魔界編 ススカ 20 ~ルル編 5~
お店を出て、ヒヒの待つ馬車に向かう。
店を出るときセリカの大剣が、お店の入口を溶かしながら出て行ったが大丈夫だろうか。
コテツは見ていたが何も言わなかった。
待っている馬車に乗り込む。
「なんだぜ、すごい怖い雰囲気を感じるんだぜ。」
ヒヒにもこの子の凄さが解るようだ。
ヒヒの魔力が前より少し大きい気がする。
気のせいだろうか、ヒヒは黄色だ、薄い黄色。
メランさんが試し切りに3日付き合ってほしいとヒヒに言う。
ヒヒも用事があるようで、一度自分の厩舎に戻るようだ。
私の職場はどうなっているんだろう。
少し思う。
でも前の様な気持ちには成らない。
私は変わったんだ。
「そうなの、残念ね、皆で歩いていきましょうか!」
メランさんとセリカと歩いていく。
初めてだ、なんだか楽しそうだ。
少しワクワクしながら、私の刀を使って魔力の訓練をずっとしていた。
ヒヒに別れを告げて、3人で歩く。
あんなに怖かった街道、今は何も感じない。
ただの道だ。
周囲に魔人も少ない。
ぽつりぽつりと色が見えるが、白の時だと、どんな見え方をするんだろう。
出来るが増えて、興味が出てくる。
メランさんが、道を反れる。
一体どこに行くんだろう。
「ねぇ、ルルちゃん、セリカ、あの飛ぶの出来る?」
私が居た村から街道までメランさんがしたあれ、途中で気絶してしまった猛スピードで跳ぶ奴。
出来るのだろうか、頑張ってやるけど独りぼっちは嫌だ。
頷いてくれたメランさん。
メランさんは優しい。
横で、セリカがこれでもかと赤を凝縮させている。
私もやらなきゃ、二人にすぐ置いて行かれちゃう。
「じゃぁ、行くわよ!」
ドン!
メランさんの過ぎた後に黒い線が伸びる。
速い、本人は見えない。
私もやらなきゃ、彼女達に世話になってばかりでは嫌だ。
足に、指先に足裏に、使う所だけ魔力を集中させる。
ドン!
跳んだ、少し前にセリカが居る位だ。
メランさんの魔力跡は消えかかっている。
空気が邪魔なぐらい速い。
こんな体験は初めてだ。
それと、彼女達と似たような事をしている。
セリカが加速し始めた、地面を蹴ってドンドン加速する。
置いて行かれないように何度も何度も足を地面に叩きつける。
メランさんの黒い魔力が地面に見えた。
目の前ですごい土煙を上げなながら減速している。
少し前でセリカも同じように減速する。
私は両足で必死で踏ん張った。
進路を変えるメランさん。
そこにそのまま角度を90度に変えるセリカ。
私はそんな力はない、小刻みに大回りになってしまう。
なんとかあのあぜ道に飛び込んだ。
必死で後を追う、どんどん近づいて来る赤い魔力。セリカの魔力だ。
その魔力が上空へと浮き出している。
前のセリカを見ると、空間を蹴っていた。
滅茶苦茶だ。 私も空間を蹴ってみる。
足裏に全部の魔力を集中させる。
蹴れた、私も出来た。
そのまま、セリカに並びかける。
「セリカ、これ楽しいね!」
「そうだねぇ、初めての感覚なのさ。」
楽しくなってきた、セリカと二人で加速する。
流れる森、もはや葉の緑と幹の茶色が塗られたような風景だ。
どんどんメランさんの黒が見えてくる。
私の居た村を一瞬で通り過ぎると、メランさんが太刀を構えて、巨木を叩き切る。
黒い魔力が、巨木にへばりついたまま、その割れた隙間を抜けていくメランさん。
私にも出来るだろうか、この子ならやってくれそうだ。
足裏の魔力をそのままに、魔力を練りだだす私のお腹。
その魔力を刀に流し込む。
膨らむ紫、そして濃く、濃く成っていく。
刀の赤と青も魔力を感じて、超高速で流れ出す。
目の前の巨木。 メランさんと同じように切る。
視界が割れた。
そこにそのまま突っ込む。
出来た!
