040 西区到着
レーイチとアクセリアは目的地のラトアネル西区へと到着した。バイクから降りるときアクセリアは反省を活かして自身のスカートに気を付けて降車する。反省を活かしてくれたことで今回に関してはレーイチは特に思うところは無かった。そして二人はヘルメットを脱いで閉塞された感覚からようやく開放される。
移動の道中、やはりというか当たり前というか、二人は視線をかなり集めることになった。
目立つ赤色のバイクにゼドのジャケットは隊服として格好良さもありバイクとも見栄えがマッチする。おまけにそれを身に纏い操縦する正体が美少女であり、街中を疾走するなどどこの空想世界の物語だろうか。そんな人物が現れれば視線を奪われるのは当たり前と言えば当たり前であった。
そしてその後部座席に座り密着してる男はいったい何者なのだと嫉妬の視線を向けられ、怨嗟の声が聞こえなくもない。
「ん~、疲れた~」
そんなことは全く気に留めることなくアクセリアは両手をあげて上体を反らしてグイグイと伸ばして気持ちよさそうに体をほぐしている。そのせいで胸が隊服の上からでも分かるように自己主張を強めるが本人は無自覚のようであった。それについては何度も声をかけては気まずいだろうと今回はスルーすることにした。
「西区は久しぶりに来たわね」
「王城をぐるっと回って反対側だしな。それに王城から少し離れてるし」
「アパートにマンションに噴水のある広い広場、居住地って感じよね。本当にここで事件が起きてるのかしら?」
のどかに過ごす人々を見れば、ごく普通の日常が送られているため疑問に思うのは無理もない。しかしガロンの急襲を思えばいつアンチコードが現れてもおかしくはない。
「まずは聞き込みね。あそこで囲みを作ってるのはなにかしら?」
アクセリアの視線の先には噴水を背にし、台座に乗って多くの人の前で演説をするスーツ姿の金色の髪に四十代ぐらいの馴染みやすそうな雰囲気と威厳を両方併せ持つような一人の男性がいた。人気者なのか、その人を囲むように人だかりができている。
「うーん、政治家っぽいな」
「ああ、あれは西区の区長、ハルマ・テルコート、人気のある政治家ね」
ハルマを囲む人々はその目の色からも信用と期待がされていることが見て取れる。どんな実績を積んでいるのかレーイチには分からないが、民衆もハルマもお互いに真剣な表情と人気ぶりを見れば大きな仕事を成し遂げた人物に間違いない。
「私、ハルマは、子供たちの未来を守るために力を注いできました!未来ある子供の命を守るためにゼプト防衛機構との協力関係を強くし、警察との連携を取れるようにもしました!私はまだまだやれます!この私を信頼いただけるのであれば、皆様の応援をいただきたく存じます!」
ワァッといった歓声と拍手、ハルマの名前を呼ぶ声、応援の声が一気にあがった。ハルマはそれに応えるように手を振っており、それによりまた一段と声が大きくなった。
街頭演説でここまでの人気を誇る政治家にレーイチはただ尊敬の念を抱いた。これが本当に実力ある政治家なのだと認識させられる。
「アリア、区長って結構凄いのか?」
「ええ、勿論。この王都ラトアネルの区長はそのまま議員の一席も担うわよ。王城のある台地から流れ出る水がXを描くように運河があって、それを境に区が分かれているのだけど、その四区長は王都のお膝元なだけあって発言力が違うわね。あのハルマ区長は八年前に当選してから二期目。着実な実績と市民からの人気度もあって今はどの派閥も崩せない不動の区長よ」
「へぇ、そんなに人気なんだ」
相当な大物の政治家なんだなとレーイチは理解する。そんな大物政治家の演説会場を見ていた視界の端で何かが動いた。




