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底から  作者: ぼんさい
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魔界編 序章 2

あの村が見えた方まで、森を飛んで進んでいく。

蛇は動かないが、無事の様だ。


途中、下に生えている草より大きな2足歩行のイノシシや、それより大きい蛇、更に大きなクマなどが

土煙を上げ走っていた。小さい生物も一杯だ。


下は危ないと思い、少し上を飛んでいく。

賑やかな森に、先ほどの何もない寂しさが飛んでいく。


巨木の葉の間から、飛んでいる大きな鳥も見える。

皆鳴きながら一斉に同じ方向を目指している。

バレないように葉の下を進む。


何かあるんだろうか、そう思いながらあの村を目指した。



突然現れた大きな存在に恐れを感じる住民達。

それはあの巨木をなぎ倒し、森の住民を更に恐れらせ、威嚇される。

さらには超高速で衝撃を伴い、木々を揺らしながら近づいて来る。


必死に逃げるオークキングや、デスサーペント。

森の支配者のサタンベアーまで逃げている。

空では、怯えたレビヤコカトリスの群れが飛んでいる。


迫る"あれ"から逃げなくては、そう思いながら恐怖の発生源からひたすら逃げる魔物の集団の上を、その原因である彼女が飛んで行った。


柵が見える。あの村だ!

蛇はあのまま動かなかったが、ちゃんとお腹の辺りに居る。


よくできたと、ちょと撫でて上げるともぞもぞ動いて返してくれた。

可愛い奴め。


村の柵がこちらを向いてる。

木でできた柵は先を削って尖らせ、私の方を向いていた。


その柵の向こう側に、皆黒色の動物に三角形の尻尾と悪魔の羽を持った可愛い"何か"がパタパタと飛んでいる。

動物のヌイグルミの様なそれ。犬や、猫、クマなど色々な形をしていた。それぞれ30cmほどだろうか。可愛い。

その50匹ぐらい居るヌイグルミがパタパタ飛んでいる。


そのさらに後ろに目が一つしかない5mの大男達30人ぐらいだろうか槍を持って構えていた。


小さいヌイグルミ達も手をこちらに向けてきている。

後ろには彼らサイズの家が沢山並んでいた。



"未開の森"の異常を感じて抜けてくる魔物達を、何とか防ごうと防衛線を張るサイクロプス達。

選んだ場所はプチデーモン達の村だった。


周りを申し訳ない程度の柵が覆っていたのを持ってきた木で柵を作り直し魔物に備えている。

その奴隷のプチデーモンは魔法要員として狩り出している。


そんな防衛線の前に飛び出した彼女にサイクロプス達が話始める。


「おい、魔人か? 森から出てきたぞ。」


「あの森に入って生きて出て来れないだろ。 ベルセブブ様でも近づかない森だぜ。」


「じゃぁあれは何だ。 何が出てきたんだ。」


「角無いぞ、下級じゃねぇか。」


「人間かもしれねぇぞ。どっちにしても弱えぇが」


此方を見ながら言ってくる、一つ目の大男達。

下級と言った男は大きな口を開けて笑っている。


"喋っている"嬉しくなった。


「すいません。 森から出た事が無くて、この辺について教えてもらえないでしょうか?」


しばらく黙り込むサイクロプス達。


この"未開の地"から出て来た下級魔人か人間か。

自分たちよりかなりも弱いはずだ。

それが教えてくれと言ってきている。


「おい、あいつ美人じゃねぇか?」


「よく見ると上玉だ。 仕事前に楽しもうぜ。」


サイクロプス達が盛り上がっている。

ベルセブブ?悪魔だろうか。

一匹の狐のヌイグルミが、こっちをしっかり見てサイクロプス達に話しかける。


「あれ、強いですよ。 魔力が滲み出てます。」


「ルル、喋ったら………」


最初に喋った狐のヌイグルミを、サイクロプスが大きな手で掴む。


「あれが強い? お前で確かめてやるよ!」


「まぁプチデーモンでも、下級ぐらいには勝てるか。」


また大きく笑うサイクロプス達。

その狐のヌイグルミをこっちに投げて、私の目の前で地面に打ち付けられる狐。

目の前に転がるその可愛い狐のヌイグルミ、それだけで気を失ってしまったようだ。


「確かめもできないのかよ。 役に立たねぇなぁ。 おいアイツ捕まえてこい。」


「ヘイ。」


一人のサイクロプスが柵を乗り越え、こちらに近づいて来る。

その後ろでは、なんとサイクロプス達がプチデーモンを殴り始めた。


「おい、誰か喋ったよな。 奴隷はしゃべってよかったんだっけかぁ?」


黙るヌイグルミ達に殴りかかるサイクロプス。


"ブチ"


それだけでヌイグルミは弾けてしまった。

何もしゃべらないヌイグルミ達。


「連帯責任だお前ら!」


そう言って周りのヌイグルミ達を手あたり次第、潰し始めるサイクロプス。

血しぶきが潰れる度に飛び散る。


その風景に唖然としていると、ノシノシと一人サイクロプスがこちらに近づいて来た。

柵を跨ぎ越し、その大きな足で地面を踏みしめている。


私の体ほどある手、その右手がこちらに伸びる。


"パァァン!"


