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041 小型植物のアンチコード

「キィイイイイイ!」


 突如割れた空間が現れ、アンチコードが出現しその産声をあげる。


 現れたのは鉢に植えられた植物がそのまま動いてるかのような小型植物のアンチコードだった。


 突如現れたアンチコードに集まっていた人々はどよめき、恐怖し、アンチコードの姿を見て人々は悲鳴と共に逃げ出した。


 演説会場に緊張が走る。


 ハルマの護衛をしている傍にいた秘書とSPは咄嗟にハルマを庇うように身を挺してアンチコードとハルマの間に割って入る。SPがカウルを発動する前に小型植物は触手を伸ばし、SPの一人の肩に触手が突き刺さった。


「グッ」


 呻き声をあげるSP。一発目の触手が仕留め損ねたのだと分かった小型植物はもう一度同じ手を打とうとする。だが一発目が当たらなかった時点で小型植物は詰んでいた。


「遅い!アンチコード!」


 ハルマを守るSPは四人おり、一人を負傷させたところで同じ手を残りの三人のSPが受けるわけがなかった。二人のSPが小型植物の取り押さえにかかる。コードを流し込むことで展開されるカウルシールドを構え、距離を詰める。小型植物はその盾に触手を打ち込んだがことごとく弾かれ、SPからの体当たりと盾の打撃を受けてその体は粒子となって散り、攻撃は止まった。


 小型植物の攻撃が抑えられたことで緊張の糸が切れる。


「ご無事ですか、ハルマ区長」


「私は無事です」


 その声を聞き、SPは安堵した表情になる。


 だが事はそれで収まらなかった。


 SPが小型植物に集中し、ハルマの背後ががら空きとなったところへ更にもう一体の小型植物が噴水の陰から現れた。


「レーイチ!」


「分かってる!アクセラレーション!」


 言うよりも早く、レーイチは地面に手を触れて石柱を発生させ、レーイチとアクセリアを二人共ハルマのもとへ弾丸の如く飛ばした。


 レーイチは空中で腰にあるカウルソードを抜刀し、アクセリアは銃をホルスターから引き抜くと二体目の小型植物に先制射撃を仕掛ける。小型植物に何発か命中した弾丸は体制を崩すまでに至ったが、ハルマへ攻撃する動作を止めるには至っていなかった。


「キィイイイイイ!」


 窮鼠猫を噛むかの如く小型植物は最後の力を振り絞り無防備となっているハルマへ触手を放つ。


「ストライクエッジ!」


 一閃が走る。その突きは一点を鋭く貫くレーイチのカウルソードの突きだった。その一閃は放たれた触手を穿ち、攻撃を止めることに成功する。


「オオオオオオオッ!」


 そしてレーイチはその剣の勢いを殺すことなくカウルソードで小型植物を切り裂くと、二体目のアンチコードも粒子となって消えていった。


「や、やったのか」


 SPから安堵の声が漏れる。だがその安堵とは裏腹にレーイチ達を取り囲むように五つの空間の裂け目が現れる。小型植物がまたしても産声を上げようとしていた。


「ば、馬鹿な!囲まれた!」


 取り囲まれてしまった状況にSPは焦りの声を漏らす。だがレーイチは落ち着いてすぐに左手を地面に触れ、コードを流し込む。


「リメイク・カスタム!」


 レーイチは石柱を発生させると空間の裂け目にそのまま突き刺す。するとその空間の裂け目からは白い粒子が漏れ出し、小型植物はこの世界に降り立つ前にコードに変えられ、空間の裂け目は自然と消滅した。


 そして今度こそ襲撃してきたアンチコードを撃退となり、辺りに静けさが戻った。事が落ち着き、レーイチはカウルソードの刃を納め、カウルソードの柄をホルダーに納める。


「レーイチ」


「アリア」


 お互いに名前を呼ぶと右拳をコツンとぶつける。二人は互いに良くやったといった表情を浮かべ、一先ず落ち着いた状況に胸をなで下ろした。


 SP達は加勢してくれた二人のゼドの隊員を見る。


(あのゼドの隊員二人が居なければ正直危なかった。油断していたのは我々だ。特にあの黒髪の少年は何者だ?こちらに瞬時に駆けつけ、カウルソードと作り変えるユニードを合わせて単体から複数まで敵を瞬く間に制圧してしまった。何という戦闘力を持ってるんだ)


 ゼドが味方であって良かったと、そして黒髪の少年が味方であって良かったとSP達は心の底から思った。


「ゼドのお二方!」


 ハルマはレーイチとアクセリアへ駆け寄りながら声を掛ける。


「この度は助けていただき感謝しかありません。ありがとうございます」


 ハルマは二人の手を取り感謝の握手を交わした。


「いえ、当然のことをしたまでです。お怪我はありませんか?」


「怪我はありません。これも私を守ってくれた秘書とSPとお二方のおかげです。申し遅れましたが私はラトアネル西区長のハルマ・テルコートと申します。そしてこちらは秘書のラーサ・トーラスです。」


「ラーサ・トーラスです。以後お見知りおきを」


 ラーサと名乗った女性はパンツスーツに眼鏡、そして出るところは出て締まるところは締まったプロポーションをしていたが、あまり目立たないよう淡々と軽く自己紹介をした。


「魔女の時計所属のレーイチ・シンドウです」


「同じくアクセリア・ネストフィーです」


 レーイチとアクセリアも続いて名前を名乗る。二人が名前を名乗ると、ハルマはしっかりと記憶したと頷き、同時に何か納得したかのような表情を見せた。


「おお、あの時の魔女のところの。であればその強さも納得ですな。助けていただいたお礼をしたいのですが、今は何分お渡しできるものもなく申し訳ない」


「そんな、お礼なんて」


 レーイチとアクセリアにとっては当たり前のことをしただけのため、お礼は特に求めていなかった。だがハルマのその恩返しをしたい心を察して秘書のラーサがある提案をする。


「それであれば昼食を一緒にいかがでしょうか。このあとの任務も空腹では力がでないでしょう。微力ながらお力添えができるかと思います」


「おお、そうです、近くに良いお店があります。勿論先を急ぐということでしたらこちらも無理には引き留めはできませんがいかがでしょう?」


 その打診にレーイチとアクセリアは顔を見合わせる。そこまでされては断るのも悪いかと二人の意見は一致した。


「それではお言葉に甘えさせていただいてもよろしいでしょうか」


「勿論です。ラーサ、あの店の確認を頼みます」


「ご心配なく。既に予約をとりました」


「仕事が早いですね。流石です」


「恐縮です」


 気が付けばラーサはここまでを読んでいたかのように既に予約まで済ませてしまっていた。顔には出さないが、仕事ができる人物のオーラが出ており、むしろここまで仕事を円滑に回せる人物でないと区長の秘書は務まらないのだろうと思わされた。

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