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底から  作者: ぼんさい
20/98

魔界編 ススカ 10 ~ダン編~

俺はダンだ。

冒険者ギルドの買い取り係をやっている。


最近はマスターに仕事を押し付けられて、街会議にも出てたりするが。


そんな事は良いんだ。やっちまったんだ。


昨日赤の時間に、龍がギルドに来た。

気付かず怒らせちまったんだ。


それは収まったから良いんだ。

奴が怒りを収める対価として、マスターの魂を掛けられちまった。


「魂だ。 次、同じことあったら、あんたの魂寄越すのさ。」


あの言葉が忘れらない。

あれを怒らせてはいけない。


俺達ギルドは皆で何も無かった事にした。

そう、冒険者も含めてあの場に居た全員だ。


ダンテには言ってしまったが、義理堅いあいつが、何かするわけはない。


あの殺気を受けて、従わない奴は居ないだろう。


角なしを馬鹿にするのも改めようと成った。



でもあの場所に居たのは俺等だけじゃなかった。

道を通り過ぎる魔人。


確かに何人か居た、あいつらの事を忘れてたんだ。


赤の時中に張ったのか、街の大通りの店は

<角なし入店禁止>

の張り紙。


あんなの見たら龍に対して喧嘩売ってるみたいなもんだ。


今日はカウンターに座ってる気持ちが重い。

誰かが入ってくる度、ビクビクしてしまう。


スレイなんて、緊張しすぎて一歩も動かない。

何時間そこに立ってるんだお前。


ローズは相変わらずだるそうにしているが………




張り紙1日目は何も無かった。

平和だった、全く心は平和じゃなかったけどさ。


ギルドの奥で睡眠を取る。 ギルド員はギルドで寝るのだ。 それも仕事だ。


目が覚める、今日もまだ生きているようだ。

意外に何も起こらないのかもしれない、そう願いたい。


ローズと交代で真ん中の受付に入る。

だいたい冒険者共の朝は遅い、白の時の早い時なんて誰も来ない。

まだあいつらは帰って来ない、


ドラゴン山の駆除に行った灰色の剣

鉱山の様子を見に行った鷹の目

街道の異変を調べに行った青い爪


灰色は少し遅すぎないか。

不真面目なあいつ等だ、どうせどこかで遊んでるんだろう。



ただひたすら酒場のヘルキャットが掃除している姿が見える。


"カーン"カーン"


非常用の鐘の音が聞こえるまた訓練か?


"カーン""カーン"


南門も鳴っているマジな奴だ訓練で2か所は鳴らさない。


その後4方面から聞こえてくる鐘。


なんだ一体何が起きたんだ。


「ダン、鐘なってるよぉ。」


「ローズお前見てこい。」


「え~怠いもん。 ダン行ってよぉ。」


サキュバスのローズはこの段階でも使えない。

その羽何のために付いてるんだ。


まぁいい、そう思ってカウンターを飛び出し冒険者ギルドを出た。


周辺に住んでる冒険者が集まってくる。


「ダンさん、何があったんだ。」


でかい虎の魔人トラオ、よく酒場に入り浸っている奴だ。


「俺もわからねぇんだ。 今見に来た。」


喋っていると、高炉の煙突に白い閃光が東門方面から放たれる。


一番奥の煙突が東側に倒れた。


倒れた振動がここまでやって来る。


"東門"難民で溢れかえる門。


会議でサタンが死んだ噂があると聞いた。


"勇者"とにかく白い人間。 見た事は無いがなんでも白い。

あの白い閃光は勇者の攻撃じゃないのか?


