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底から  作者: ぼんさい
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魔界編 ススカ 2

高炉を中心に西門と東門まで走る大きな道。

北門と東門を通る道は街道同じ幅。


その街道と同じ幅の道路が高炉を囲うように円状で10個は並んでいる。

門とは関係なく高炉からまっすぐ壁まで放射状に延びる道の幅は様々で無数にある。

それ以外の道はその間に迷路のように入り組んでいる。


高炉の北西、高炉と壁の調度真ん中あたりにある教会に一行は着いた。




教会の前に着くと誰も居ない。

門が閉まっていて、張り紙がしてある。


その境界は両側に小さな塔、真ん中の建物は両側の塔より大きく、街の門と同じ大きさの木で出来た門が目を引く。

その前には広い馬車留めがあり、そこにヒヒが入って行く。


「珍しいな、教会が閉まってら。」


馬車留めを掃除している黒い服を頭まで被ったシスター風の女性。

鉄でボロボロに成った塵取りには、赤茶色の錆びがてんこ盛りに成ってる。


「なんで教会が閉まってるんだ?なにかあったのかあんた。」

そのシスターに聞くヒヒ。


「神託が止まってしまったのです。ステータスが見れなくなってしまいました。」


「どういう事だよ、そんな事今まで無かっただろ?」


「私共も初めてで…… 神界に何かあったのでしょうか。」


掃除をしながら話すシスター。ステータスは見れないようだ。


「もしお急ぎなら、お金を払えば冒険者ギルドで見れますよ。」


「冒険者ギルドのはあれだろ、精度の悪い奴。」


「数値は見れませんが、種族は解りますよ」


「ねぇ、ヒヒそれで良いじゃない、行ってよ。」


「ヘイヘイ。 冒険者ギルドは南門だぜ、結構かかるりますぜ?」


「良いわよどうせ、暗く成らないんでしょ。」


また街道に戻り進む。

赤い丸が見える紫の空


似たような風景の道を歩き続ける。

人通りが減ってきた。


「ヒヒや、あの高炉ってのは何なんだい?」


「あれは、鉄を溶かす炉ですぜ、ススカの中心なんだぜ。」


「へぇ、そうかい鉄を溶かすのにあんなデカイのが要るんだねぇ。」


調度近づいて来る高炉、鉱石を詰んだ馬車がひっきりなしに中に入って行く。

暑いのか建物自体が陽炎に揺れている。石畳も陽炎に揺れていた。



真下まで来ると、煙突が空まで届くような高さだ。


赤い月の時間なのに、周辺はトンカンが止まらない。


高炉の周りは広場のようになっており、馬車が縦横無尽に走り回っている。


「ここが高炉ですぜ、熱が漏れて伝わってくるぜ。」


「あんまり伝わって来ないねぇ、こんなもんかい。」


「セリカねぇさんの火と比べちゃいけねぇぜ。」


「そうかい、メランに教えてもらったからかねぇ。」

あの街道で火を吹く練習をしていた小さな頃のセリカ、確か最後の方青い炎を吹いていた。


しかし私も何も感じない。よこのルルちゃんはうつむいてしまっている。


「ルルちゃん熱いの?大丈夫。」


「ルル、体どっか悪いのかい?ずっと元気ないさ」


起きてからあまり体調が良くないのか、元気のないルルちゃんに、セリカも心配のようだ。

目と眉が下に下がって心配そうに声を掛けている。


「いえ、体は良いですし熱くありません。 ただ…」


「「ただ?」」


「ステータスの事を考えると、また奴隷に成っちゃうんじゃないかって。」


「ルルが奴隷? そんな事心配してたのかね。」

太ももを手でバシバシ叩きながら笑うセリカ。ゲラゲラ笑っている。


「あの…… 俺もそれは無いと思うんだぜ。」


「でも、種族が解ると奴隷にされちゃうんです。」

前のめりに成って、セリカに説明するルル、目が真剣だ。


「ないよぉ、そんな事。 どう見たってそこら辺の奴よりルルの方が強いのさ。」

ゲラゲラが止まらないセリカ。


「俺、ルルねぇさんに消されると思ったんだぜ。」

歩を進めながら後ろを向いて話すヒヒ。


ルルは真顔で固まっている。


「そうなんですか?奴隷に成らないんですか?」

動き出すルルの時間、少し嬉しそうな顔


「そんな事あったら、私がこの街滅ぼしてやるのさ。」

笑いながら目を光らせるセリカ


「しゃれになんねぇから、止めてくれや、セリカねぇさん」


「ルルちゃん、大丈夫だよ。私達仲間しょ?」


「はい! ありがとうございますメランさん!」


元気なルルちゃんが戻っていた。


4人でワイワイ話しながら高炉を背に冒険者ギルドに向かう。

冒険者といえば、あの灰色の角あり共だ。


あんな男達がトップを張っていた冒険者ギルドという組織。


また、壊してしまいそうで怖い。



そうしている内に賑やかな鉄の箱が見えて来た。


周囲より広く平べったい建物、

その建物に"冒険者ギルド"と木の看板がくっつけてある。


その前に沢山止まっている馬車。


空いている所を見つけ、ヒヒが止まる。


「そういや、金どうするんだぜ?」


「お金? 本当にヒヒ持ってないの?」


「厩舎に戻ればあるが…… 忘れてたんだぜ!」