そのまま真っすぐ続ける。
一度木を体で粉砕して進んでいたセリカ。
その後は追いつくのに必死だ、セリカは速い、力で全てを薙ぎ払っている。
目の前なんて関係ないと言わんばかりに、その大剣で巨木を叩き潰す。
彼女は本当に滅茶苦茶だ。
私は、なんとかその後を付いて行った。
突然現れる何も無い大地。
ぽっかり空いたその真ん中に、メランさんが立っている。
そこに空間を蹴って止まる。
セリカは若干力任せに止まっていた。
実は私も何回か巨木に肩を当てていたのだが、跳ね返されずに砕いていた。
巨木ってあんなに脆かったんだ。
「ルルが強くなったんだと思うんだねぇ、私もあんな脆いと思わなかったけどさ。」
そうか、私が成長したんだ。
メランさんと、セリカに感謝しなきゃ。
大きな出来るがもう一個増えた。
「じゃぁ、始めましょうか! セリカ、龍に成っちゃダメよ。 剣使えないからね。」
「主、わかってるさ私もこいつ一回振り回してみたかったのさ。」
メランさんの太刀は、相変わらず落ち着いているが本当に真っ黒だ全てを吸い込みそうな黒
その大剣の赤と緑をさらけ出すセリカ。 暴れる赤い魔力が緑の魔力が外に飛び出しそうに暴れている。
私もこの子と戦ってみたい! "よろしくね"と刀に言葉をかける。
赤と青の線が、答えてくれている気がする。
3人で何も無い大地の境目まで別れる。
後ろは森だが、何も魔力が感じられない。
前方2方に真っ黒と赤がこの距離で衝突している。
食いあって居るその魔力。 境目がずっと引いたり押したりを繰り返している。
天高く迄伸びるその境界は、赤が急に収縮して、模擬戦闘が始まった。
黒も一瞬で消える、濃い赤と濃い黒がぶつかり合う。
私も駆ける。 上空でなにやら鍔競り合いをしている二人、メランさんの脇ががら空きだ。
狙うならそこ、今!
セリカが剣ごと吹き飛んで行った、だがもう止まれない、やるのみだ!
狙うは、脇、セリカを飛ばした勢いで回転するメランさん。
背中が見えている貰った。
横薙ぎでその空いている胴を狙ったつもりだった。
凄い勢いでそこに割って入るメランさんの太刀。
私の子とメランさんの太刀がぶつかる。
このままだと力押しされるのは解っている。
少しその太刀から魔力を頂戴する。
溢れんばかりの魔力。 だが少しなら私の魔力として使える。
使えるように成っている。
弾かれた勢いで、逆側に横薙ぎをする。
また現れる太刀。
まだだ、まだこの一振りで溜める。
吸い取る優しい黒い魔力。 確実にメランさんの魔力だ。
赤い魔力が後ろから迫ってきている、セリカだ。
いいタイミングだ、そのまま私は下がる。
上を飛んでいく、真っ赤な魔力を纏った大剣。
「主、勝負!」
メランさんの周辺の魔力が一気に太刀に集まる。
居合の構えで、バカみたいな魔力が太刀を染めていく。
襲い掛かるセリカの魔力、荒々しいそれも真っ赤だ。
「うぉぉぉぉ!」
メランさんが動いた、黒い残像が走る。
セリカの大剣の赤い魔力が一瞬で吹き飛ぶ。
残った大剣も魔力を纏うが間に合わない。
その黒い暴力のような太刀は、セリカごと、大剣を撃ち返した。
「主、そんなぁぁぁ!」
セリカが飛んでいく。
私も仕掛ける、足裏に最大限溜めた魔力を使って、メランさんに迫る。
あの太刀と、まともにやりあっても無理だ。
ならば!