「おい、みんな聞け! 勇者が攻めて来たぞ! 防衛線を張って住民を西門に逃がせ!」


周囲の全員が振り返る。


金の為に働いているこいつ等だが、この街を好きな奴ばかりだ。


「ダンさん、街を捨てろってのか?」


「勇者だ、俺達に倒せる相手じゃない。 ベルゼブブが出てくるまで逃げ回るんだ。」


「わかったよ、あんたが言うんだ、いくぞ皆!」


そこから居たメンバーで適当に場所分けをする。



高炉、あそこが中心だ、とりあえず住民を逃がせればいいんだ、大勢のギルド員で向かう事に決める。


此処の守りはスレイに任せて、俺とローズは高炉へ向かうのだ。


マスターが西の方へ飛んで行った。 情報収集と打ち合わせだろう。


この街で一番の魔法の使い手であろうマスター、彼女は魔法で飛べるのだ。


「君たち、戦意が無いなら1時間まってあげよう。残った者は排除するよ。」

頭の中に直接声がする。 嫌な奴らだ。


ローズも"その声"を聴いて真面目になったのか素直について来た。


混雑する道を逆に進む。


大通りに出ると、高炉が見えた。 その根元には西へ流れる群衆の波


まだ逃げきれていない東門から丸見えのあの場所をどうにかしなければ。


南門にはあまり人が来ない。こっち側は何も無いのと、衛兵が西門へ逃げろと叫びまわっている。

ダンテは無事だろうか。


ギルド員30名程度で人の流れをかき分けて高炉へ向かう。


時間と共に魔人の数は減ってきた。


まだ高炉は無事だ、西側でなにやら作業をしている。


こんな時に何やってるんだ。


高炉の広場まで付いた、東側には逃げる群衆は居ない。

普段蟻の巣に吸い込まれる蟻のように走っている馬車が一台も居ない。


倒れた煙突の根本は焼けように赤くなっている。


異様な風景だった。


広場で高炉長に出会う。

ダークドワーフのムジ、小柄のずんぐりむっくりな体に真っ黒な肌、白い髭。白い長い髪。

街会議に出ていて良かった。


「ムジさん、こんな時に何の作業してるんだい?」


「おぉダンか、どうせ固まるんならあいつらに浴びせてやろうと思ってな。」


ダンは高炉を爆破して、勇者にぶっかけるつもりだ。

どうせ止めたら固まる高炉、それを爆破して溶けた鉄をお見舞いしてやろうて算段だ。


4個ある高炉の内3個は仕掛け終わったと髭を手で擦りながら笑っている。


ダン曰く、勇者3人と聖女3人も居るらしい。


一人でも災害の勇者が3人、サタンが倒されたのは本当かもしれない。


高炉の奴らが仕掛け終わるのと同時進行で、そこら辺の家の中の物や、高炉の中にある製品を使い

高炉の北東側の広場に防衛線を築く。


ジムの作戦に乗っかかる。

鉄を掛けた瞬間に魔法を叩きこんでやるのだ。


タイミングは俺とローズで東通りに立って合図する。

ローズはマスターに次ぐ魔法の使い手だ、簡単には沈まないだろう。


準備を進めている最中、またあの閃光がやってきた、閃光が3本の煙突を射抜く。

東側に倒れる煙突。


この街が終わりを迎えたような気がした。


急いで東通りへ向かう。


北西では家が飛び、血が飛んでいる。


凄い速さで西門まで向かうそれに必死で向かう。

あんな速いのか! 焦る。


ギルド員に声を掛けられながら、東通りへ出る。


遠くに1人の勇者と1人の聖女がぽつんと歩いている。

南側では家が大量に浮いて沈んでを繰り返している。


3人居る勇者、分かれて侵攻されているのだと気付いた。


目の前の勇者は歩きながら手に持った剣を振るい光の筋を出しながら歩いている。


筋に触れた家は吹き飛び、同時に悲鳴も消える。


奴は、殺しながら歩いているのだ。


「ダン、あれは止められないと思うわ。」


ローズの初めて聞いた真剣な声、羽をきちんと出し、少し飛んでいる彼女。

ピンクの目が勇者を見つめている。


だんだん近づいて来る勇者。他の2方はもう見えない。皆大丈夫だろうか。


「悪は駆逐しなきゃ。 悪は駆逐しなきゃ。」


「悪いのは奴らです。 徹底的に悪は滅ぼすのです。」


彼等の声が聞こえてい来る。

