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底から  作者: ぼんさい
27/98

魔界編 ススカ 17 ~ルル編 2~

冒険者ギルドで、ステータスを確認しに来た私達。


私の種族が変わっていた。


"ニュイデーモン"


聞いたことないが、プチデーモンではなくなっている。

嬉しかった。 ずっとメランさんの胸に飛び込んで涙が止まらない。


メランさんとセリカとヒヒが話をしている。

ステータスの話。


改めてみる自分のステータス


---------------


ルル


ニュイデーモン


体力量 : S-

魔力量 : SS

力   : S-

防御力 : S-

魔力  : SS


---------------


教会では数字だった。

全部1だったけど。


「聞いて驚け、俺のは体力量10もあるんだぜ、すごいだろ!」

ヒヒは私より10倍も体力があるんだ。 やっぱりすごい。


「ヒヒや、Sってのは何なんだい?」

私もあるS、何なんだろう。 あんまり数値とかいいや。


「確か、ルシファーがS-ってのを持っるって聞いたぜ、あの魔界最強の男がS-を一個持ってるんだよ、1000だぜ1000。」

S-、私もあるんだけどS-。


ルシファー?


1000? ヒヒが10で S-が1000?


このステータス板壊れているんじゃないだろうか。

3個もS-がある。


「おいおい、ルルねぇさん、そんなウソついてもなんもなんねぇぜ。」


嘘なんて付いていない。

馬車を出て、皆でヒヒに見せる。


少し固まったヒヒ。

とりあえず馬車の中に戻れという。


周りに聞かれると良くない?

まだ私のステータスに何かイケない事が書いてあるんだろうか。

少し心がしぼむ。


ヒヒがステータスの説明をしてくれる。

セリカはルシファーより強い。


あんな姿をしている龍だもん。 あまり驚かない。


「でだ、ルルねぇさんもS-3個持ってるんだ、ぜってぇルシファーよりつええぜ」

私がルシファーより強い? 実感が沸かない。

だって何も出来ないよ私。


メランさんのステータスは解らないみたいだ。

解らないってあるんだ。


メランさんとセリカのステータスを初めて見る。


メランさん"???"って成ってる。

何者なんだろう。


セリカは黒赤龍、やっぱり龍に成っている。

あの姿はすごかった。 あんなの見たことない。

見てたら死んでいると思う。


※ってなんだろう。


ヒヒが説明してくれる。


「※は、世界を滅ぼす可能性があるんだって噂なんだぜ。 その為に現れたら魔王全員で倒しに来るんだぜ。」


「なんだい、私たおされちまうのさ。」


「全員で戦っても勝てるか解らないから、触るなって意味らしいぜ。 そんなの冒険者ギルドに持って行ったら、ぜってぇぇ偉いことになるぜ。」


「私、本当に世界滅ぼせるんだねぇ。」


セリカはやっぱりすごい。 魔王とか世界とか次元の違う話をしている。


でも、そう考えるとメランさんはどうなんだろう。

元々セリカを従えていたメランさん。

セリカの方が強いの?


「ないねぇ、主の方が高いハズだねぇ。」

やっぱりそうなんだ。


「一緒に滅ぼしましょうか、セリカ」


「主、わかってるねぇすぐにでもやるかね。」


私も仲間に入れてほしい。

でも、私、何も出来ない。


メランさんみたいにレーザーも打てないし、セリカみたいに火も吐けない。

あんなに大きな姿にも成れない。


せっかく、一緒に居られると喜んでいたけど、私、何も出来ない。

一緒に居て本当に良いんだろうか。


外から声が聞こえてくる。

"角なし"私たちの事だ、少し怖いが、さっきの話を聞いた後なのか、意識がどこかに行くほどでは無い。

でも、やっぱりちょっと怖い。


セリカから赤い魔力が吹きあがっている。

攻撃的な赤い魔力。 でも私はあの魔力が嫌いじゃない。

私を守ってくれる魔力だ。


守ってくれる。


私は彼女達に何も出来ない。


そのまま出て行ってしまうセリカ。

魔人達に囲まれている。


吹きあがる魔力がどんどん濃くなる。

目の前が真っ赤だ。


魔人達は気付かないのか、セリカに襲い掛かる。

案外遅い。


セリカが高速に見えてしまう。


魔人達の剣に指を当てるセリカ。

途端に、剣が溶けてしまう。


あの龍の姿に成った時、地面を溶かしていたあの液体。

それが人型のセリカからも出ている。


また一段と上がる赤い魔力。

カッコいい。そう思う。


私にはあんな堂々と魔人達と対峙出来ない。

やっぱりセリカはすごい。


次々と魔人達の武器を溶かしてしまうセリカ。

全部溶かして、セリカは動かない。


魔力だけがどんどん大きく濃く成っている。

私はこんな事解っただろうか?