睨むルルとセリカ


「じょ、冗談だって! 馬車の中になんか魔獣の部位落ちてねぇか?」

あんまり見てなった馬車の荷物、樽やら木箱やら一杯詰め込んである。


「それ見つけてどうするのよ。」


「魔物の部位は売れるんだぜ、なんか持って行けばギルドが買い取ってくれるぜ。」


「そうなの、早く言いなさいよ。」


ルルとセリカが奥の荷物を漁りだす。


樽を片手で持ち上げて、もう片方で鉄の箱を軽そうに持ち上げるルルちゃん。


木箱を指で破壊しながら、中身を確認するセリカ。


バキ!ドス!バキ!と馬車の中が賑やかに成る。


その音に気付いたのか、周りの馬車を引いている魔人達がこっちを見る。


「おい、ヒヒじゃねぇか戻ってたのか、灰色の剣の仕事終わったのか。」

近くに居たオロバスが馬車ごとヒヒの前にやって来る。


「あぁ、一応な。」

そっけなく返すヒヒ。


「他の奴はどうした? 4匹居ただろ。」


「すまんな、"どじ"ってな、死んじまったよ。」


「そうか…… お前またでかく成ってないか?」


世間話を始めるオロバスとヒヒ。


まだ馬車の中では破壊が続いている。


鉄の箱を粘土のように引き裂いているルルちゃん。

誰も彼女を奴隷にはできないと思う。


あの私の攻撃で死んだオロバスの事だ、後でヒヒに謝らないと。



「こんなんしかないねぇ。」


セリカが奥にあった荷物を全て粉々にして、牙2本を持ってきた。

両手で抱えるような大きさの牙、象の魔物が居るんだろうか。


「それ、レッドドラゴンのだぜ。高く売れるぜ!」


荷物が無くなり、前が開けた事で馬車の中からヒヒの顔が見える。


「こんなのが高く売れるのかい?」


片手でクシャっと一本の牙を折ってしまうセリカ。


「セリカねぇさん、お金貰えなくなっちまうぜ。」


「あぁ、そうかね、すまないねぇ」


逆側ではルルが、鉄の箱の残骸を手でつまんで引き裂いていた。


「こんなに脆かったかなぁ、これ。」


何も言わないヒヒの真っ赤な球体の目が、ルルを見ている気がした。



西部劇のような観音開きのカウンターこれだけ何故か木だ。

そこから頻繁に出入りする色々な魔物達。


皆鎧を着こんだり、大きな剣を背中に背負って居たりする。

そういういえば、灰色の角ありが、気の杖を持って居たような気がする。


同じような気の杖を持って居る骨の人が居た。


あのヒールの高い鎧が欲しいな。などと見ていると、

刀を持った犬頭の魔人が目に入る。


"刀"

頭が痛くなる。


「大丈夫か主。」


「えぇ、大丈夫よ、行きましょ。」


セリカが声を掛けてくれた事で頭痛は止まった。



ヒヒは入れないので3人で中に入る。


セリカは牙を壊してしまうのでルルちゃんが持って入った。


中に入ると鉄の壁、鉄の天井に鉄の床。

その壁にまた鉄の大きな掲示板。そこに磁石で紙が沢山張り付けてある。

ランプに照らされたその掲示板を何人かの魔人が見ていた。


横にある縦長の掲示板に<<ランキング>>と彫ってある。

一番上に<灰色の剣>と書いてあった。

あいつ等本当にトップだったんだ。


入って左側は酒場なのだろうか、

地面に固定された鉄の机を囲んで、多くの魔人達が楽しそうに酒を飲んでいる。

椅子も鉄だ何も敷いていない。


緑色の小さい人型の魔人が頭に商品を乗せて、奥のカウンターから出て忙しそうに配膳している。

コブリンだろうか、初めてこの街で見た。腰に巻いた布だけで裸足で駆けずり回っている。


カウンターには大きな牛男スーツを着てがグラスを磨きながら、正面に座る同じぐらいの大きさのトラの客と話をしていた。

あのトラは肩幅が大きすぎて、2席分占領している。

鉄の椅子が折れそうだ。


横で静かに座る、動物の頭をしたスケルトンの彼女は、何か青色の気体の様な物を口に運んでいる。

そのスカートが彼女を女だと気付かせてくれた。



右側には上に<<受付>>と書かれた鉄板が天井からチェーンでぶら下がる。

壁一面の長いカウンター。

3人の受付が居た。


入口側の右側では、新規と書かれた鉄板がカウンターに張り付けられている。

直立する女魔人。茶髪とまとめてポニーテールにしてウェイターのような格好だ。

髪と同じ色の目をまっすぐこちらを見ていた。

肌色の彼女、一見人間のようだが、その額には立派な黒い角が生えている。


真ん中には同じように総合と書かれた鉄板が張り付けてあった。

サキュバスの女が受付羽と手を伸ばして、ピンク色の髪をだらしなくカウンターにのっけている。

大事な部分しか隠さない布切れみたいな服。

同じ色の目が魔力を発しているのが分かる。あくびをして涙目だ。



左の隅に買い取りと書かれた鉄板。


そこにはあの守備隊長にも劣らない大男が座って腕を組んでいる。

角刈りの緑の髪、緑の目は手の平に収まりきらない鱗をじっと見つめている。

立派な黒い角を3本生やした黒い肌の男は、ピクリとも動かない。


各受付の後ろで山積に成った書類や草を分けている骨の男達。


私達はステータスを確認する為、冒険者ギルドに着いた。

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