補給代わりの横薙ぎを払うと、上から太刀で叩かれる。
なんとか軌道を逸らした時に魔力を頂戴する。
上からの振りかぶりに成ったメランさんの脇に突っ込む。
足にさっき吸った魔力を乗せて、思いっきり蹴る。
瞬間的に爆発したように膨らむメランさんの黒い魔力。
脇を蹴ったつもりなのに、そのまま吹き飛ばされた。
「逆に飛ばされるとか、あんまりですぅぅ!」
体が何をしても戻らない、勢いを抑えきれない。
何個か巨木をぶち破り、やっと止まった。
メランさんは強すぎる。 何をどうしても仕留めきれる気がしない。
腰に刀を刺して、ありがとうと撫でてあげる。
申し訳ないような感情が返ってくる。
「仕方ないよ、メランさんだし。」
そのまま両手を挙げて降参のポーズでメランさんまで向かうのだった。
真ん中で待っていたメランさん、周辺に濃い黒い魔力がまだ漂っている。
セリカも同時に跳んでくる。
「主、強すぎるのさ。なんで私が飛ばされるのさ。」
「メランさん、滅茶苦茶ですよもう。」
セリカも同意見のようだ。 あれは無理だ。
「それよりなんで私と貴方たち2人の戦いに成ってんのよ。」
「そりゃ、メランさんですし?」
「主だからねぇ。」
セリカも同じ気持ちのようだった。
メランさんは見ているというので、セリカと対峙する。
場を埋め尽くすような暴力的な赤。
その大剣から既にあふれ出ている。
私を食おうと、まだ剣を振っていないのに迫って来る。
セリカが横に大剣を構えて突っ込んでくる。
速い!
上に逃げる一撃で終わる所だった。
セリカも力押しは出来ない。
ならさっきの戦法で!
空間を蹴ってセリカに突進する、横薙ぎであの剣の魔力をごっそり吸い取ってやる。
セリカが横に剣を構える。 狙い通りだ。
強烈な赤い魔力が動き出す、それに合わせてこの子を当てる。
カン!
来た、セリカの魔力だ、そのまま勢いのまま逆に回ってセリカの防御を突破してやる!
大剣で身を隠すように構えるセリカ。
貰った魔力で押し切るんだ!
私の刀が、セリカの大剣を少し押す。
「セリカには負けませんよぉぉ!」
「言うようになったねぇ、ルル!」
そのまま両方一度離れる。
相手に考える隙を与えていては勝てない。 相手はセリカなのだ。
足裏に全魔力を集中させて飛ぶ。
空気を一瞬で置き去りにしたその跳躍のまま横薙ぎを繰り出す。
また身を隠すように構えるセリカ。
いいぞ攻めれてる!
また魔力と反動を生かし、逆回転しようとする。
セリカは受けるんじゃなくて、後ろに避けた。
これはヤバイ!
避けた勢いで上に跳ね上がった大剣が赤く赤く魔力を纏う。
全力の一発が上から来る。
もう一回転した勢いで一か八かだ、その軌道を少しずらしてやれば!
当たった瞬間少し軌道のズレた大剣。
そのまま地面にクレーターを作る。
流石セリカだ、まともに受けて居たら終わっていた。
「はやいねぇ、ルル。」
「力押しには、負けませんよぉぉ。」
でも軌道を変えた時吸った魔力がまだ私に従っている。
体にその魔力を纏う、地面を突きさした剣を再び身を隠すように構えるセリカ。
その手はもう効かない! 貰った!
全力でセリカの剣を押す。
セリカの足元が凹む。
まだ足りないのか、セリカははやり強い。
まだ、まだ押せる!