何か見えている。 自然と解ってしまう。


「他のも居ただろ、そっちだ素手で行ける。」


2人の魔人達が私を見る。

怖い、対象がセリカだったから見ていられた。

私に対象が向くと、やっぱり怖い。


その奥で、赤があふれ出す。 周囲の色が一瞬で彼女の色に染まる。


「あんたら主に手出したら、殺すよ。」


口から隠せない程の牙を伸ばし、黒く伸びた爪、そこからあの毒がポタポタ垂れている。

恐ろしいとは思わない。 ただただ羨ましくなった。


魔人達の視線が消える。

彼女が言葉を放つだけで意識を刈り取ったようだ。

凄い、そんなことが出来るんだ。



「すまない、悪かった、謝るから許してくれ!」


あのギルドの中に居た、緑の髪の男が地面に頭を付けて、謝っている。


「そんなんで済むと思うのかねぇ!」


益々魔力を濃くしたセリカは止まらない。

どこまで魔力があるんだろう。 とにかく凄い。


そのまま男に近づいていく。 男も固まってそれ以上喋らなし、動かない。


固まった他の魔人達と違う次元に1人で居るようだ。


地面を溶かしながら近づくセリカ。


「私も謝るから、どうか許してくれないか、龍様。 私はここの責任者だ。」


もう一人動く魔人が現れた。骸骨の女の人。


2人に成った次元。


「気が済まないねぇ。」


またセリカが一人で動く。

他は、止まってしまっている。


完全に沈黙した場で一人で動くセリカ。


骸骨の女の人の顔を上げる。


「魂だ。 次、同じことあったら、あんたの魂寄越すのさ。」


「龍様。 かしこまりました、今日はそれで収めていただけませんか。」


「覚えとくんだよ。」


龍様、セリカは竜だ。 やっぱり特別だ。


周りを固まらせたまま戻って来るセリカ。



「ヒヒ、出しな。」


赤い魔法を身にまといそのまま。

まだ増え続ける魔力。

セリカに憧れてしまっている。


私じゃ出来ない事を簡単にするセリカ。


私も何かできないだろうか。

また彼女達と一緒に居られるだろうか。

そんな考えが頭の中を支配する。


何もできない自分が一緒に居ても良いんだろうか。

頭が自然と下を向く。


セリカの毒が、馬車に穴を開けていた。


「セリカ、馬車に穴が開いちゃってますよ!」


思わず言ってしまった。

こんな軽はずみに喋る事なんて無かったのに。


赤い魔力が収まっていく。


「ルルには負けるねぇ。」

雰囲気が戻ったセリカが私に話してくる。

なんだか安心してしまう。

居場所が有るようで。


「セリカ!あれカッコよかったです。 どうやってやるんです?」


「ルルちゃんには、できないかもねぇ。」

私には出来ない。

やっぱり、私には出来なんだ。

不安が心の中に残り続ける。



そこからずっと動いてる馬車。


"私には出来ない。"

