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039 バイクに乗るときは気を付けよう

「レーイチ、準備はいい?」


「ああ、いつでもOK」


 返事を返すと、アクセリアは一階のガレージに繋がる階段へと向かった。レーイチもその後ろに続いて降りていくと、広いガレージには高級そうな黒い車が一台と赤いスポーツバイクが一台駐車されていた。


「改めて見るとかっこいいな。車で行くの?」


「二人だからバイクで行くわ。はい、ヘルメット」


 アクセリアは棚に置いてあるヘルメットをレーイチに渡すと、慣れたアクセリアはヘルメットを被り、バイクをガレージから外に出すとサッとバイクに跨った。レーイチは思わずその姿に見とれてしまう。


 アクセリアがバイクに乗っている姿は一言で言えば写真映えする美しさがあった。流れるようなフォルムのスポーツバイクに跨るアクセリアの足はスラリと伸び、バイクに跨ったことでスカートに隠れていた足の肌色が先ほどより多く露出する。更にアクセリアを象徴する赤色がよりバイクのカラーにより強調され、存在感が強くなった。


 行く準備は万端というアクセリアではあるが、レーイチは時折ふと油断を見せるアクセリアに気を付けて貰いたいと先に注意を促した。


「アリア、スカートで勢いよくバイクに跨ると見えそうになるからちょっとは気を付けてな」


「ッ!」


 その注意喚起にアクセリアは慌ててすぐに両手でスカートを抑えた。


 レーイチは後ろからでも顔が赤くなっているのが見て取れた。


「……見た?」


 恥ずかしいのか、アクセリアはチラリと片目が見える程度に振り向いてレーイチに質問する。その表情は羞恥心に襲われている表情であった。


「見てない」


 レーイチは返答を返す。実際本当に見てはいないのだが、その証拠を証明する術も審判も存在しない。アクセリアに見られたと言われればそれまでだった。勿論注意しないという手もあったが、このあと降りるときに困るため先に手を打つ他なかった。


「……因みに何色だった?」


「赤」


 レーイチは何となくイメージカラーで適当に答えたが、その瞬間に弾丸が顔の横を掠めた。


「見てるじゃない!」


「待てアリア!本当に見てないから!アリアのイメージカラーを言っただけだから!というか自分で公言するな!」


 レーイチのその指摘にアクセリアは益々羞恥心に駆られた。自分から言質を取るために罠を掛けたつもりが自分で公言するという誤爆をしてしまったことが恥ずかしくて仕方なかった。


 そしてアクセリアが自ら公言するという失態をしたことで、レーイチは見ていなかったはずなのにアクセリアの赤い下着姿を見てしまったかのような変な感覚に駆られて顔が赤くなってしまった。


(本当に隙が多いなアリアは……)


 心の中でそう思い、レーイチはドギマギした心を何とか抑えた。


「……分かった、信じるわ。仮に見えてたとしてもそれは私の不注意だから。降りるとき気を付けるわ」


「そう言ってくれると助かるよ。というか怪我も危ないからバイクでスカートを履くのをやめような」


「乗る間もカウルを使うから怪我は問題ないわ。それに女の子はいつも可愛くありたいの」


「さようで」


 問答はやめてレーイチもヘルメットを被る。女の子は時々分からないものだなと思ったが、それは心の中に引き留めておいた。


「それじゃあ後ろ乗るよ」


「ええ、どうぞ」


 その返事を貰ってからレーイチはバイクのタンデムステップに足をかけて後部座席に跨った。いざ跨ってみるとスポーツバイクは基本スピードを求めたフォルムとなっているため、二人乗り用の親切な設計がされていないのが如実に感じられた。


「アリア、姿勢安定しないから腰のとこ触るよ」


「ええ」


 バイクには捕まる場所がないため、レーイチは姿勢を安定させるためにアクセリアの腰に両手を回して安定姿勢をとることにした。


「ひゃんっ!」


 レーイチに後ろから両手で腰骨とお腹周りを触られ、アクセリアは変な声と共にビクッと仰け反るように体が反応をする。思わずレーイチも驚いて両手をアクセリアから離した。


「おわっ、どうしたアリア?もしかして変なとこ触った?もしそうだったらごめんなんだけど……」


「う、ううん。何でもないわ」


 アクセリアはちょっと驚いただけと誤魔化す。ヘルメットで顔を隠してはいるが、そのヘルメットの中では顔が赤くなり熱くなっていた。初めて男の人にお腹周りを触られ、なぜか体が急に反応してしまった。


(レーイチの手……大きかった……って何考えてるのよ私!)


 アクセリアは頭を振って邪念を払う。これではまるで触られたいみたいだと、それは断じて違うと否定した。


「二人乗りって実は初めてだからちょっと驚いたの」


「おい、不安なワードが出てきたぞ」


「だ、大丈夫よ。事故を起こしたことないわ。それにカウルを纏っておけば死にはしないわ。多分……」


「最後の最後に信用が地の底に落ちることを言うな。……まあ、とりあえずアリアのこと信じるよ」


「うん、ありがとう」


 そしてレーイチは再度アクセリアの腰に手を回して安定姿勢をとる。


 アクセリアは気を強く持って触られることを受け入れた。


 二人は物理的な距離が近くなったことで、お互いの体温が感じられるようになった。


(アリアとの距離近い……)


 レーイチ自身バイクの運転ができないため仕方ないことではあるが、美少女にまるで後ろから抱きつくような状態となり、アクセリアの甘い匂いが鼻孔をくすぐってくる。意識すると顔が熱くなり心臓の鼓動が早くうるさくなっていくが、アクセリアにはそれが伝わっているのかその表情を後方からは伺うことができなかった。


(うー、ドキドキする)


 アクセリアもレーイチに触れられ、今更ながら後部座席に乗せたことがないこと以上に異性と密着して長時間共にするということが初めてであることを自覚し、心臓の鼓動が早くなっていた。そしてそれが後ろのレーイチに聞かれていないか心配になる。しかしこのまま集中が乱れたままでは現場に到着する前に本当に事故を起こしてしまうため、アクセリアは深呼吸をして何とか気持ちを落ち着かせる。そしてカウルを発動させ、バイクのエンジンを始動させた。


(邪念が多いわ。集中集中)


 何とか邪念を振り払い、アクセリアはサイドスタンドを払うとアクセルを回してガレージから出発する。鼓動のうるささは止まることなく、二人は目的地に向けて移動を開始した。

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