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底から  作者: ぼんさい
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魔界編 序章 1

頭が痛い、破裂しそうだ。

目が開けられない。


"ここはどこだ"


解らない、また頭が痛い。


"俺・・私・・自分・・"


己が何かも解らない。考えると頭が痛くなる。


"さっきまで何をしていた?"


解らない、痛い痛い頭がもう破裂しているのでは無いか。


ふと、王座に座る男が浮かんでくる。


"俺(私)を助けてくれ! ずっと従ってきたのに!"


痛い 痛い 痛い。


どれほど経っただろうか、気付くと目の前が紫の空が広がっている。

雲も無い、何もない紫。ただ綺麗な色ではない。黒く薄汚れた紫だ。

目を動かすと、白い丸が見えた。それ以外は何もない。


手が頭に触れている。そのサラサラした触感は髪だ。

目の前に持って来る。

細い女の手が、白いサラサラした髪を持っている。


顔を動かす。

周辺は何もない茶色い大地がずっとある。


その先に森だろうか、緑の木が大量に見える。

動く物は無い。

逆側も似たような風景だ。


体中の感触が伝わってくる。

大地に触れる背中と脚、そして頭。

ジャリジャリとした感触が、若干不快だ。


肌に風が感じられる。湿度の高い嫌な風。

ジメジメとした風は、肌を拭うように去っていく。


重たい胸、何かが上にある感触。


体に力を入れて、座る体制に成る。

前の景色も変わらない、ただある森。


ふいに喉に違和感を感じる。

「コホッ、 コホッ」

咳きこむ声が、高い。


己は女の様だ。


足には何も履いていない。

ただ、布切れだけを体に羽織っていた。


彼女の周囲は彼女の出す力によって、全て消し飛んでいた。

白い点の様な、彼女の周りのはクレーターの様に御碗型になり、その周囲は森で囲われている。

彼女の出した謎の衝撃に違和感を感じた動く物は全てどこかに消し飛んでいた。


その"未開の森"の出来事は周囲の住民に恐怖を感じさせる。

そして、物語が動くのだ。



脚に、手に力を入れて立ち上がる。

喉が渇いた。

「コホッ、 コホッ」

また高い声で咳が出る。


左手に出るピンに入った水が現れた。便利な世界の様だ。

"世界?"頭がまた若干痛くなる。

だがすぐ引いていく。


土が脚の指の間に入ってザラザラしている。気持ち悪い。

脚に茶色のブーツが現れる。

これで歩ける。


布がバタバタして肌にくっ付く。少しうっとおしい。

布のズボンと、布の服が現れる。

これで遠くまで行ける。


そのまま歩き続けるが、あの森は遠い。


「はぁ、 ここはどこなの。」

自然と出た言葉は女の声だ綺麗な声だ。


そのまま2時間は歩いただろうか、急に現れる森、背丈ほど草木が生い茂り土は見えない。

だが歩けないほどでは無い。


木の幹は太い、とても手を回せそうにない。100mはあろうか巨木がず奥まで続いている。

その森は生い茂った木によって光を遮られ薄暗い。

その不気味なまでに静かな暗い森の中へ入っていく。


生い茂る草木をかき分けながら、ただひたすら進む。

カサカサと言う私が進む音と、木の葉が風に揺られる音が永遠に続く。


途中倒木があった。背丈を超える倒木。

避けて行っても良かったがすごい遠回りだ。

乗り越えるのは"大変だ"と思いながら、向こうを見ようとジャンプする。


そのまま倒木の上までピョンとジャンプ出来た。

この高さからは風景は草木が足元の高さまで来ただけで何も変わらない。


「なんなのよ、どこまで続くの。」

愚痴が出た。


まだガサガサと歩き続ける、5時間ぐらいした所で "ザー-" と水の音が遠くで聞こえた。

初めての別の音に嬉しくなる。


「水の音よ!」


その方向に向かって全力で進もうと、足に力が入る。

"シュッ" 周りの景色が高速で流れる、目の前に現れた小川。


”止まれ"

靴が地面を踏みしめると、何もなかったかの様に止まれた。


後方を見ると、あの身の丈ほどの草木が割れている。

その割れ目の終わりは見えない。

風がその方向から流れて来た。


地面を蹴り上げ高速で移動した彼女。

"ドッ"

その力を受けた地面は大きくえぐれ、小さなクレータを作っている。

風で草木が押し流され、その長い長い道を一瞬で作った。


"飛んだの?"ふとそう思う。

今までの歩きは何だったのか。

「はぁ・・・」

ため息が出た。


服は出た物の、先ほどの土の不快感が消えない。

目の前の川は、綺麗そうだ。

このまま入ってしまおう!