「ルルちゃん、セリカ ちょっと魔物狩って来るね!」
「いってらっさい!」
「主、気を付けていくのさ!」
メランさんが森へ跳んで行った。
セリカが思わぬ行動をする。
私の刀の軌道をそのままの体制でずらしたのだ。
さっきまで力任せだったセリカに技を完全に盗まれた。
だが終われない、その回転速度は今までにない速度だ、これをぶつければ、
私の回転している方向から横薙ぎに来るセリカの剣、容量は一緒だ。
勢いのまま上に逸らす。
跳ね上がる大剣。
もっと速くその速度を落とさず。
それから何回も剣と魔力のやり取りが続く。
吸っても吸っても無く成らない無尽蔵なセリカの魔力。
優位なはずの私の魔力が地力で負けた。
この体に成ってこんなに動いたのは始めてだ。
私の魔力切れで、完全に負けだ悔しい。
セリカは息一つ乱していない。
セリカを超えるのはやはり難しそうだ。
でもまともにこれだけ戦えた。 それもセリカの朝の指導があってこそだ。
「セリカ! ありがとうございました!」
「ルル、ありがとうねぇ。 勉強になったのさ。」
心からのお礼を言う。
"仲間"
戦っていても楽しい仲間だ。
途中から戦法を変えたセリカもすごかった。
勢いを叩きつけるんじゃなくて、利用するようになったセリカには勝てない。
何か、別の方法を考えないと。
それを考えるとワクワクしてくる。
そういえばメランさんが帰って来ない、魔物を狩りに行くって言ってたような。
「ヒヒに全部お金あげちゃったからねぇ。 素材取りに行ったんじゃないかい?」
「私達も、協力しないと。」
「そうだねぇ、私は主と逆側いくのさ。」
「じゃぁ私は違う方行きますね!」
まだ魔力が完全に尽きた訳では無い、この状態で魔物と戦って何かを得たい。
そのまま未開の森へ突っ込んで行った。
魔力を膨大に放つ二人には、見えないぐらい小さい魔力で迫るのがいいのでは無いか。
そう思って、可能な限り魔力を小さく隠して森を行く。
巨木を倒せるような存在と思われてはいけない。
巨木を最小限蹴って移動する。
所々に居る魔獣。 あんなに怖かった魔獣の魔力があんなに小さい。
比較的大きな魔力を持つクマを、背後から気配を察知されないように切る。
"シュッ"
絶命するクマ。
次は、イノシシ
上空に居る鳥
大きな蜂
色々試す、皆気付かずに一振りで消えてしまう。
この時初めて魂を食らった。
味なんてない、ただ体に染みていく感触。
また初めてが増えた嬉しかった。
ちょっと油断した木と木を跳んでいる空中で、下から大きな蛇が口を開けて私を食おうとしてくる。
空間を蹴って、その口に飛び込む!
刀を前に構えて、斬撃に魔力を乗せる。
上と下に蛇を捌きながらながら進んでいく私。
骨も関係ない。
刀がその血を嬉しそうに吸っている。
地面近くまで切り切る。
ぎりぎりで剣を下に向かって掃って、もう一度上空に浮かび上がる。
刀の斬撃の形にへこむ地面。
両側で重力に負けて、倒れていく蛇の体。
綺麗に2個に捌いてしまった。
その上側の口には立派な牙が見えている。
あれは売れるんじゃないかと、手で持って引っこ抜く。
簡単に抜けた。
二つは持てなさそうだ。
そのまま森を上に抜けて、何も無い大地に帰った。
蛇、セリカ怒らないかな。 ちょっと心配だった。
未開の森の上を飛んでいるセリカが見えた。
「セリカ~~~!」
今までこんな事したことなかったのに叫んでしまう。
こんな短い間だったのに、セリカに会うのを楽しみにしている。
何やら大きい鳥を担いでいる5mぐらいの鳥、あれどうするんだろう?
その鳥を地面に落として、二人で話す。
セリカは蛇の話をしても怒らなかった。
ちょっぴり心配していたが、そんな事は元々気にしない性格だと知っている。
メランさんが帰って来る。
「メランさんおかえりなさい!」
「ただいまルルちゃん。 セリカはそれどうするの?」
メランさんもその鳥をどうするのか気になるようだ。
「主、ここで焼いてたべるのさ。」
食べる! ここでも初めてが増えた。
巨木を切り刻んで持ってくるセリカ。
「ルル、火つけてくれるかい? 私のは強すぎてさ。」
「はいはい、セリカ、火担当のルルですよ。」
こんな言葉が出てしまう、少し不安に成ったがセリカは変わらない。
むしろ笑顔が増している。
この一日で私の見る世界が変わって、仲間との間柄も深まった。
思い返せばいい思い出ばかりの日だ。
セリカが爪で鳥を捌いて、火に掘り込んでいる。
緑の魔力はセリカの体の中で静まっている。
そんな調整も出来るセリカ。 やはり強敵だ。
「豪快ね、セリカ。」
「細かいのは苦手なのさ。」
「そうね、似合わないわ。」
メランさんとセリカが二人で笑っている。
私も自然に入る。
「メランさん、あんまり言うと調子に乗っちゃいますよ!」
「なんだぁ? ルルもう一回やるかね!」
「良いですよ。 負けませんからね。」
セリカに何か対抗心を燃やしてしまう。
楽しい時間だ、ムーちゃんは元気だろうか。
メランさん、先に食べてるんですか、その鳥、私も食べたいです!