悪? 滅ぼす? どっちが悪なんだと言いたくなるが黙る。


相変わらず両端の建物を斬撃で壊して回る勇者。

ゆっくり確実に、徹底的に街を破壊している。


「僕は逃げる時間を与えたはずだよ? なんでそこに立っているんだい?」


「神の慈悲もやはり届かないのですね。ミノル辛いでしょうけどこれも試練よ。」


「そうだねミホ、この戦いを終わらせないと。」



こちらに気付いたた勇者


「何が悪よ、私たちの生活壊してるのは、あんた達じゃない。 この殺戮者。」


「おい、ローズ! 挑発してどうする」


いつもの彼女と違う顔をしているローズ、敗北を悟ったのかヤケになったのか。


「そうだね、君たちから見たら僕は殺戮者かもしれないね。 でも正義は僕たちにあるんだ。」


両手で剣を上に振り上げ、その後肩の位置まで構える勇者。


瞬間こちらへ飛んでくる、思わず、防衛線越しに見える冒険者に合図を送る。


勇者が迫る。 早い!


ローズが魔法シールドを展開している。


高炉の爆発はまだか、少し遠い位置の魔法シールドにぶつかる勇者。


シールドがひび割れて、砕けそうだ。


バァァン!


真後ろの高炉が爆発した、吹きあがる真っ赤な鉄、水のように吹き出し、勇者を直撃する。


ローズを抱きかかえ、防衛線まで必死で走る。


バァァン!


また爆発する高炉


下の方をやったのだろうか、居た場所に真っ赤な鉄が川のように流れだす。


やったのか、どうなんだ。


後ろに迫る熱気に必死で走る。


息が熱くてできない。


鉄で築かれた瓦礫の山に手を掛け昇る。


「君たち、駆除対象なのに僕に逆らうのかい?」


後ろを見た、見てしまった。


真っ赤な川の中に燃えている勇者。

それが喋っている。


その後ろの聖女は杖をかかげ自分の周りを丸く囲っている

そこだけ赤い川は来ない。


冒険者達の魔法が一斉にその燃える勇者に殺到する。


燃える手が何もない剣を握っている。


そしてその剣に魔法が当たった。


全部吸われたように消えてしまう。


固まってくる鉄、周囲が鉄の塊に変わりつつある。


あの勇者はずっと燃えている。 何も言わない不気味だ。


剣を握っていた手が焼け落ちた。


"やったのか?"


「ミホ、お願いするよ」


「はい、ミノル」


焼けている勇者が白に包まれる。


まだ半分固まったような鉄の塊に乗っている、綺麗な姿をした勇者。


「駆除を始める。」


足元の鎧が燃えているにも関わらず、冒険者達の方に突っ込んで行く。


剣を振るうと、鉄くずの山と一緒に、そのまま何人か吹き飛んで消えてしまった。


「アハハ、そうさ、君たちは駆除対象なんだから、正義の僕に勝てるわけ無いじゃないか!」


一人一人、刺し殺され、首をはねられていく。


剣や斧を構え応戦しようとするが、一瞬で刈り取られていく。


一人一人また一人。


ローズが手から火魔法を放つ、途中でシールドに消されてしまう。


「なんて格好なのですか、これだから悪はいけません。」


サキュバスの恰好を言っているのだろう、そのままシールドがこちらに迫って来る。


「ダン、逃げるのよ、無理よ。」


魔法のシールドを再展開するローズ。


聖女のシールドと、ローズのシールドがぶつかる。


一瞬止まったシールドはそのまま無視してこちらに寄ってくる。


その横でアハハ!と笑いながら殺戮を繰り返す勇者。

冒険者を虫のようにいたぶって殺している。


何かに前から押しつぶされそうになった、焼ける背中、足、顔。全部が焼けている。


「い゛ぃぃぃ・・」


ローズの声が聞こえる、でもこの鉄の向こうだ。


掠れる視界に勇者と目が合った気がした。


「愚かな生き物が! 俺に反抗してんじゃねぇよぉ!」


最初の顔は見る影もない。


目を見開いて、口をゆがめ首筋に力が入っている。


皆死んじまった、ススカも終わりだな。


急に背中から痛みが消える。張り付くような感覚。


「この辺熱いんだけど、ちょっと冷やすね。」


白い髪の女だ、何しに来た。

あいつ浮いてないか?


