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底から  作者: ぼんさい
11/98

魔界編 ススカ 1

10mは積まれた高い石壁、それを超える煙突が立ち並び黒煙を吐き続けている。


煙突はどれも、鉄がむき出しで赤く錆び、所々焦げたように黒い。

木組みの足場がある煙突は建てたばかりで鉄色に輝く。

また下の建物同じように錆びで黒赤と鉄色がごちゃに成っている。


石畳の道路は錆びを被って赤く変色してしまっている。


所せましと無秩序にそんな建物が並ぶ工業の街ススカ


彼女達の背丈の5倍はある大門の前に、メラン達は並んでいた。



横で私の肩を枕に寝ている黒髪のルル。

コテンともたれかかっている頭からサラサラと彼女の髪がスダレの様に流れている。


私の白髪と混じりる、綺麗なストレートの黒髪。本当にサラサラだ。


前で後ろの幌に頭を、これでもかと押し当てて上向きになり、イビキを掻いて寝ている赤髪のセリカ。

足は大股で開かれ投げ出され、腕を馬車の煽りと幌の間に投げ出しイビキを掻いている。


彼女の少しくせのある彼女の毛、ロングウルフヘアの髪型をした髪は馬車の振動と共に跳ねている。


私の新しい仲間だ。


"仲間" もう頭痛は来ない様だ。


プチデーモンだったルル。蛇だったセリカは、今は人の姿をしている。

何やら龍にまでなってしまったセリカ。


私は一体何者なんだろう。


考えると頭が痛くなってくる。


あの黒いレーザーの様な攻撃。

山まで吹き飛ばすその魔法の塊は、確かに私の手から出ていた。


この世界に来て、痛みも感じた事が無い。

この体はなんなのだろう。


痛くなる頭、

横と前で眠る彼女達を思い、ふと怪物の様な私を恐れていないかと恐怖がよぎる。

そんな事を考えながら、時間が過ぎて行った。



右側に森、左側に草原と続いて来た道は、途中森が途切れ、道が合流した所で急に交通量が増えた。


街道から離れた場所に、サイクロプスが一人、その後ろにプチデーモンが大量に飛んでいる風景。

その後ろに黒い尖った山脈から延びる道が合流した所で、周りは馬車と人で埋め尽くされる。


白い丸が見えるのもあるのだろうか、賑やかだ。



道行く人は、角の生えた人型の魔人が多い。

肌の色は様々で、緑、赤、普通の肌色も居る。

クルクルしている角や、額からまっすぐに伸びている角

色も黒や白、茶色など様々だ。


その中に、大きな一つ目サイクロプスや、2足歩行のイノシシ、小さい犬頭が2足歩行で歩いている。

手が異常に長い悪魔の様な見た目の者、顔が完全にヤギの人。

色々な形をした魔物が歩いていた。皆ガヤガヤと喋っている。


馬車を引くのも、大きな4足歩行のトカゲ、上半身が人の形をした馬、ヒヒより小さい角の生えた白い馬。

多種多様な者が重そうに様々馬車を引いてる。

ゴロゴロとした石を露天にして走る馬車、樽をこれでもかと敷き詰めた馬車、私たちの馬車の様に幌を張った馬車


彼等も皆話しながらどこかに向かっているようだ。



途中、後ろから上半身が人の形をした馬が迫って来る。


「役人馬車!役人馬車!」


と叫ぶその馬男に、道が開ける。

ヒヒも街道を外れ、路肩に止まる。


「ねぇ、ヒヒなんで止まるの?」


「あれはお偉いさんが乗った馬車なんですわ、前に出ると国軍に捕まってしまいますぜ。」


「そうなんだ、ふぅん色々あるのね。」


黒い高そうな箱型の馬車が通り過ぎると、道がまた人と馬車でごった返す。


石畳に赤い車輪の跡が目立ってきた時、周りの人々が足を止めた。


「今日はえらい並んでますな・・。」


馬車から身を乗り出して、前を見てみる。


高い石壁に、銀色と錆びた赤い煙突。その煙突からは色々な色の煙が出ている。


石壁の下にある門まで、ずっと馬車と人が並んでいる。

門でなにやら鎧を着こんだ大きいのや、小さい人型が馬車に乗り込み、横で馬車の主にサインしている。