ずっと頭に残る。


馬車を引いて何処までも連れて行ってくれるヒヒ。


私を守ってくれるメランさんとセリカ。


私は? ずっと考えてしまう。

でも、彼女達を不安にさせてはいけない。

その心を、必死で奥に奥にしまい込む。


「なんか食いたい気分なのさ。」


心を落ち着かせていると、セリカの言葉がまた私を心の迷宮から掬い上げる。


私も食べれるんだろうか。

何も得れなかった前の私。


「ルルちゃん、種族変わったんでしょ、大丈夫じゃない?」


メランさんが言うように、種族も変わったんだ。

出来ることが増えるかもしれない。


ヒヒの知っているお店に行く事にする。


皆で向かう道中。

出来ることが増える。

それで頭の中が一杯に成った。




3階建ての少し周りよりも大きな建物。

食べるが出来る場所だ。


ヒヒが知合いのメルサという魔人と話をしている。

この魔人を見て、少し怖いと思ってしまう。


でも、彼女達と一緒だ。

彼女達も彼に対して何も思って居ないようだ。


中に入る、普通の木のカウンター、椅子に机。


少し昔を思い出すが、今度は私が食べる番だ。

そう自分に言い聞かせる。


席に座って、食べるを待つ。


意外だったのはメランさんも何かを食べた記憶が無いとの事だった。

なんだか嬉しくなる。

メランさんと初めての初めての事だ。


話していると、奥から白い猫がお皿と水を持ってやってきた。


私達がしていた仕事だ。


小さい体全部を使って、必死でやっている。

でも嫌そうでも無い。 怖がっても居ない。

昔の私達とは全然違う。


その必死な姿に、なんだか、"可愛い"そう思う。


テーブルに配膳した後もテトテトとカウンターの奥に入って行く猫。


「ムーちゃぁぁん、これも出来たわよ~。」


あの猫はムーと言うようだ。

ムーはまた体を全部使って、お皿と食器を持ってくる。


「熱いから冷まして食べるのにゃ。」


気遣いまでしてくれる。

今までにしたことが無い感情が胸から溢れてくる。


「そうね、冒険者ギルドにも居たわね。」


「ヘルキャットだねぇ、ありゃぁさ。」


冒険者ギルドにも居た? 私は見えていなかった。

でもあの子は特別だと思う。


必死な姿、なんだか自分と重ねてしまう。


鉱山宿舎で、似たような仕事を"させられて"いた。

言われた物を運んでいくだけの仕事。


必死でやろうとは思わなかった。

飲み食いしてる魔人なんて怖くて喋ったら殺される。

そんな仕事。


でも彼女がしているのは同じようで、違う仕事だ。

彼女も出来るを持っている。

私とは違う。


「主、それどうやって使うんだね。」


私も使い方を知らない。

メランさんに教えてもらう。


やっぱりメランさんはなんでも知っている。

またムーが体を全部使って、持ってきてくれる。


「ベルバッファローと玉ねぎのスープにゃ。 冷まして食べるにゃ。」


横のテーブルに座るムー。

此方を見て、尻尾を振っている。

愛くるしい姿に夢中になる。


「どうしたのかにゃ、食べないのかにゃ。」


「あぁ、白いのを見ながら食べたくないかにゃ。 失礼したにゃ。」


何か訳のわからない事を言って少し元気が無くなるムーちゃん。


違う、可愛いから見てるだけ。


「か、可愛いかにゃ 初めていわれたにゃ。」


照れながら言うムーちゃんに頭が一杯に成った。


私もムーちゃんの様に、頑張って出来るを増やさなきゃいけない。


教わったように、肉を切り分け、口に運ぶ。

一つ出来る事が増える。


口の中に入れる。


初めての食べる。


中で広がる味という感触。

何かが体の中に入って広がっていく初めての感触。


全てが吹き飛んだ。 こんなに食べるとはすごい事だったのか。

美味しいとはこの事か。


セリカも夢中で食べている、道中色々食べ物の話をしてくれたセリカ。


そのセリカが夢中に成っているんだ。

きっと、これ自身もすごいに違いない。


初めてをこんな体験にしてくれたメルサとムーちゃんに感謝だ。

沢山幸せと初めてを貰ってしまった。


でも、私も食べるを出来た。


何か、ごまかしている気分に成っている心をまた隅に追いやる。


メルサが出てくる。

「ヘルキャットのムーちゃんよ、よろしくね。 お味はどうかしら?」


ムーちゃんは可愛いし、食べるは凄かった。

何回もセリカが食べていたし、よっぽどすごいんだろう。

美味しかった。 また食べたい。


「うれしいわぁ! 簡単な物しか今は作れないけど明日は頑張るからねぇん!」


明日は、もっと凄い物を食べれるのか。 嬉しくなる。

でもちょっと寂しい気持ちに成る。



「そうなのよぉ、この子みたいな色物しかこの店には来ないのよん。」


ムーちゃんを撫でながら言うメルサ。

色物?


メルサが喋ってくれる。

ムーちゃんは、不吉だと言われて居場所が無かったようだ。


その初めての居場所、メルサの店。


そこで頑張って出来るを増やしてるムーちゃん。

可愛いムーちゃん守ってあげたい。


でも、私は何も出来ない。


メルサが色々してくれるが、どうしても気が晴れない。


何かを他人から与えられる度に、心の底が沈んでいく。

そこに補填するように魔力を感情を流し込むが溜まらない深い底。


私は何も出来ない。

それしか頭に残らない。



ムーちゃんが、部屋に案内してくれる。


3個ベッドの並んだ部屋。

初めてのベッド。


メランさんと、セリカは背が高い。

私には無い物を持って居る。


ここでも素直に喜べない。


でも初めては嬉しい。

3人とお話をしながら時間が過ぎていく。


頭の中で回る。

私は何もできない、一緒に居ていいのか、頑張らないと。


気付くと意識を失っていた。

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