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底から  作者: ぼんさい
13/98

魔界編 ススカ 3

こうして見回している間にも私達を邪魔そうに避けて出入りする魔人達。


「どこの奴隷だよ。」


その言葉にルルちゃんが反応して手を握りしめている。



コンコンと鳴る鉄の床を買い取りの方に進む。

二人もついて来る。酒場とは逆に誰も居ないカウンター


ずっと鱗を見つめていた角刈りの男がこちらを見た。


「どこの奴隷だ。」


「奴隷じゃないわ、これ買い取ってほしいの。」


「背中見せろ。」


「背中? なんで?」


「確認だ、奴隷じゃないなら見せろ。」


仕方なく後ろを向いて、布のシャツをめくる。

セリカが顔をしかめていたので、笑顔で返しておいた。


「ほんとに違うんだな。その牙か?」


「そうよ、買い取ってくれる?」


ルルちゃんがカウンターにレッドドラゴンの牙を片手で置く。

少し凹む鉄のカウンター。

もう片方でセリカが割った牙を、置いた。


「角なしなのに魔法使えるのか? まぁいいか。」

訳の分解らない事を言い出す男。


両手でその掛けた牙の断面を見ている。


「おまえらこれを何処で手に入れた。」


顔一つ変えない男、私を見て言ってくる。


「なに、言わないと買い取ってくれないの?」


「いや、そんな事は無いんだが……」


そういってカウンターの引き出しを開ける。

金銀銅のコインが見えた。


「ちょっと、待っとけ。」


そう言うと忙しそうに草を分けているスケルトンの奥で棚を開けてゴソゴソしている。


「気に食わないね、背中見せろってのさ。」


「確認って言ってたじゃない、仕事よ。」


「主、よく怒らないでいられるねぇ。」


「セリカが怒りっぽいだけよ。」

ケラケラ笑うセリカ。



喋っていると男が戻ってきた。


両手に大きな皮の袋を持って居る。


「綺麗のが700だ、割れてるのが300。計1000」


それだけ言うと、2個袋をカウンターの上に置く。


「500づつだ、確認するか?」


「いいわ、それよりステータス見たいんだけど、それもお願いできる?」


「ステータス? お前らステータスも見てないのか。 ステータスは新規だ。」


新規の女魔人の方を見る。


「おい! スレイ!」

大声で名前を呼んだ、あの女魔人はスレイと言うようだ。


「何? ダン!」

女魔人が叫んで返す。


緑の大男はダンと言うようだ。


あのサキュバスはうるさそうに耳を手で押さえている。


「ステータスだ! 3人持ってこい!」


「こっち来てよ! あれ重いのよ!」


また私に顔を返すダンと呼ばれた男。


スレイと呼ばれた女の前に行くのだった。


「ステータスですね?一人、1万Gに成りますよろしいでしょうか。」


さき貰った袋をセリカがカウンターに置く。

そこから3枚金貨を取り出すスレイ。


「ではこちらに成りますね。 うんしょ。」


重そうに透明な板を取り出すスレイ。

それを3回、乱暴にカウンターに置く。


「それを、両手で持つか、口で咥えてください。1分ほどしたら出てきます」


それを手で掴もうとした時、スレイに言われる。


「重いですよ…… 角なしさんですけど一応説明をしておきます。

冒険者ギルドに入るにはそのステータスを開示していただく必要があります。

入らなければ、見せていただかなくて結構です。」


「冒険者ギルドに入るとどうなるの?」


「入るんですか!? えっと、買い取りが1割増しに成って、ランキングに載れます。」


「ランキングに載るとどうなるの?」


「はぁ、角なしさんは無理だと思いますよ。指定依頼とかが来ますね。」


「そうなの、ありがとう。あの掲示板の依頼を受けるにはどうしたらいいの?」


「受けるんですか!? 紙を持って、ローズの所に、総合の受付にいって貰えれば大丈夫です。」

あのサキュバスはローズと言うようだ。


「そうなの、ありがとう。考えとくわ。」


「はぁ、角なしさんは無理だと思いますよ。」


そう言って、片手で3枚持ったクリアの板をセリカとルルちゃんで分ける。


時間が掛かりそうだ、馬車に戻ろう。


ヒョイと3枚一緒にステータス板を持ち上げた魔人に、少し固まるスレイであった。




コンコン鳴る床を戻る。


相変わらず酒場は大盛り上がりのようだ。


両開きの木のドアを開けて、ヒヒの馬車に帰る。


何故か固まって、何も言わないヒヒ。

不愛想になっちゃったのかな?


