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023 訓練③

 レーイチの訓練が始まってから二か月が経った。正確にはアザトによる時間操作により時空が歪んでいるため、レーイチは六か月ほどの訓練を受けたことになる。


 その間にレーイチはカウル、ユニード、体術、剣術の習得を行った。幾度となくアクセリアに打撃を叩き込まれ、投げ飛ばされ、サクラにはアクセリアよりも多く剣による打撃と体術を体に物理的に叩き込まれた。最初にアクセリアが言っていた通り、カウルの習得と体の動きを得ていなければレーイチはサクラの打撃に耐えられず死んでいたかもしれなかった。それほどサクラは次元が違った。


 そして現在、レーイチはゼドへ入隊するための最後の訓練をしていた。


 レーイチとサクラの手には黒い柄から刀のような刀身の白い刃が伸びる剣が握られている。その剣はカウルソードと呼ばれる武器であり、所有者が黒い柄にコードを流し込むことで白いカウルの刃が出現する。剣として対象を斬るのは勿論、刃がカウルでできているため、強度や性質を変化させて斬る性質から打つ性質に変化させることもできる。


 現在二人はその刃を打撃属性の木刀のような状態にして向き合っていた。


「ハッ!」


 レーイチは横一閃の剣をサクラへと放つ。サクラは上体を反らして紙一重で躱すと、その返しとばかりに切り上げの一閃がレーイチに襲いかかる。レーイチはサクラと同様に反射的に動き、紙一重で躱してはその返しの斬撃を繰り出した。


 躱しては互いに剣を交わらせ、一瞬の隙を突く鋭い一撃。その繰り返しをレーイチとサクラは何度も何度も繰り返す。


 レーイチが剣を習い始めた最初の頃はサクラに何度もボコボコにされて床に這いつくばった回数は数しれず。だが今のレーイチはサクラの攻撃を受けて返すまで成長していた。しかし成長が目まぐるしいレーイチであってもまだサクラには敵わない。


 剣が交錯し、鍔迫り合いへともつれ込んだレーイチとサクラ。いつもであればサクラから足技で蹴り飛ばされるなり、剣の力の向きを変えさせられるなりして追撃されるところではあるが、今回はレーイチの方が先に足技を仕掛けた。


「貰った!」


「もう片方がお留守よ」


 だがサクラは逆にレーイチの足技が繰り出される瞬間を狙い、地についている片足を払ってレーイチのバランスを崩した。そこからは一瞬で勝負がついた。サクラはレーイチの剣を払い飛ばし、空いた胴へ容赦なく一撃を叩き込む。そしてレーイチは後方へと飛ばされた。


 カウルソードが斬撃状態ではなく打撃状態で、尚且つカウルを使っているとはいえ、鋭い一撃をまともに受けたレーイチは痛みが引くまでうずくまるしかない。


 そして華麗に技を決めたサクラは勝負を決して尚、凛とした美しさがあった。


「物真似は上手くなってきたわね、コンバーター。でも物真似の元である私の技を私に使うなんて甘すぎるわ」


「ぐぉおお……いってぇ……。それは成長したと前向きに捉えさせてもらうよ」


「何度も叩かれて頭がおかしくなったみたいね。お猿さんの方がまだ賢いわ」


「辛辣」


 サクラの辛辣な扱いは未だに変わることはないが、レーイチはそれでも多少は評価をして貰えたのだと思った。まだまだ物真似をして学ぶところも多いが、物真似が本家に近づいてきていることを意識させることができただけでもこの訓練期間頑張ってきた甲斐があった。


 レーイチが呼吸を整えているところ、エレベーターの到着音が鳴った。扉が開きそこから出てきたのはアクセリアだった。


「お疲れ様。調子はどう?レーイチ」


「問題ないよ。今もサクラに叩き斬られてサクラにも褒めてもらえたし」


「そう。良かった。いつも通りね」


「褒めてないわ。斬るわよ、コンバーター」


「はいはい、ごめんって。だからその抜刀術の構えはやめてほしいな」


 サクラは腰にカウルソードを構えて殺気を放っている。レーイチは降参と両手を挙げてその場をいなした。


「そろそろ出発の準備をしないと間に合わなくなるわよ」


「OK、すぐ行くよ。サクラ、付き合ってくれてありがとう。サクラとアリアと同じ仕事できるように入隊テスト行ってくるから、帰ってきたらまた手合わせよろしくな、サクラ」


「期待はしてないわ。でも私とアリアの特訓を受けて受からないなんて無様な結果を持ってきたときは本当に斬ってあげるわ」


「そうならないよう頑張るよ。声援送ってくれてありがとう」


「送ってない」


 そんな言葉を交わしてレーイチはアクセリアと共に急いでエレベーターに乗り込んだ。

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