目に入った水流く水が溜まっている所まで"飛ぶ"

そこで服を脱いで水に入る。


ひんやりして気持ちい。

改めて自分の体を確認する。

長い手、長い脚、この胸も大きい。何故がうれしく成る。


水面に自分の顔が映る。

白い髪に赤い目、そして整った顔が見えた。


長い眉毛に、きりっとした目、鼻は筋が通り高い。

ハーフの様な深い顔の大人の女性がそこには居た。


これが私の顔か。まじまじと見つめてしまう。

なんだかいい気分だ。


それからずっと浸かっていた。時間なんて解らない。

この体はその水から寒さなどを感じない。

私の髪が綺麗な川をサラサラと流れている。

でも、ずっとこうしている訳には行かない。


立ち上がり、裸だった事を思い出す。

急に周りの気配が気になった。

気配を探るがやはり何も居ないようだ。

動いている物が居ない。何故か解る。


服を着ようとして、濡れている事に気が付く。

何か無いかと思った時、水滴が勝手に飛んで行った。

サラサラした髪が風に流される。


やはりこの世界は便利だ。

あの頭痛は来なかった。


服を着て、飛んで移動する。

目の前に木がある。蹴って方向を変えようとする。

"ドォン! ベキィ! ベキィ! ベキィ!"

折れた巨木。そのまま倒れてしまった。


「この木意外と脆いのね。」


次からは力加減を注意して進もうと決めた。


弾丸の様な速さで飛ぶ彼女。木に足を付けると、その木が衝撃を受け砕ける。

その衝撃波で周りの木々が揺れる。


巨木は支えを失い、周りの木を支えを受けるが止まらない。

そのまま地面に伏した巨木。

その振動に周辺の住民は何かが"未開の森"で暴れていると恐怖していた。



木と木を蹴って飛ぶ。その疾走感が気持ちいい。

木々は流れ、草木は私の進行方向から避けていく。


だんだんやっている内にコツがつかめて来た。

最初何度も木を折ってしまったが、力を流すようにすると折れなかった。


止まらない疾走感。

「アハハハ!」

笑いながらそれを楽しんでいた。


彼女が木を蹴る度、衝撃波が周辺を襲い、森を揺らしている事を彼女は知らない。


移動している度に上がってくる高度。上に行けば何か見えるのではないかと気を蹴って上に飛んでみる。

木の枝も私を避けてくれる。


上空に紫の空と赤い丸が見えた。そして開ける視界。

奥の方に何やら村らしき開けた土地を確認する。


「なにか居る!」


弾丸の様に駆け抜ける彼女は突然上を目指すと、木の5倍程度の高度まで飛び出す。

不自然に長い滞空時間。そのままゆっくりと白い髪を靡かせまた弾丸の様に森を駆けていくのだった。


また疾走モードに成った。

木が草が後ろに流れていく。


周囲から生物の音が聞こえる。

ガサガサと動く音、何かの鳴き声。

この世界に来て初めての音に嬉しくなる。


一番近くに有った"ガサガサ"にそのままの勢いで突っ込んでいく。

そこには自分の目の様な色の赤い蛇が居た。


彼女の脚元に居る小さな蛇、その全長は10cmも無い。

赤に褐色のストライプの警告色をしている。

毒を持って自分を守っている、細い弱い存在・・・。

そんな蛇が首をもたげ、彼女と対自する。

弾丸の様な風圧に、周囲の草が開け、突然現れた彼女に蛇は固まっていた。


私と一緒の赤い目。

クリクリした目でこちらをじっと見上げ、ピンクの舌を出したまま止まっている蛇。


よく見ると顔は怖い立派な蛇の顔をしてる。

何故だか動かない。


「怖がらなくていいよ?」


しゃがんで出来るだけ視線を合わせてみる。


チロチロと動き出す舌。威嚇をするわけでも無ければ、飛びかかって来る様子も無い。

そのまま時間が過ぎる。


別のガサガサが近づいて来る。

そのガサガサの方を見て、"シャァァ!"と威嚇するその赤い蛇。

小さいけれど立派な牙が見える。


何か脅威が来るようだ。


現れた真っ黒なネズミ。その大きさは頭をもたげた蛇の2倍はある。

ネズミは私を見ると固まっていた。


「喧嘩はダメよ?ネズミさん。」


"チュウ”と鳴いて、ネズミは逃げて行った。

大きな私にびっくりしたのだろう。


再びこちらを見てくるその小さな蛇。


「じゃぁ行くね。気を付けるんだよ。」


動かない蛇の頭を指で撫でる。

すると、ニョロニョロと私の腕を上がってきた。


「一緒に行ってくれるの?」


そう聞くが、蛇だ喋らない。

なんだか、かわいいこの子一緒に連れて行きたくなる。


「ちょっと、くすぐったいって」


服の中に入ってきた蛇は、私の肩で蜷局を巻いた。

その頭を若干もたげ、また舌をチロチロしている。


「ふふふ、可愛いわね貴方。 でもそこじゃ吹き飛んじゃうよ?」


そう言うと、その蛇が飛ばないようにお腹の辺りに入れてあげる。

動かなくなった蛇、そこで安定したんだろうか。


「じゃぁ、行こっか!」


そう言って、新しいペットと共に森を駆け、爽快感を味わうのだった。

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