027 ゼプト防衛機構入隊試験④
そして戦闘が終わったレーイチに対して、周囲からは歓声が上がる。
「スゲー!あのロボットを破壊した!」
「アイツ何者なんだ?」
「何でコンバーターがユニード持ってるんだよ」
「あのロボットを破壊できるコンバーターとか危険すぎるだろ」
歓声と共に聞こえるのはレーイチに対しての尊敬や驚きの声、そして異世界からの来訪者を敵視するかのような声が聞こえてきた。その声は当然レーイチの耳にも入る。
(今まで訓練で外に出てなかったから分からなかったけど、コンバーターに対する風当たりが強いってのは本当なんだな……)
レーイチは改めてこの世界で自分がコンバーターという異質な存在で扱われていることを実感した。サクラは事情を知っているため理解の余地はあるが、今聞こえてくるのは世間に蔓延るコンバーターは危険な余所者という認識からくるものだった。何もしていない自分が、敵として認識されている感覚は正直気持ちの良いものではない。このことに関しては事前にアザトやアクセリアから聞いていたため、レーイチとしては今はそういう人もいるのは仕方ないと受け流すしかなかった。
二階席でもレーイチの戦闘は話題の種となった。
「あの身体能力、カウル、ユニード……何者だあいつは……」
「ユニードの特性を生かした物理攻撃、防御、更にそれを活かした機動力、そして極めつけは飛ぶ斬撃、フォトンスラッシュか。とんでもないルーキーが現れたな」
「だがやつはコンバーターだ。ゼドに入れるのは問題あるんじゃないのか?」
「あの戦闘能力を捨てるほうがゼドにとっては大打撃だろう。世間体を気にして本来の目的のアンチコードへの対抗を疎かにする方が間違いだ」
「そうだな。そうなるとどこの部隊があのルーキーを取るかになるわけだが……」
それを皮切りに一同はピリつく雰囲気となった。対アンチコードに特化したユニード、そしてカウルソードの申し分ない腕前をもつ戦闘能力はどこも喉から手が出るほど欲しい人材だった。早くこの試験が終わってオファーを掛けたい気持ちが早まる。
「悪いけどレーイチはうちの魔女の時計に所属するから無理よ」
その声はこの場でただ一人、会話に混ざっていなかったアクセリアだった。
「魔女の時計だと?……そうか、なるほど、そういうことか。なぜコンバーターがいるのかと思ったが、魔女が絡んでいるのか。短期間でなぜあれほどの力があるのかと思ったが、時間をいじったな?」
「ええ、そういうこと」
「それに魔女の時計にあの剣術、まさか抜刀のサクラがあの剣を教えたのか」
「そうよ」
ようやくの種明かしに一同は愕然とした。そして逆に納得も得られた。魔女が絡んでいるのであれば、あのレーイチ・シンドウがあそこまでの戦闘能力を持っている理由に示しがつく。そしてあの人材を取れないことに一同は肩を落としたのだった。
ロボットが破壊され、試験監督は思わぬ出来事に頭を抱えた。
「しかしロボットが破壊されるのは予想外だったな。このあとの試験をどうするか……」
「あ、ご心配なく。こっちで直しときますね」
レーイチは自ら問題を引き取ると、自分で破壊したロボットのもとに駆け寄る。
「壊してごめんな。今から直すよ。リメイク・カスタム」
レーイチが切断した胴体に触れると、真っ二つになったロボットの胴体が一つに修復され、斬り落とした腕も元に戻り、レーイチと対峙した時と同じ姿へと修復された。
「感謝シマス。レーイチ・シンドウ。アナタニ破レタ私ハ廃棄サレル運命ニアリマシタ」
クリクリと動くカメラをレーイチに焦点を合わせ、ロボットはレーイチに話しかけた。
「気にするな。一戦交えたあとは仲良くしようぜ。それに廃棄されるなら俺が貰っとくよ」
「……アナタハ変ワッテマスネ。コンバーターハ変ワリ者シカイナイノデスカ?」
「あはは、異世界から来てるんだから、こっちの世界では変わり者に決まってるだろ」
「ナルホド、デハアナタニトッテ、私ハ変ワリ者デスネ」
「ああ、お互い変わり者同士だ。変わり者同士、これから何かあったらよろしく頼むよ」
「ハイ、コノ恩ハ忘レマセン」
レーイチは右手を差し出すと、ロボットは一瞬戸惑ったような様子ではあったが右手を差し出し、互いに握手を交わした。
人とロボットが握手をするその光景は周りの人には異様な光景に見えたが、不思議と悪いものではないと思った。
その後の試験は滞りなく進行した。レーイチの模擬戦闘の活躍もあってか、参加者の士気は高くなり、後に続けと参加者はロボットに挑んだ。だがレーイチが修復したロボットはレーイチと戦う前よりも格段に機動力が上がっており、その参加者のほとんどを薙ぎ倒し、場外へ吹き飛ばしてしまった。これには他の参加者から「あのコンバーター許さねぇ!」という憎まれ口を言われ、レーイチは「俺、何かしちゃいました?」と惚け通した。




