024 ゼプト防衛機構入隊試験①
ゼプト防衛機構、ゼドの基地は巨大の一言に尽きた。二十階あるメインタワー、そして複数の室内演習場に屋外演習場。ある意味、軍事基地と言っても過言ではないほどの巨大な施設。しかしゼプトの敵と戦うというのを考えれば、むしろ所属隊員の練度を上げるために巨大な規模の施設が必要だとも言えた。
その基地の中の一つ、室内演習場でレーイチは他の入隊希望者と一緒にテストの開始を待っていた。
「おい、見ろよあの二階席。有名な部隊の隊長が勢揃いだぜ」
ヒソヒソと話をするのは入隊希望者の一人。訓練場の二階には観覧席があり、訓練の様子を一望できるようになっている。そこにはゼドに所属する隊員が軒を連ねており、今回の新隊員を自分の部隊に引き入れるためのスカウトも兼ねた視察が行われていた。
「なあ、あの赤い髪の子もゼドなのか?すけぇ可愛いじゃん。俺、あの子の部隊に入りたい!」
「本当だ!すげぇ可愛い!」
「俺、この試験に受かったら、あの子とアンチコードを一緒に倒して、ピンチのところを俺が助けて告白されるんだ……」
「死亡フラグかと思ったらただのキモい妄想だった」
男子達は二階席にいるアクセリアを見て騒いでいる。
レーイチとしてはアクセリアに変な視線が向けられているのが少々気に入らなかった。
「全員!注目!」
号令と共に場の空気が一気に締まる。いよいよ今回の入隊テストの内容の説明が始まった。
「諸君、よく集まってくれた。私はゼプト防衛機構アーク支部隊長のフルトミス・グレイストだ。共にゼプトを守ろうという志ある若者にこれだけ集まってもらえて私も嬉しい。知っての通り、ゼプトはアンチコードによる侵略を受けており、その残虐非道な行いから市民を守らなければならない。しかしそれ故にゼドに所属するには危険なアンチコードと戦えるか適正を測る必要がある。少々厳しいテストになるかもしれないが、合格した者にはゼドへ所属してもらい共にアンチコードと戦って欲しい。この入隊テストは今回ここにいる全員が受かることもあれば、全員が受からないこともある。共にゼドで働けることを期待する。以上だ」
アーク支部隊長による始まりの言葉が終わった。隊長を務めているというだけあり、貫禄とオーラが常人離れしているのがよく分かる。挨拶の言葉を聞くだけで自然と身が引き締まるようだった。
続いて試験監督が前に出ると今回のテストについての説明が始まった。
「それでは試験内容を説明する。行ってもらうのは二つの内容だ。一つ目はユニード保持者のみが対象となるユニードの実演。二つ目は全員対象の模擬戦を行ってもらう。ユニードの実演は言葉通り、ユニードの特性を見せてもらいたい。模擬戦はアンチコードを模したロボットを相手に戦って行ってもらう。カウル、ユニード、武器は好きに使って貰ってかまわない。あくまで個人の実力を測るのが目的のため、倒せなかったとしても実力を示せれば入隊が認められる。むしろ倒せないのが当たり前であるため、いかに粘れるかを見せてもらいたい。何か質問があるものはいるか?」
最後に質疑応答の時間が与えられたが、試験監督の説明内容に対して特に質問をするものはいなかった。説明にあった通り試験内容は至ってシンプルな実力を見せつけるのみのため、逆に疑問に思うところを見つけるほうが難しい。
数秒の静寂をもって試験監督は内容が伝わったと判断した。
「それでは早速一つ目のユニード保持者、ユニーダーはユニードの実演を行って貰う。対象者は右の壁側に寄れ」
その号令と共にユニーダーはぞろぞろと現在の集団から分離し、右側に新たなユニーダーのみの集団ができあがっていく。人数は十人おり、今回の参加者に対しては割合が多いと言える。そのうちの一人にレーイチも混ざっていた。
二階席もユニーダーに視線が集まる。火や水を出現させられる存在はアンチコードとの戦いにおいて戦略の幅が広がるため、目ぼしい人材を確保したい狙いがあった。
アクセリアもレーイチがいるユニーダーの集団に視線を向ける。そして応援の意味も込めて小さく手を振った。
「おい!今あの子、俺に手を振った!」
「いいや!俺に手を振った!」
「ふっ……この素晴らしい僕に惚れてしまったようですね……」
「「それはない」」
男子達はまたしても騒ぎ始める。アクセリアのレーイチへの応援が幸か不幸か勘違い男子の士気を高めることとなった。
「さて、これからユニードを披露してもらう。名前を呼ばれた者は実演をするように」
こうしてまず第一科目のユニードの実演が始まった。
名前を呼ばれたトップバッターは意気揚々と前に出る。その姿勢は自信ありといった様子だ。
「ファイアランス!」
トップバッターが手のひらを前に構え、威勢よく言葉を発すると火の槍を形勢する。そしてその槍は勢いよく発射され、目の前にある的を粉砕した。
(普通のユニードは初めて見たけど中々良い威力があるな)
レーイチはその様子を見て、なるほどなるほどと一人納得と感動をしていた。新しく目にした火の槍を放つユニードはシンプルながらも的を粉砕するだけあって威力もある。飛び道具の性能からも相手を牽制するのにも有効性が感じられた。
他にも何か出来そうだなとレーイチは思考を巡らせていると、次のユニーダーが前に出て準備を始めた。
二人目は電撃使いであった。
「サンダーボルト」
その言葉の後に的を粉砕する雷が落ちる。的は一人目と同じく粉砕された。
その光景にレーイチはまた違ったユニードに面白さがあると一人感動した。自分とは違うユニードを見るだけでも中々に面白いもので、できれば全員のを見て見たいと思った。




