038 ブリーフィング
数日後、アザトとレーイチとアクセリアはとある書類を前に同じテーブルを囲んでブリーフィングが行われていた。
「レーイチ、アリア、依頼だ。西区で行方不明者が複数出ているらしい。その調査及び解決が今回の依頼だ」
アザトが説明する書類の差出人はゼドからで、タイトルには行方不明者の調査と書かれてあり、その後に細かな詳細がずらずらと書かれてあった。レーイチはそれに目を通しながら話を続ける。
「これって、カフェで聞いた行方不明事件じゃ……」
レーイチは資料を読んでアクセリアと立ち寄ったカフェで聞こえた噂話を思い出す。
「そうね、あの時聞こえた噂話の事件と同じものみたい」
アクセリアもこの事件は噂話で聞いたものと同じだと思った。
「二人ともどっかで聞いたのなら話が早いかな。今回声が掛かったのは西区のゼドの隊員が二人同じように姿を消して連絡が取れなくなったからなんだ。そこでうちの実力派エリートに回ってきた感じだね」
「要するに斥候部隊が居なくなったからその代わりをやれってことですね。なんでわざわざ反対側のうちにくるんだか……」
レーイチは反対側に呼び出される理由がよく分からなかった。ゼドの隊員は他にも西区にいるはずだった。
「ま、うちは何でも屋だからね」
「自分で言ったよこの人……。まあいいです。それで犯人は誰なんですか?」
「それも分かっていないみたいだ。アンチコードか、街に潜む悪しき犯罪者か、まずはそれを突き止めるところからだね」
「行方不明案件で警察ではなくゼド側に仕事が回ってくる時点で結構手こずってるのね」
「その通りだね、アリア。都合が悪いことに、この世界では遺体が残らないから残された衣類や目撃者を探して真相を確かめなきゃいけない」
「遺体が残らないか……」
レーイチはアンチコードのガロン戦を思い出す。そこで目にした犠牲となった人は命を落とすと共に白い粒子となった。それは以前アザトが説明していたこの世界の循環であり、神が構築した命の巡り。レーイチの元の世界では遺体による情報があることで解決した事件は多く、その情報が得られない状態は事件解決というものに対して不都合なシステムであった。
「でも生きてる可能性もあるってことですよね?」
「勿論、そうだね。監禁されていれば解放してあげてほしい。問題はその黒幕がアンチコードであった場合、戦闘は避けられないことだ」
「街の中でのドンパチは避けたいわね」
「そうしたいところだけど、相手がアンチコードの場合そんなこと聞いてくれるわけないからね。相手が人間なら多少の対話の余地があるかもしれないけど、ここまでの事件を起こす時点でまともではなさそうだ。レーイチとアリアにはまず現地に向かってもらってそこで情報の収集を頼むよ。他のゼド部隊が派遣されていると思うから、そっちともコンタクトを取っておいてね。多分これは危険な任務だと思うから気をつけて行くように」
「「了解」」
レーイチとアクセリアは席を立つと装備のチェックに入った。
カウルソードがホルダーに収まっていることを確認し、左耳の裏にある小型パッチ型の通信機が問題なく作動していることを確認する。アクセリアも同様に腰にあるホルダーからハンドガンを取り出し、動作に異常がないかを最終チェックを行っていた。
「そういえばサクラはこの作戦に入らないんですか?朝からいないみたいですけど」
一足先に確認が終わったレーイチは、恐らく本来声を掛けられた目的であろうサクラがいないことが気になりアザトに質問した。
「後追いで向かわせる予定だよ。少なくとも今日は街の外に現れたっていうアンチコードの討伐に向かってるから無理かな」
「分かりました。まあ来てくれるなら心強いですね」
「早く片付けられるならレーイチ達で片付けてあげた方がサクラも負担なくて助かるよ」
「それはそうですね」
サクラの戦闘力は何度も手合わせをしているレーイチから見てもずば抜けており、最強の剣士と言われる由縁にも納得していた。そしてそのサクラの本気は未だに見たことがない。そんなサクラと本日顔を合わせるアンチコードが逆に不憫に思えてきた。




