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052 メインディッシュは噛みつく

「こっちはこっちで何とかする。無理はするなよ」


『ええ、レーイチもね』


 レーイチはアクセリアとの通信を切る。アクセリアからの通信を受け、レーイチは現状の整理を行う。


 レーイチはツトラードと対峙し、建物の屋根の上にいるアクセリア達はツトラーサが空間の出現させた見た目が足と手の生えた小型植物五体とツトラーサ本体を相手する形となり、数の差では劣勢であった。まさかの二体のリストクラスとの対峙。状況は最悪。アンチコードリストに載っている二体が現れ、目的はゼドの隊員。そしてもし敗北でもしようものならアクセリア、ノルフィの体を乗っ取ってゼドに入り込まれて内部から破壊される。初陣から随分と荷が重い任務だとレーイチは思ったが、負ける気は勿論無かった。


「屋根の上の方々には私の姉と仲間がお相手しますよ」


「なるほど、釣ったつもりが逆に釣られたわけか」


「理解のある方で助かります。これからあなた方は狩られる側です」


 不敵に笑うツトラード。レーイチはパーカーを通常の隊服に戻しながらカウルソードを構える。


 ピリピリとした緊張感が一気に漂う。


「事件を起こせば、やがてあなた方のような強いコードが現れると思ってましたよ。私達の好物なのですが、先に後ろの方達を前菜としていただきましょうか」


 しゅるりとツトラードの右腕が触手となって壁伝いに伸び、レーイチの背後にいる男達三人に強襲をかける。


 だが、レーイチは瞬時に真横を通る触手をカウルソードで切り返し、弾き返した。


 男達は目の前で何が行われているのか把握できなかった。だが、目の前の少年に助けられたことだけはすぐに理解した。


「そこの三人!早く逃げろ!次は冗談抜きで怪我だけじゃ済まなくなるぞ!」


 男達に振り向くことなく、レーイチはそう告げる。隙を狙ってツトラードの触手を伸ばすが、レーイチはそれらを次々に弾き返し、金属音が響き渡る。ここはもう戦場だった。


 男達は自分が今この場に居るべきではないことを感じ、そして無力感を覚えながらもこの場を逃げることにした。


「すまねぇ!助かる!」


 感謝の言葉を残し走り去る男達。レーイチは離れていく足音を聞き、ひとまずは心配事が一つ減ったことに安堵した。


「逃げられてしまいましたね」


「残念ながら前菜は無しだ」


「しかしメインディッシュは残っています」


「そのメインディッシュは噛み付くから気をつけろ」


 ようやく戦闘に集中できる状態となり、分散していたレーイチの集中力が一つになることで場の緊張感がより増していく。


(ツトラーサが身内ってことは、昼に使った俺のリメイク・カスタムのユニードがバレてると思っていいな。でも見られたわけではないから実際の威力、規模感は知らないか。ならまずはそのカードは伏せて注意意識を削がせるか)


 レーイチはそう思案する。勿論バレているユニードを使用して先手を仕掛けるのも手ではあるが、相手はアンチコードリストに載っている強力な敵。だが知っていることはそれまでで実力までは分からない。サクラやアクセリアに鍛えられているからと言って、実力が分からない相手にバレてはいるがまだ見られていないという残ったアドバンテージを捨てて最初から自分の手札を公開するのは対策を練られてしまうリスクの方が高いと思った。


(ユニードを伏せることで疑似的な二対一に持ち込む。代わりにカウルソード一本になるけど、さっきの一撃からみてもサクラの方が強い。それなら勝機はある)


 方針が決まったところでレーイチは一呼吸吸う。実力はまだ測りきれてないが、かといって防戦に徹する気もない。


「間合いに持ち込む!」


 レーイチはツトラードの攻撃を見て受けたことで動きのイメージは掴めてきた。レーイチは先手を掛けるため、カウルソードを構えて距離を詰める。


「剣では接近するしかありませんよね」


 対するツトラードはレーイチを先ほどとは変わって触手による迎撃する形となった。


 護衛対象がなくなり、身軽になったレーイチは勢いそのままに触手を躱して距離を詰め、レーイチはツトラードを射程圏内に収める。距離を詰める間にレーイチはカウルソードにコードを流し込み、コードを高める。そのカウルソードは白い光を纏っていた。


「ストライクエッジ!」


 レーイチは溜めたカウルソードのコードを解放するのと同時に鋭い突きを繰り出す。その勢いはまさに閃光。しかし一点を貫くその強力な閃光はツトラードが咄嗟に防御した触手に防がれてしまった。


「チッ」


 完全に防御されてしまった状態にレーイチは舌打ちをする。防御されたことでレーイチはツトラードからのカウンターとして触手が飛んできた。レーイチはそれをカウルソードで受け流した。


「これは中々に強力ですね」


 ツトラードは余裕を含んだ言葉であったが、攻撃を受けた触手は攻撃を受けた部分が大きく穿たれたことにより切断され、地面に転がった。


「余裕そうにしてるけど、残りも斬ればジリ貧なのはそっちだぞ」


「ご心配なく。私の腕は再生出来るのですよ」


 ツトラードはそう言うと切断された触手を再生させ、元の姿に戻ってしまった。それを見たレーイチはため息が出た。


「なるほど、つまりは再生できなくなるまで斬るか、一撃で仕留めればいいんだな」


「それは夢物語です。あなたが私を倒すことはあり得ません。あなたはコードとなって私の糧になるのが運命ですよ」


「へぇ、じゃあその運命を作り変えようか」


「それが不可能であることを私が証明してあげましょう」


 そしてツトラードの触手による猛攻が開始される。


「ちょっとは本気を出してきたのか。けど路地なら前方からしか来なくて攻撃も読みやすいな」


 路地での戦闘のため、攻撃は自然と前方からとなっていた。だが、その攻撃の物量は先程とは打って変わって息をつかせないほどであった。しかしその攻撃をレーイチは次々に弾き返す。自分自身でもここまで動けることには少々驚きはしたが、これもひとえにサクラという剣士に毎日打ち込まれたことが大きい。毎日毎日見えない剣先を受けていれば生き物としての生存本能が磨かれ、実力が嫌でも身についてくる。レーイチにとってツトラードの攻撃はサクラの速さに比べれば十分に追える領域であった。


「速さには追いついているようですが、数には追いつけませんよね」


「ッ!数が増えた!」


 ツトラードはそこからさらに攻撃用の触手を増やす。レーイチはそれでも何とか防いでみせたが、数の暴力の前に全ての攻撃を捌ききるという達人ではない。防ぎきれなかった攻撃がいくつかレーイチの体に掠り傷をつけ、そこからは赤い血が滲んできていた。


「前方ばかりに気を取られてると、その頭が飛びますよ」


「上か!」


 ツトラードは前方のみからでは押しきれないと判断すると、上部から貫くように触手を打ち込む。前方と上部からの奇襲、その二つの攻撃によりレーイチのもとからは土煙があがった。

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