先に座ったルルちゃんと私。

最後にセリカが乗ってくる。


ドン!と座ったセリカ。その顔は怒っていた。

ヒヒが何も言わないわけだ。


「角なし、角なしって、なんなのさ、消し炭にしてやろうかね。」


「セリカねぇさん、この世界じゃ仕方ねぇぜ。」


「世界ごと滅ぼせばおわるのかね。」

手に持って居るクリア板にヒビが入っている。


「冗談きついぜ、牙はどうだったんだぜ? 金に成ったか?」


「1000とか言ってたわね。」


「1000!? 外れで良けりゃ、壁の内側で家が買えるぜ。」

家が買える金額みたいだ、結構いい金額だった。


「こんな街いらないねぇ。」


「そんな事言うなよ、セリカねぇ。」


「あんたも仲間かい? 消されたいのかい。」


「勘弁してくれよ、セリカねぇさんよぉ。」


「メランさん… メランさん……」


ヒヒとセリカが話しているのを割って、ルルの泣いた声が聞こえてくる。


横でクリア板を見てルルが口に手を当てて泣いている。


ステータスに何かあったのだろうか。


「どうしたのルルちゃん、何が書いてあったの?」


「あいつらなんか仕込んだのかねぇ!」


「あの… わたし… わたし…」

もっと流れ出す涙、いったいなんだ、本当に何か仕込まれていたのか。


「プチデーモンじゃなく成ってます!」

私の胸に飛び込んでくるルルちゃん。

その黒く変色した板には赤い文字でこう書いてあった。



---------------


ルル


ニュイデーモン


体力量 : S-

魔力量 : SS

力   : S-

防御力 : S-

魔力  : SS


---------------


"ニュイデーモン"種族だろうか、確かにどこにもプチデーモンとは書いてない。

これを見て泣いてたんだ、よかったねルルちゃん。



私のは白く染まっていた、赤文字でこう書いてある



--------------------


メラン


???


体力量 : 6S

魔力量 : 7S+

力   : 6S+

防御力 : 6S+

魔力   : 7S+


---------------------


???ってなんだろう、私は何者なんだろうか、種族が???

