ろの家ごと飛んで行ってしまった。

魔力が彼に達した時点でショックで死んでいたようだが、どうでも良い。


多少魔力がぶれたのか、勇者の血が付いている。


女に洗わせれば壊れるかな?


「汚れちゃった、生活魔法使えるでしょ?」


泣き顔でグシャグシャにしている顔。

持っている杖は枯れていた。


私の指を見て、すぐにうつむいてしまう。


「も・・・もう魔力が無くて。」


魔力が無い?



この杖が無ければ何もできないのか、この女。


「あなたも使えないの? 私の怒りどうしてくれるのかしら。」

本当にどうしてくれるんだ。

この気持ちあと30回は壊して晴らすつもりだったのに、あまりに脆くて消し去ってしまった。



「すいません、すいません、もうしませんから。」

女が自分の心が発狂するのを防ぐべく、謝りだす。



「そんなんで晴れるわけ無いでしょ。」

恐怖で突き動かされただけの謝罪なんて聞きたくもない。

逆にイライラしてくる。


自分の指を自分の魔力で綺麗にする。

女に見せてあげる。


「こんな事もできないのね、聖女って大したもんじゃないのね。」


「はい、そうです、ごめんなさい。」

また同じだ、ただ自分を守るだけの謝罪。



「謝って許されると思ってんの!」


「ヒィィ、ごめんなさい、ごめんなさい。」

何回やっても同じだ、これも話が通じなかったなそういえば。


私がやるから魔力は載せない。

黙らせる。


足を女の上にあげる。

そのまま振り下ろす。


ドォォン!


力だけの踏み下ろし。

私の感情を乗せたそれは、摩擦熱で女の肉体を魂からそぎ取った。


鎧のブーツには血ひとつ付いていない。


勇者と女の魂を引き寄せる。


勇者の魂は黒く変色している。 私の魔法を受けたからだ。

女の魂はまだ白い。 つぶしただけだからね。


でもどっちも小っちゃい、こんなの取り込む気にも成れない。


せめて、私の気持ちを抑えるのに使おう。


またデコピンで飛ばす。


指先にに魔力を集中させる。

この魂が完全消滅するように。


勇者の魂の前に持ってくる。

魂が震えている。 私を怒らせた罰だ。


ペシ! 消える魂。


女の魂の前に持ってくる。

これも震えている。 この状況でわかるのだろうか。


ペチ! 消える魂。


こんな小さいのどうにかした所で、全然収まらない。



良さそうな相手がいるじゃないか。


こっちを見て暇そうに口を開けている緑の髪の図体が良い男。


「ねぇ、ダンだっけ、収まらないから、一回私と手合わせしない?」


「む、むりだって・・・」

その男と、横に居たサキュバスは何故か、口を震わせていた。

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