「なんでも城に向かう途中の街道で、でけぇ龍が現れたらしいぜ。」


「それで、そんな混んでるのか。」


「それだけじゃ無いぜ、大鉱山が吹き飛んだって話だ。」


「なんだそりゃ、どういう状況だよ。このままじゃ大分待つよな、別の門に行ったほうが良いか?」


「東門は空いてるが北と南は閉まってる、どうせならこの大きい西門の方が早いぜ。」


馬車を引く馬男と他の馬が喋っている。

"龍"セリカの事だろうか。


城壁に沿って外側にも街道が続いている。

その周りにコンテナの様な四角い鉄の箱が大量に並んでいる。

大きさはバラバラだが、そこを出入りする人影が沢山。


彼等の話のように迂回する人だろうか、草原をショートカットしその道を抜けていく人影も見える。


「大きいお馬さん、にんじんは要りませんか?」


「すまいないな、今は金持ってないんだ。」


「そうですか……」


前を見てみると、ヒヒと小さい2足歩行の猫が頭に人参を乗せて話しかけていた。


「ヒヒ買ってあげなさいよ。」


「うわぁ、綺麗な魔人さんですね。」


「メランねぇさん、金が無いんだよ。」


「お金?」

そういえばお金を持って居ない。


「あんた稼いでんじゃないの、どっかにあるんでしょ。」


「依頼主が途中で消えちまってよぉ。」

口の奥の方だけ開けて歯を見せてくるヒヒ。


「なんなよ、文句あんの?」


「ね、ねぇです。はい。」

猫の魔人はどこかに消えていた。


「なんで止まってるんだい?ファァァ……」

大きく伸びをしながら、上の幌まで拳を埋まらせ起きるセリカ。

口から涎が垂れている。


「おはよう、セリカ。 ヒヒなんで止まってるの?」


「解ってなかったんですかい? メランねぇさん、門で検問待ちですわ。」


「検問かい?めんどくさいねぇ。」


「問題起こしてもめんどくさいでしょ、待ってましょ。」


「主がそう言うなら、いいさ」


キョロキョロ周りを見渡すセリカ。


「なんだい、一杯いるねぇ。」

それだけ言うと、また大股で脚を組んで、手を組み目を閉じてしまう。


周辺の魔人もおしゃべりに飽きたのか、足音だけが聞こえていた。




3時間は待っただろうか。

私も結構動いているが、ルルは起きない。


そして門までたどり着いた。


真ん中に設けられた錆び錆びの鉄板。

逆側は、街の外に出ていく人や馬車が流れている。


幅は街道より大きい、馬車が10台は通れるんじゃないだろうか。


長さも結構ある、この石積みの城壁は張りぼてでは無いようだ。

向こうの街並みは大きいイノシシ男の軍団で見えない。


次々と横に並んで入ってくる馬車に、両脇に並ぶ甲冑を着こんだ兵士の魔人が乗り込んでいく。


その周りで、甲冑の魔人が馬車の主と話をし、サインの書いた紙を渡していた。


頭の甲冑を外した、黒肌の茶髪短髪の男が近づいて来る。


私より頭一つ高いだろうかデカイ図体は鎧を着ていても隠しきれていない。

その顔の右側には縦に入った傷跡が印象に残る男である。

傷が通る目は義眼だろうか、白い球に斧が二つ重なったマークが眼球に入っていた。


額から前に2本闘牛の様な茶色い角が出ている。


その男が丸太のような手を揚げ、ヒヒに話しかけている。


「ヒヒじゃねぇか、元気してたかよ。なんかでかく成ったかお前。」


「ダンテか、ご無沙汰だな。色々あってな。」

知合いの様な二人、私たちの馬車には甲冑は乗り込んでこない。


「中まで来るなんて珍しいな。 今回は何運んでんだよ。」


「まぁ、色々な。」


「龍が出たとか、鉱山が消し飛んだとかで、検問強化しろって言われてんだよ。 ちょっと中見せてもらうぜ。」


此方を見て一瞬止まると、ノシノシと近づいて来る茶髪の男。


「なんだよ、角なしなんか運んでんのか? 3人女か。」


「上玉の商品だぜ、手だすなよ?」

