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底から  作者: ぼんさい
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プロローグ

机の前を永遠と流れる色とりどりの光、それをひたすら弾いている天使。

その机の数は永遠とも思える広さに等間隔に並んでいる。


その空間の真ん中に、今日も一人だけ暇そうな女が座っている。

ここの管理者のメーセであった。




「あ~あ、今日も何も起きないわねぇ。 さっさと終わんないかしらこれ。」

「メーセ様、本日の選別結果です。」


横から紙を渡してくる天使、その顔に個性は無い。

皆一緒の金髪、金色の目、奇妙なまでに白い肌。

あの男の趣味だ気持ち悪い。


「はいはい、いつも通りね。」


印鑑を押す。

私の机にある唯一の物、そして仕事。


それを、あの男の所へ持って行く天使。

私には返事も返してこない。


美の女神だった私。

存在する全てのから羨まれる存在のはずなのに、ずっと此処で仕事をしている。

この美しい顔、美しい体を褒めたたえる物は居ない。

ピンクの髪は手入れもしていないのに綺麗なままだ。


もう何十万年経ったのだろうか。

いっそ、どこかの魔界にでも落としてくれないだろうか。


全ては"あの事件"が原因だが、あの男には逆らえない。

全てを手に入れたあの男、他の神はただの奴隷と成った。


己を満たすために、私が消せないのだろう。

永遠に終わらない作業、永遠と続くこの空間。


今日も何億の魂をひたすら選別して、何万の世界へ放つ天使の報告書。

それに判子を付くだけだ。


老いも、衰弱も、無い私達に休憩は無い。



ただひたすらに同じ作業を繰り返す中、100年に一度の楽しみがやってきた。


「メーセ様、黒い魂が流れてきました。 今回もご自身でされますか?」

「えぇ、持ってきなさい。」


私の楽しみ、この仕事をさせられた最初の頃に、流れる一つの魂を天使が持ってきたのだ。

その濃い魂は他と比べて一段と白かった。

均衡を保つために絶望の世界へ放つ。


下界の物だ、100年ぐらいで帰ってくる。

濃い魂は目立つ、毎回持ってくる天使。

それを毎回、絶望の世界へ放つ。


何回も繰り返すうちに、どんどん黒く成っていく魂。前はいつだったか、吸い込まれそうに黒かった。

あれが帰ってきたのだ。


そのうち罵ってから送るように成っていた私。

今回も罵ってどこかの魔界へ落としてやる。


この空間の遠くからでも見える黒い魂を無表情な天使が運んでくる。


「メーセ様、こちらです。」


また吸い込まれそうに黒い魂。


「相変わらず醜い魂ね、今回も楽しかった?」


もちろん魂だ何も言わない。ただこれは何か震えるような反応を返してくれるのだ。

ここには無い反応、ずっと遊んでいたくなる。


ダメだ夢中になってしまった、そろそろ送らなければ、あの男に取り上げられてしまう。


「もっと苦しんで来てね。魂さん。」


そういうといつもの様に、苦痛の蔓延する世界へ弾こうとする。

だが、その時私の指に魂がくっついた。


「ねぇ、ちょっと、離れなさいよ貴方。」


弾かれない魂、その黒がこちらに私を手を包むように広がってくる。


「や、止めなさい!天使達!これを止めるのよ!」


あいつらは何の反応もしない、ただ黙々と自分の仕事を進めている。

こちらを見もしない。


そのうち腕を覆うように襲ってくる黒い塊。

あの男なら、なんとかするかもしれない。でもあの男に会うのは嫌だ。


考えている内に、もうすぐ顔の所まで来る。

あの男に助けを求める事に決めた。


何十万年とそこに居た管理者が居なくなった空間で、ただひたすら天使が作業をしていた。



王宮の謁見の間の様な空間、そこの一番高い所に美しい男が座っている。

その体を最低限隠した男は、右手に酒を、左手に天使の肩を抱いている。


長い階段に敷かれた赤いカーペット、何年掛かったのかわからない彫刻が刻まれた柱、綺麗なステンドグラスが光を放っている。

