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047 身内の非礼を詫びる

 ひとまず落ち着いた現状にレーイチを含めこの場にいる全員は安堵した。


「申し訳ない、レーイチ君、アリア。あとでタルタスには言っておく。それで作戦なんだけど、こんな事態になってしまって申し訳ないがレーイチ君に任せるしかなさそうだ。でも必ず君を守ると誓うよ」


「了解です。決行は今日の夜でいいですか?今のここをスタートにして人通りの少ない裏道を歩いて四人はバックアップについてもらいつつ夜明け前までが作戦時間でどうでしょう?」


「OK、それでいこう。あとはもしものためにこの辺りは人払いをしたほうが良いかもしれないね。それはこっちでやっておくよ。それじゃ、一旦休息として解散しようか」


 重い空気の会議は終わりとなり、緊張の糸が切れてレーイチは肩の力をようやく抜いた。アクセリアは不満気な様子であったが、悪い事態に持ち込まないためにはこれが最善であったと自分に言い聞かせる。何にしても協力をして貰うという落とし所に落とし込めたため、最低限のことは果たすことができた。


 そこにおずおずとした様子でノルフィがレーイチのもとにやってくる。


「あの、レーイチ君、その、ごめんね、うちのタルタス兄さんが酷いこと言って」


 身内の非礼を詫びにきたノルフィは代わりに怒られる覚悟をもっているようであった。その小動物のような弱々しさにはどこか可愛さを感じられる。


「ノルフィが謝ることじゃないよ。ほら、価値観の違いは地球でもあったし、むしろ世界が違っても同じ人間なんだって感じられて安心したよ」


 タルタスの言動からの反撃の言葉がくるのではと怖がっているノルフィに対し、レーイチは心配ないとおどけてみせる。


 フォローをしに来たつもりだったノルフィであったが、逆に気を使われてしまい申し訳なくなってしまった。


「うん……ごめんね、ありがとう」


「いや、こっちもこうやって声をかけてフォローしてくれるだけでも気持ちが助かるよ。優しいな、ノルフィは。ありがとう」


「そ、そんなことないよ。レーイチ君も優しいね」


 お互いに打ち解けあったレーイチとノルフィは笑みを見せる。


「レーイチ君もそう言えばユニーダーなんだよね?私も家族の中で一人だけコネクトっていうユニードがあるの。通信機なしで人と話せたり、コードを渡せたりするんだけど、事前に何か危険な事が起こりそうな時とかに周りの人に発信できるくらいしか使い道がない地味なものなんだ」


 ノルフィは同じユニード持ちとして親近感が湧いたのか、自分のユニードについて話をする。だが使い道が限定されており、ノルフィはそれについてはあまり自信がないようであった。


 だがレーイチはそんなことはないと思った。


「そんなことないと思うけどな。人を繋げる凄く優しいユニードじゃないか。きっとノルフィにしかできないことがあるはずだよ。そんな素敵な情報をくれたお礼に、俺のはリメイクとカスタムっていう二つのユニードで物質を変化させて作り変える力だから、壊れたものがあったら無料でお直しお受けしますよ、お嬢さん」


 最後の方を少しわざとキザっぽく言ってみたレーイチにノルフィは緊張が完全に解け、笑みを見せる。


「フフッ、レーイチ君って面白い。じゃあその時はお願いしようかな」


 穏やかに目を細めるノルフィの可愛らしさにレーイチはおどけた仮面が剥がれそうになる。だがそこを何とか取り繕った。


「じゃあ、今日の夜頑張ってね、レーイチ君」


「OK、期待のルーキーに任せておきなさい」


 そしてノルフィはひらひらと右手を振り、ご機嫌に銀色の髪を揺らしながらニルタとタルタスのもとへ戻っていった。


「……ノルフィに対して随分とポイント稼ぎに行くのね、レーイチ」


 今まで黙っていた隣のアクセリアはやや棘のある口調でレーイチに言葉を投げかける。タルタスへ向けた怒りの視線ではないが、それに似て非なる視線をアクセリアは放っており、なぜそのような視線をアクセリアが放っているのかは全く分からなかった。


「えーと、どうしたアリア?確かにノルフィは可愛いとは思うけど、さっきの言い合いに対して気にしてたみたいだから気にし過ぎないように配慮してあげたってのが俺の本意だったんだけど、もしかして女の子にさっきのってマズかったとか?」


「……その本意は伝わったから全然いいのよ。ノルフィも気持ちが楽になってたみたいだし。でも……その……。なんでもないわ。ごめんなさい」


 アクセリアはそう言って場を離れていく。


「うーん?」


 レーイチは首を傾げる。更に機嫌が悪くなったような様子に何かいつもと調子が違うなとは思ったが、きっとタルタスとのやり取りの不機嫌がまだ直っていないのだろうと思った。あまり問い詰めるのも気を悪くしてしまうかと思い、それ以上レーイチは何も言わず、アクセリアの後を追った。


 一方、アクセリアは今まで抱いたことのないこのモヤモヤとした気持ちがなぜあるのか自分でも分からなかった。タルタスにぶつけた怒りの延長線上のものかと思ったが、それとは違うよく分からない変なものがぐるぐると心を乱している。


(何なのよもう、レーイチに馬鹿って言いたいこの気持ちは)


 先ほどまではタルタスに怒りの矛先が向いていた。だが、なぜだか今は仲間であるレーイチに怒りの矛先が向いている。勿論この気持ちをレーイチの当の本人にぶつけることだけは絶対にしたくない。それをしないために思わず自分から言葉を投げつけておきながら勝手に話を切って逃げていた。だが逃げても尚、その気持ちはまだ収まらない。


(レーイチの馬鹿)


 仲間にこんなこと言いたくないと思っていたが、渦巻いた感情で最終的にアクセリアは心の中で呟いてしまった。勿論、レーイチにその声は聞こえていない。

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