セリカが前を睨む、若干冷たくなる空気。


「まぁ、なんだ、お前だしな、奥のはいいや。」

またノシノシ歩いて壁に居る甲冑に声を掛ける。


「おい、通行書出せ。」


「かしこまりました!守備隊長殿!」

あの男はここの責任者のようだ。


少し震えているヒヒの時間が動き出す。

「あ、あ、あ、ありがてぇぜ、ダンテ隊長よ!」


「あぁ、気を付けて行けよ、サタン領からの難民が止まらねぇ、東門には近づくなよ。」


「へいへい。」


ダンテと呼ばれた男が差し出す紙を口で咥えたヒヒが動き出す。


門を進む。

そこら中から、プシュープシューと蒸気の音が聞こえ、鉄を叩く音がうるさい程に、聞こえてくる。


あの紫の空が見え薄暗い門の中から抜ける。


鉄の出来た四角形の家が並ぶ風景、たまに新しいのだろうか銀色の家もあるが、やはり一部は錆びてきている。

そこに鉄枠の窓が見え、鉄を叩く振動だろうか震えている。


ごった返す道は錆びた鉄を受け、赤茶色、道行く馬車の車輪や人の靴裏も同じ色に染まる。

枝分かれしながら、ずっとまっすぐ伸びる先門から続く道には、ひと際大きな大きな箱に"高炉"とデカデカと書かれ、その上にある4本並ぶ赤茶色の大きな煙突は、モクモクと煙を吐き続けていた。


私はこの世界で初めての街、ススカの街に入った。




スグに左の城壁沿いに続く道へ入るヒヒ。


あのまっすぐの道ほどでは無いが、街道の様な幅の道を、パカパカとゆっくりしたスピードで歩いていく。


少しトンカンいう音が遠ざかると、喋り声で周りが賑やかに成る。

両側の建物は相変らず錆びているが、大きなガラス窓の中に防具や剣が飾ってある建物が続く。

どうやら、商店が並ぶエリアの様だ。


その一角に馬車が沢山止まっているエリアが見えた。

そこに向かって行き、止まるヒヒ。


「セリカねぇさん、勘弁してくだせぇ」

セリカは、まだヒヒを睨んでいた。


「売るのかねぇ、商品だって? 食ってやろうかこの馬。」


「方便ですって、マジで勘弁してくだせぇ!」

にやぁっと笑ったセリカは、その2本の牙を見せながらカチカチ口を鳴らしてる。


「そ、それで、どこに行くんです?」


「ステータスを見たいのよ、教会に連れて行って。」


「わかりやした!」


セリカの威嚇を無視するように、再び道の流れに乗るヒヒと馬車。

このままこの道を行くようだ。

セリカは飽きて周りをキョロキョロ見ている。


「鎧かねぇ、見てみたいねぇ。この服もきついのさ。」


「ススカの街は、鉄製品が有名だが、ミスリルの加工場もあったりして、武器屋と防具屋が多いですぜ。

他の領土からも買いに来ますわ。」


「後で、見てみるのも良いかもね。」


「主、話わかるねぇ。」

ケラケラ笑うセリカにヒヒはまだ体を震わせていた。


各店のショッピングウィンドを見ながら、3人であれやこれやと話して進んでいく。

この通りの脇道に、小さな剣や縦の看板を掲げた店がチラチラ見える。


表通りとは違って暗い脇道

そこに一店、刀の看板見えたのが印象に残る。


そのまま話しながら進み、途中で右に曲がって、似たような幅の道に出る。


建物は相変わらずだが、少し人通りがましに成る。

そのまま進み続けるヒヒ。


前にこの町に似つかわしくない白いレンガ造りの教会が見えてくる。

周りと違い丸い屋根は、周辺の建物より高かった。

その白さも赤茶色を被っている。


ふと今までずっと私に持たれかかっていた、ルルの頭が離れる。


「寝ちゃってました? この街並み……着いたんですね。」

目をこすりながら、寂しそうに言うルル。


「ルルちゃんおはよう、教会に向かってるの。ほらあそこ。」


身を乗り出してくるルル。

教会の方を見ている。


「着いちゃったんですね。」


みているルルが遠い目をしていた。

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