天井を見るとまた彫刻をほどこされた屋根、そしてシャンデリア。

階段の最上段にある王座に、足を大股で開いて座る男。

それが今では全てを手に入れた神、レウコンだ。


「お前も飽きて来たな、もうそろそろ別のにするか。」

「そんな! レウコン様もっと尽くしますので!」

「良い、もう飽きた。」


左手の天使を別の空間に飛ばす。

どこかの世界で生きているだろう、また作ればいいのだ。


左手の指を鳴らす。するとそこに現れる似たような天使。

他の神から奪った力で、生成するそれは毎回最初は良い反応をする。


「レウコン様、ありがとうございます。 お傍に居れて光栄です。」

「おう、有難く思えよ。」


遠い昔の"あの戦い"で勝利した俺は全てを手に入れた。

逆らう神は滅ぼし能力は俺の一部にしてやった。

そもそも多数の神が居る必要が無いのだ。俺一人で良い。


生意気な事に存在の強い神共は何度消しても、存在を吸いきれない。

各空間に飛ばし、ひたすら一人の状況で下働きをさせている。


最初は反乱もあった。

だがその力は、俺の前では何の意味も無く。ただ一部の能力を吸い取られるだけの神々。

何度も続けている内に、反乱は無くなった。


そして、その戦いを続けている内にその能力を俺は身に着けた。

益々要らなくなる神々。


だがそれを始末するのも面倒くさい。このまま好きなように過ごすのだ。


目の前に久々に神が転移してくる。

長い永遠に続く階段の下の方にに現れる転移前のモヤモヤ。

そこから、ピンクの髪の綺麗な髪が転移してくる。

右半分と下半身は黒い何かに、覆われかろうじて形だけ保っている。


あのピンクの髪は、メーセか懐かしい。この美の女神の力は、俺を魅力的にしている。


「レウコン! 助けてくれ! 何かに存在を食われている!」


その旧美の女神は、黒い何かによって急激に存在を食われていた。

もう半分以上は食われて、ピンクの髪はもう見えない。

黒い何かがメーセの存在を上書きしようとしている。


横の天使は俺の方を見て相変わらず嬉しそうに笑顔で立っている。

この人形はいつも最初だけだ。


「メーセ寿命だな。 諦めろ。」

「レウコン! 何を言うんだ! これまでずっと従ってきたじゃないか!」

「あぁ、あの時従わなかったがな。」

「お前、まだあの時の事をクソッ。」


俺が居れば、なんとか成るのだ。

こいつが居なくても能力は残る。

あの戦争の時、従わなかった神など、もっとどうでも良い。消えてしまえば良いのだ。


「レウコン! 貴様覚えてろよ!」


その黒い魂は、メーセの存在を完全に消していた。


「メーセを食ったか、お前。」


その黒い塊は長く続く階段のカーペットをその黒でどんどん浸食している。

まるで空間を食いながら、別の獲物を探しているようだ。


「もっとエサが欲しいのか、飛ばしてやるよ。」


メーセを見て、監視の女神を思い出した。

あの女神の力ももう持って居る。存在が邪魔だ。

こいつに消してもらおう。


左指を鳴らす。


監視の女神が消えれば、俺に全ての世界の情報が入ってくる。

最近何やらコソコソしているのだ。あの女神は。まぁどうでもいいのだが。


そこには、まだ拡大し続ける黒い魂が居た。

柱も浸食し、天井まで届いてる。目の前の物全てが、黒で覆われている。


左指を鳴らす。


だが、黒い魂は益々浸食を拡大している。

気付けば足元のカーペットまで来ていた。


"速い"必死で自分を別の空間に飛ばそうとする。

足に触れた、黒い魂は俺の移動を阻止する。


「おい! お前なんなんだ!」


左の天使はもう食われている。ただの黒い人影、すぐに崩れる。


太ももまで上がってくる黒い魂。音さえ吸収しているのか、何も聞こえない。


"ヤバイ"


久々の状況に、あの戦争の時、使った神器の指輪をはめる。

そして、俺を飛ばし、あの黒い魂をどこかに飛ばした。

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