東通りと、高炉の広場の真ん中で浮いている白い髪をして簡単な鎧を身にまとった彼女の下から

鉄が固まっていく。


「強いの来ましたよ、ミノル!」


あのシールドが白髪の女に飛んでいく。メランだったか。


何もしない彼女、


「メラン! それはダメだ逃げろ!」


「下等生物・・・悪は、黙らないとだめだよ。」


勇者が何か言っているがどうせもいい。


声が出ていないのだろうか、彼女は気付かない。


白い壁が当たる直前、彼女は避ける。


四角くへこむ高炉の残った壁


「それなんて遊びなの?」


「避けた! これなら!」


巨大なシールドが現れる。高炉を全部押しつぶせそうな大きさ。


「あれ?壁を破るゲーム? どっちが〇なの?」


「逃げろ! メラン!」


「下等生物は黙ってろよぉぉぉ!」


勇者が飛んで来た。


「ダン、馬鹿ねあんた。」


ローズが壁越しに笑いながら言ってくる。


勇者が何かに当たって地面に埋もれた。


「ちょっと叫ばないでくれる? わからないじゃない。」


その手に禍々しい太刀を持ったメラン。


剣圧で飛ばしたのか?


彼女に巨大なシールドが迫る。


街が押しがされている。


シールドが彼女に当たった瞬間、砕け散った。


「ねぇ、今ので正解なの? 教えてよ。」


「クソッ! これなら!」


20枚は並ぶ白い濃いシールド、一斉にメランへ放たれる。


全て、彼女の身体に当たり弾けてしまう。


「くそ! ボスか!」


勇者が穴から飛ぼうとする。


彼女がまた太刀を振る。


また埋もれる勇者


「ちょっと黙ってなさい。」


「ミノル!」


聖女の杖が光って、勇者に何か白いのを送る。


聖女の周りの鉄が砕けて、そこにメランが現れた。


「ねぇ、正解だったの?」


「ヒィ!」 悲鳴を上げる聖女


そこに勇者が飛んでいく。


「ミホをいじめるなぁぁぁ!」


避けたメランは、腕を組んで仁王立ちする。


「私ずっと質問してるのに、答えてくれないじゃない。」


泣き顔の聖女と最初の顔に戻った勇者。


「悪に答える言葉なんてない。」


「悪って何なの? 私?」


「そうだ、魔界の物は全部悪だ。 駆逐しなきゃダメなんだ!」


「全部なの? なんで駆逐するの?」


「正義は俺達にあるからだ!」


「正義? 私も正義あると思うけど、私の正義はどうするの?」


「悪の正義なんて無いんだ! お前協力しろ、俺達を手伝え。」


「私の正義は良いんだ。 協力なんてするわけないじゃない。」


「そしたらお前は悪だ! 敵だ!」


「正義と正義がぶつかったらどうなるのか知ってるのね。」


「わけのわからない事を言うな!」


切りかかる勇者。彼女は太刀で真っ二つにしてしまう。


「終わりなの? あっけないわね。」


聖女が何か唱える。 また綺麗な勇者が現れた。


「俺は悪が消えない限り何度でも蘇るんだ!」


「めんどくさいわね。」


何回も、何回もその斬撃で切れては再生する勇者。


聖女も顔色一つ変えない。徐々に泣き顔が普通の顔に戻って来る。


何回続いただろうか、メランは辞めてしまった。


「そんなんじゃ、俺は倒せないんだよ!」


「神の力は偉大なのです!」


威勢が良く成りだす勇者と聖女


やはり勇者には勝てないのか。


「私もそれ出来そうだわ。」


黒い魔力が体を覆う。


後ろの張り付く感触が無くなった。


地面に落ちる。


なんだ、何が起こった。


横でローズも体を触って確認している。


魔人の気配がする。 あの嬲り殺された冒険者達が生きて立ち上がっていた。


「皆、ゆっくりしててね。 後、爪と牙買い取ってほしいの。」


あのメランとかいう女は生死も操るのか、怖く成ってくる。


「別の事も出来るけど?」


勇者と聖女は固まってしまっている。


「あと、下等生物とか言ってたわよね、私その言葉嫌いなの。」


「なんでだ! お前ら下等生物だろうが!」


周囲の雰囲気が変わる。

彼女から、どす黒い魔法が溢れてくる。


