059 桜花一閃
サクラは巨人の腕、胴、頭をまるで紙切れのように切断する。通常の生物であればこれで絶命をするのだが、巨人はそうではない。斬られた場所を何度も何度も繋ぎ合わせ、再生し、サクラにその巨大な腕を振り下ろす。その腕を再度サクラは斬り落とすが、効く様子は全くなく、まるでいたちごっこのように同じことの繰り返しだった。
「グオォォォオオオオ!!!」
巨人は咆哮を上げてサクラをその巨大な腕で叩き潰しにかかる。何度斬っても再生する腕を前に、サクラはこのままでは埒が明かないと回避をするしかなかった。
「……」
サクラは攻撃を躱しながら、巨人を観察する。過去のアンチコードの戦いでも巨人とは戦ったことがある。どんな相手も必ず切り伏せることができた。今回の相手もそれは同じであると思った。だが再生があまりにも早い。相手の弱点を未だに見つけられずにいた。
巨人はサクラを捉えられないことから、まずはその機動力を削ぐため、両手から何十もの触手を放ち、サクラを拘束しにかかる。
「手数に切り替えてきた」
この数は避けるより斬ったほうが早いとサクラは判断する。左腰にカウルソードを構え、コードを高める。
「フォトンスラッシュ」
白き一閃は空間ごと触手を全て切断する。巨人は瞬く間に全ての攻撃が塵と化したことに戸惑いを見せた。
「……ああ、そういうこと。巨人になったから見落としていたわ」
サクラは巨人を観察したことでようやく打開策を思いつく。一方の巨人は同じことの繰り返しでも実質サクラの攻撃を無効化している時点で持久戦に持ち込んでいればいずれ勝機があると踏んでいた。
「サクラ!僕たちも加勢するよ!」
サクラが珍しく苦戦していることから、そこにニルタ、タルタス、ノルフィ、アクセリアが加勢してきた。
「アリア、怪我をしてるなら下がってていいのよ」
「平気よ。十分休んだわ。それにレーイチが頑張ってるのに休んでいられないわ」
「……そう。足を引っ張らないでね」
「引っ張らないわよ。それよりサクラ、何か思いついたの?」
アクセリアは一刻も早くこの巨人を片付けてレーイチの応援に向かいたかった。
「ええ。この巨人は多くのアンチコードの集合体よ。なら、その全てを斬ればいいよ」
「……サクラってたまに頭おかしいことあるわよね」
「斬っていい?」
サクラはカウルソードをギラリとアクセリアに向けた。
「でもサクラならそれが出来るんだろ?僕たちは何をすればいい?」
「一秒でも止めて貰えればいいわ。あとは私が斬る」
「へ、なら簡単だな。このメンバーなら全員で止めれば五秒だって楽勝だ」
「私も手伝うわ、サクラ」
詳細は不明だが、ニルタ達はサクラの案に乗ることにした。
「分かったわ。良くわからないけどサクラなら何でもできるのは知ってるから私も手伝う」
アクセリアも渋々巨人を止める作戦に加勢する。
「グオォォォオオオオ!!!」
巨人は五人のゼドの隊員を前に威嚇の咆哮をあげると、叩き潰すべく両腕を振り上げた。
「行くぞ!みんな!」
ニルタの掛け声でニルタ、タルタス、ノルフィ、アクセリアが巨人を止めるべく動き出す。
ノルフィは先制してハンドガンによる射撃により牽制をかける。その隙にニルタは左腰にカウルソードを構え、コードを高め、振り抜いた。
「フォトンスラッシュ!」
白い飛ぶ斬撃の刃は巨人の頭に直撃するが、傷を付けただけに留まる。それに怒りを増した巨人は五人を叩き潰すために両腕を振り下ろした。だが、そこに赤い髪の少女と金髪の少年が飛び込む。
「「カウルスマッシュ!」」
左右の巨人の腕に強力な打撃が与えられ、巨人の両腕は両手を上げるような形となり、巨人は何もできない数秒の時間が生まれる。
「「「「サクラ!」」」」
サクラはカウルソードを左腰のホルダーに納め、そして抜刀の構えを取っていた。静止しているかのようだが、サクラには尋常ではない集中力とコードが高まっている。
巨人はサクラの姿になぜか恐怖というものを感じた。
そしてサクラの集中とコードが極限に達する。
「桜花一閃」
サクラの姿が消え、巨人の背後にサクラが移動する。
巨人は何が起きたのか分からなかった。次に斬られる前にこの剣士を叩き潰すと思ったその時、視界がズレた。何が起きたのかと思った時には体がボロボロと崩れ、その断面からは白い粒子が舞い上がっていた。
なぜ抜刀のサクラと呼ばれているのか。剣が抜かれたときには命が尽きている。まさにそれが今起きた出来事であった。