私の左手でサイクロプスの右手を払うと、そのままサイクロプスの手が飛沫に成って吹き飛んだ。


驚いているサイクロプスに、いつからそこに居たのかあの蛇がサイクロプスの腕に噛み付く。


「アァァァァ!いでぇぇぇぇ!」


手を振り上げて痛がるサイクロプス。

何が起こったのかと、ヌイグルミを全滅させたサイクロプス達がこちらを一斉に見る。


腕を見るなりその大きな目を丸くさせて、叫ぶ


「レッドデビルサーペントだ!逃げろ!」


一斉に逃げ出すサイクロプス達。


レッドデビルサーペント、未開の森の奥地に生息するその蛇は、小さいが即死性の毒を持ち攻撃的だ。

赤と褐色の縞々を見たら逃げろ。

これが鉄則なのだ。


あの蛇は小さくて、どこから襲ってくるか解らない。

たまに現れては、村を何個か全滅させている。



ドン!と目の前のサイクロプスが後ろ向きに倒れる。

その目は、見開いたまま固まっていた。


そのサイクロプスからスルスルと蛇が戻って来る。


「守ってくれてありがとう。」


もたげた頭をまた指で撫でてやる。

サイクロプスから蛇に何か入って行くような感覚がする。

私もご褒美を何かあげたい。


そのまま、ふわっと浮き上がる蛇。

私の顔の辺りでキョロキョロ辺りを見渡していた。


目の前に倒れる巨大な体。

その横にあの狐の彼女が仰向けで倒れていた。


「あなた、大丈夫?」


投げられた狐の彼女は、意識を取り戻す。


「貴方無事だったんですね!」


フラフラ飛び上がる狐の彼女。

どうやら無事の様だ。


「私のせい………。」


仲間だった物を見て呟く、狐の彼女。

なんと声を掛けていいのか分からなかった。


何故か無性に、むしゃくしゃしている。

"奴隷"

その言葉にちょっとまたあの頭の痛みを感じる。


後ろからドドドドド!っと音がしてきた。


「魔物の群れが来てますよ! 早く逃げないと!」


うるさかった、ちょっと黙ってほしかった。


後ろにあった巨木を、その気持ちを込めて拳で殴る。

白い衝撃波と共に幹全体にヒビが入り村の反対側に倒れる巨木。


パァァァン、メキメキメキ……ドスゥゥン!


音が遠ざかっていく、そのまま狐の彼女もしゃべらなかった。



しばらくして、頭がいつも通りに成った。

何故かまたあの静かな森に戻っている。


ただ目の前狐のヌイグルミが居た。

蛇はお腹に居る。


「凄いです。 サイクロプスを倒しちゃうなんて!」


「それを倒したのはこの子よ。」


お腹からスルスル出てくる蛇、言葉を理解しているのだろうか。


「ヒッ! レッドデビルサーペント!」


少し悲鳴を出して後ずさるの彼女。


「その蛇浮いてません? 浮くレッドデビルサーペント、まさかセリカサーペント!?」


「この子そういう名間なんだ。セリカだね。よろしく。」


ふわふわ浮いている蛇の頭をまた指で撫でると、またチロチロと舌を出した。


「赤いセリカサーペント、レッドセリカサーペント………」


狐の彼女は、フラフラとそのまま地面に落ちて気を失ってしまった。



森の住民達は消えた衝撃波を不安に思いながらも、まだ走る。

本能が逃げろと警笛を流し続けるのだ。


ずいぶん走ってきたがまだ足りない、この森を抜けなければ危ない!

その思いが体を突き動かす。


突然前方から衝撃波がくる。そしてまた巨木が倒れる。


"あれ"が暴れている。


一斉に引き返し、森の奥へ逃げていく魔物達であった。




色々あって疲れたんだろう。そう思い、村の逆側で狐の彼女を藁を集めてきて寝かせてあげる。


小さな彼女達の住居を見て回るが、誰も居ない。


土で出来た壁に、あの背の高い草で作られた屋根。

あんな私が動くだけで倒れる草で大丈夫なのだろうか。

でも、あんな脆い巨木よりはましだ。


近くには土で出来た食器などがある。生活感が漂う空間にそれを使用する者は誰も居ない。

あのサイクロプス共に潰されて全滅してしまったのだろうか。


端っこにはお墓が沢山あった。


その中の名前がふと引っかかる

"メラン"

また頭が痛くなった。


少し収まってくると紫の空に白い丸がある。

この世界は夜が来ないのだろうか。


狐の彼女の所に行く。

彼女は蛇のセリカとにらみ合っていた。


「何、仲良くなったの?」


「目を離せないんです。 咬まれたら死んじゃいますよ。」


「そんな事しないよね? セリカ。」


そう言うとこちらに向かってくる蛇のセリカ。

飛ぶスピードが速く成っている。慣れてきたようだ。


そのまま肩に乗るセリカ。頭をなでてあげる。


「あわわ………肩に載せてます。」


狐の彼女は、セリカとは仲良く成れそうにない。


そのままセリカに警戒心むき出しであったが、この世界の事を話してくれた。

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