「あなた達、私が怒ってるの解らないのね。 私の街に何してくれてんのよ!」


「知るか! どうせ斬撃しか飛ばせないんだろ!」


勇者がまた彼女に襲い掛かる。だが今度は何かを溜めていたようで剣が真っ白に輝いている。


振りかぶる勇者、彼女はまた動かない。


剣が触れそうになった時、彼女が指を剣に当てた。


「死ねぇェェ!」


何も起こらなかった。 剣にヒビが入る。


「なんだと! 剣が!」


そのまま手を広げると、黒い魔力が収縮し始める。


少し浮き上がる勇者。


黒いレーザーの様な魔力が勇者を飲み込んだ。


北の山に向かっていたレーザーは、山をえぐってどこかに消えた。


しかし勇者は不死身なのか、また現れる。


「はぁ・・・」


ため息を付いた彼女、少し高炉の方へ飛んでくる。


「逃げるのか! ハハハハハ! 所詮魔物だ!」


勝ち誇る勇者。


急に黒い球体が現れた。空中に現れたそれは勇者だけ巻き込んで拡大を止める。


メランが手をその球体に翳している。


「何回死ねるか、試してみよっか。」


そのままその球体は黒く渦巻き周りの音さえ吸収している。

異様な球体。


「ミノル! それ魔力も吸ってるわ! 私の魔力が帰って来ない!」


叫ぶ聖女、でもあの球体の中に届いているとは思えない。


「遅くなってきてるわよ、もうちょっと頑張ってよ。」


あの中で何が起こっているのか、想像したくない。


「もう、魔力が!」


消える球体、現れた勇者。顔が完全に逝ってしまっている。


「ミノル! あなたミノルに何したのよ!」


「何って、最後の1回まで死んでもらっただけだけど?」


「最後の一回って・・・1000回は行けるはずよ。」


「999回死んだんじゃない? 知らないけど。」


「そ・・・そんな。」


膝から崩れ落ちる聖女。顔に気力が無い。


勇者までコツコツ歩く彼女、髪の毛を掴むとそのまま聖女の方に投げる。


ドン!


「キャァ!」


聖女をかすめ、横にある家の壁に埋もれてしまう。


だらだら流れる血。


そこに彼女が歩いて近づく。


聖女が涙を流して彼女を見ている。


無視したようにまた勇者の頭を掴み、逆側に投げる。


ドン!


また鉄の壁に埋もれる勇者。


「次は貴方ね。」


それだけ言うとまた勇者の方に近づいていく。


髪を掴んで投げる。


さっきと逆側の建物に突っ込む勇者。顔がぐしゃぐしゃだ。


コツコツまた歩き出す彼女。


「壊れちゃうでしょ? 再生魔法かけなさいよ。」


聖女は恐怖の為か、動けない。


勇者の前に立つ彼女。


「あら、もう良いのね?」


指をデコピンの形にした彼女はそのデコピンを勇者に向けて放つ。


ダァァン!


赤い何かと家が北の山の方に吹き飛んで行った。


「汚れちゃった、生活魔法使えるでしょ?」


聖女の前に立つ彼女、そのデコピンした指を聖女の前に差し出す。


「も・・・もう魔力が無くて。」


ガタガタ震えながら答える聖女。


「あなたも使えないの? 私の怒りどうしてくれるのかしら。」


「すいません、すいません、もうしませんから。」


「そんなんで晴れるわけ無いでしょ。」


血の付いた手を顔の前にやり、黒い魔法がかかると綺麗になる指。


「こんな事もできないのね、聖女って大したもんじゃないのね。」


「はい、そうです、ごめんなさい。」


「謝って許されると思ってんの!」


「ヒィィ、ごめんなさい、ごめんなさい。」


頭を地面にこすり付け謝る聖女に彼女が足を上げる。


そのまま振り下ろす。


ドォォン!


地面が揺れる。煙突が倒れた時より大きい。


彼女の脚元にできたクレーターには何も無かった。


「小さい魂ねぇ、こんなんじゃ収まらないじゃない。」


目の前に浮かぶ聖女の魂をデコピンで消滅させるメラン。



「ねぇ、ダンだっけ、収まらないから、一回私と手合わせしない?」


「む、むりだって・・・」


こうして勇者の侵攻は終わった。

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