そもそもこの数値は高いんだろうか。


SSのルルちゃんの方がすごそうだ。



「主、私もの出たよ。」


セリカの板は真っ赤だ。薄い赤の文字が見ずらい。




--------------------


セリカ


黒赤龍※


体力量 : SS-

魔力量 : S+

力   : S+

防御力 : S+

魔力   : S+


---------------------


やっぱり蛇じゃなくて龍に成っているセリカ。

※は何だろう、よくわからない。


でも、全体的にルルちゃんより良さそう、でもやっぱり基準が分からない。



「どうだった?セリカねぇさんなら、Aとかあったりしてな!」

馬らしく鼻を震わせて笑うヒヒ。


「ねぇヒヒでどれぐらいなの?」


「俺か?俺は一番高いのでE-だっけか。」

Eなんて無い、あんまり参考に成らない。


「E-って"マイナス"はなんなの? "プラス"と何も無いのと"マイナス"があるんだけど。」


「プラス、何も無し、マイナスの順に高いんだよ確か、教会だと数字とスキルってのが出るんだぜ?」


「そのヒヒのE-ってのはどれくらいなの?教会だと数字出るんでしょ。」


「聞いて驚け、俺のは体力量10もあるんだぜ、すごいだろ!」

自慢気に話すヒヒ鼻がブルンブルン言っている。


「ヒヒや、Sってのは何なんだい?」


「確か、ルシファーがS-ってのを持っるって聞いたぜ、あの魔界最強の男がS-を一個持ってるんだよ、1000だぜ1000。」


「EとかSとか、そもそもどういう基準なのよ。」


「ギルドのは記号しか出なくてあんま使わないんだが、GからSまで上がって行くんだぜ。

確かベルゼブブがA+ってのを持ってたはずだ。」



「私S-3個あるんだけど壊れてるのかなこれ。」


「おいおい、ルルねぇさん、そんなウソついてもなんもなんねぇぜ。」


3人で馬車を出て、ヒヒに見せてあげる。

固まるヒヒ


「ちょっと、馬車に戻ってくれ。」


「なんでだい?ここで良いじゃないのさ。」


「ダメなんだよ!周りに聞かれると良く無いぜ。」


仕方なくまた戻る、やっぱりヒヒは少しいじわるに成っているんだ。


「まず、SSってのはわかんねぇ。わかんねぇけど、ルシファーがS-だ。

さっきの法則で言うとS+を持ってる、セリカねぇさんは確実に上だ。」


「私がかねぇ、実感沸かないのさ。」

頭をポリポリ掻きながら珍しく普通に座っているセリカ


「でだ、ルルねぇさんもS-3個持ってるんだ、ぜってぇルシファーよりつええぜ」


「私? ルシファーより強いの? うぅぅん。」

顎に手を当てて、首をかしげているルルちゃん。

魔界最強より強いんだって、良かったねルルちゃん。


「最後にメランねぇさんだ、全く分かんねぇなんだよ、7Sって何の記号だぜ。」


「知らないから聞いてるんじゃない、冒険者ギルドに聞けばわかるの?」


「ダメだ、絶対やめとくんだぜ。 騒ぎ処じゃすまねぇんだぜ。」


「そうなの、でもこれじゃ分かんないじゃない。」


「まだ続きがあるんだ。」

小声で話しだすヒヒ


「セリカねぇさんの種族、黒赤龍※って書いてあるだろ? 俺も噂話しか知らないんだけどよ、

昔魔界の半分を焼いたって言われる黒龍に※付けたって聞いたことあるんだ。」


「その※ってのは、結局なんなんなのさ。何のために付けたのさ」


「※は、世界を滅ぼす可能性があるんだって噂なんだぜ。 その為に現れたら魔王全員で倒しに来るんだぜ。」


「なんだい、私たおされちまうのさ。」


「全員で戦っても勝てるか解らないから、触るなって意味らしいぜ。 そんなの冒険者ギルドに持って行ったら、ぜってぇぇ偉いことになるぜ。」


「私、本当に世界滅ぼせるんだねぇ。」


「セリカねぇさん、もう冗談になってないんだぜ。」


「メランさんがセリカより低いとかあるんです?」


「ないねぇ、主の方が高いハズだねぇ。」


「一緒に滅ぼしましょうか、セリカ」


「主、わかってるねぇすぐにでもやるかね。」


「私も手伝います!」


3人で笑いながら話す。

とりあえず、何かに襲われても大丈夫そうだ。

今度は仲間を失わないで済みそうだ。





冒険者ギルドの酒場からじっとメラン達を見ていた集団が居た。

牙を持っている彼女達、角なしだ。

なんて美人なんだ、釘付けになる。


買い取り受付に行き、換金している。

ダンがレッドドラゴンなんて言っている。


角なしが、あんな化け物倒せるわけが無い。


ずっしり重い金貨を受け取った彼女達。


そのまま横に行き、スレイからステータス板を買っている。


どうせ全部Gだ、F+の俺らに勝てるわけない。


そのままステータス板を持って出て行った、

生意気な奴らだ、金も俺等の何倍ももっているはずだ。


酒場の会計をして仲間と一緒に立つ。

扉の出た所に居た奴に話を聞く。


あの馬車に居るのか。

なんだがあのオバロンデカイが、それだけだ。


そして、あの角なしの女を奴隷にしてやろうとする冒険者集団が、冒険者ギルドから出る。


後ろから、武器を持って出た彼らが角なしをやるんじゃないかと、野次馬も冒険者ギルドから出て行った。




「おい、あの馬車だろ。 見てたやつ居るんだよ。」


「どこからレッドドラゴンの牙なんて盗んできたんだ。 角なしの癖によぉ。」


「美人だって話だぜ、懲らしめるついでに楽しもうぜ!」


「いいねぇ! 角なしらしく床に叩きつけてやるぜぇ!」


「あいつらには、地べたがお似合いだよなぁ!」


ギャハハハと笑う魔人達。


肌の色がバラバラの魔人達は全員人型で角を生やしている。


鎧や皮の服に身を囲んだ彼等は、

手に剣や斧を持ってこちらに向かってきている。


セリカが無言で馬車を出て行った、髪が逆立っている彼女。


私も、そろそろ良いかなと思えて来た。


「おぉ、胸でけぇ。 なんだ自首しにきたのか。 もう遅いぜ。」


無視してテクテクと彼らの前に出ていく彼女。


8人いる彼等、彼女を完全に囲って、武器を構えている。

ギルドの入口の方は、色んな魔物がヤジを飛ばしていた。


肩を鳴らしながら武器を持つ手の準備運動をしている。


「おい! 角なし! どっから持ってきたんだよあの牙。」


「誰から、盗んだか言えよ!」


「俺達が成敗してやるぜ!」


彼女の身体から赤い魔力が可視化できるほどに溢れてくる。


「セリカねぇ、ダメだ! 抑えてくれ!」

ヒヒが叫んでいるが、彼らは止まらない。

セリカも止まらない。


「教えてほしいのかね。 そうかね。 そうかね。 相手してくれや、雑魚の角ありさんよぉ。」


背の高い彼女、見下ろされた形に成り、上から放たれる彼女の言葉に激昂する彼等。


彼等が武器を手に彼女に襲い掛かった。

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