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014 そのユニードはある日突然与えられた

 次々と飛び出す新情報で混乱するレーイチに追い打ちをかける形となり、思わずツッコミが入った。ツッコミを入れられたアクセリアはというと、そう言われてもねぇと本人も仕方なくセブンスコードのアクセスコードを担当してますといったような表情であった。アクセリアがそのアクセスコードについて追加の説明を行っていく。


「アクセスコードはね、特別みたいなの。他のセブンスコードは現在の保持者と継承者がそれぞれ段々と力が引き継がれていく感じなんだけど、アクセスコードは保持者が亡くなるまで次の保持者が分からないの。そして保持者が亡くなるとまるで別の依り代を探すかのように痣が消えてどこかの誰かにその役目が移っていくんだって。その法則は全く不明のランダムで、国に関係なくどこかの誰かに現れるみたい。確か私の前は北の国のブドルレードだったかしら?」


「えーと、そうなるとつまり、アリアはその特殊なユニードを偶然引き当てたわけか?」


「そういうこと。もともと私はこの街から離れた田舎の酪農家の娘なのよ。十二歳のときに突然アクセスコードの痣が現れて、それを見た父親が勘違いしてうちの娘を怪我させたのはどこのどいつだって大暴れしてたわね」


 やれやれと過去を思い出して話すアクセリアはため息をついた。アクセリアは別の意味で苦労をしたようだった。


「それは何というか、いい家族じゃないか。でもその特別なユニードを貰えるなんて何だか神様に選ばれたような感じがするよ」


「そう思うでしょ。でもこのアクセスコードはある意味厄介なものよ。持ち主は可及的速やかに申告しなければならないし、政治が絡むしで自由がないのが嫌になるわ」


 アクセリアは過去のいざこざを思い出して更にため息をついた。ある意味ではアクセリアにとってアクセスコードは憎き存在なのだろう。


「そのアクセスコードってどんな能力なんだ?」


「私のアクセスコードはね、ありとあらゆる鍵を開錠してしまう能力なの」


「ありとあらゆる鍵を開錠?」


「簡単に言うと、例えばレーイチが部屋の鍵をかけても私がそのドアを触るだけで簡単に開けちゃうの。何でも開けられる便利なユニードって思うかもしれないけど、相手のプライベートを壊すユニードでもあるのよ。だから悪い使い方をすれば、国の重要な施設とかに潜入して極秘情報がある保管庫を開けることもできるし、デバイスのパスコードもアンロックしてしまうし、金庫を開くのも造作もないわ。セブンスコードの力というだけあってとても強力だけど、見る方向によっては厄介なユニードなのよ」


 右の掌をレーイチに見せながらアクセリアは話をしてくれた。つまり触れただけで開けられることから鍵というもの自体意味を為さなくなってしまうのだ。


 一言でいえばチートと言っても過言ではない。むしろチート能力というのが相応しい。


「あー、それでこの事務所に入るときに認証が意味ないとか言っていたのか」


 今の説明を聞いてレーイチはアクセリアが事務所に入る前に言っていた言葉の謎が解けた。そしてそれを聞いたレーイチは同時に自分の考えが甘かったと痛感した。鍵を開けるというだけのシンプルな能力だが、それはつまり、彼女の前ではセキュリティが無意味となってしまうということだった。


 その最悪な状況はアクセリアが説明した通り、下手をすれば犯罪、戦争の火種にさえもなりえる。それ故に所有者は居所を申告しなければならず、アクセスコードの所有者はどこの国に所属しているのかを公開しなければならない。公開し続けることでそのアクセスコードを政治に絡めないように封殺しているのだ。しかしそれは所有者へ死ぬまで不自由を強いることも意味している。ある日突然、その責任をたった一人の少女が負うことになったことを考えるとレーイチは胸が痛くなった。


「ちょっと無責任なこと言っちゃったな。ごめんな」


「気にしないで。これでも今は案外生活しやすいのよ。所長のおかけで家族の安全は確保できるようになったし、私もそこまで厄介事には巻き込まれずに自由にさせて貰ってるわ」


「そうなんだ。セブンスコードの一人というだけあってなのか所長も凄い人なんですね」


「そうだよ。アタシはすごーく顔が広い、時の魔女なのさ」


 アザトは得意げに自分を時の魔女だと呼称する。それはこの事務所の名前の魔女の時計や、セブンスコードのタイムコードの他に、計り知れない権力を所有しているという意味も含んでいるようであった。


「ねえ、レーイチ、私からも聞いていい?今日のアンチコードで使ったレーイチのユニード、あれは何?」


 アクセリアは興味を引かれるようにレーイチに顔を近づける。


「何と言われても……俺も分からなくて……。最初に来た時広場のホログラムの案内で調べて貰ったらカスタムが俺のユニードだったはずなんだよ。でも思い返せばあれはまるで、カスタムを超えたユニードだった。確かアリアに触れてもらってから体中に電流が流れるような感覚がきて、何か分からないけど咄嗟に使えたんだ」


 アクセリアの質問はレーイチが逆に聞きたいものであった。最初に使ったカスタムというユニードは物を組み合わせるようなものであった。しかし、あの戦いの中でアクセリアとの接触から明確に何かが変わった。それはまるでユニードの進化のようであった。


「そんなよく分からないのをあの土壇場でよく使う気になれたわね。まあ、おかげで助かったわ。確かあの時レーイチは確かこう言ってたわね。『リメイク・カスタム』って」


 そうだったとレーイチはあの瞬間を思い出す。しかしなぜその言葉が出てきたのかは分からなかった。だが、本能的にそう叫べと体が訴えかけてきたのは間違いない。


「アリア、アリアのアクセスコードはユニードを進化させる何てことはできないか?」


「うーん、残念だけど私のユニードはあくまで鍵を開けるだけなの。ユニードの進化なんて聞いたことないわね」


「でも明らかにアリアに触れてから変わった気がするんだ。逆に人から人に渡ったアリアのユニードが進化してとかの仮説は?」


「あはは、それは面白い仮説だけど、私はレーイチ以外の人とも交流があるし、それだったらもっと多くの人のユニードを進化させてると思うわ」


 答えのポイントがアクセリアにありそうだが、当の本人は進化の仮説を否定する。セブンスコードの神話型のユニードなら何かあるのではと思ったがそれも違うらしい。


 その話を聞いていたアザトは顎に手を当てて、あることを呟いた。


「それはもしかしたら、二つ目のユニードかもしれないね」


「「二つ目のユニード?」」


 二人の声が思わず重なる。レーイチは勿論聞いたことがないが、アクセリアもまた聞きなじみのない言葉であった。アザトは続けてその仮説について話し始めた。


「だってほら、レーイチが自分で言ってるじゃない。『リメイク・カスタム』って」


「いや、でもそれだけで根拠になりますか?」


「いや、もう一回ちゃんと調べないとだけど、ユニードが二つ所持される例はこの世で数えられるかぐらいだけど存在するよ。そもそもユニードを含めてコードっていうのは使えば使うほどに強化されるものなんだ。だから前提としてレーイチのユニードがいきなりアンチコードに対応できるまでの力に発展するわけがない。そうなると、多分レーイチは最初カスタムのユニードしか覚醒してなかった。そこでアリアがレーイチに接触したことでアクセスコードが作用し、眠っていたリメイクのユニードの鍵が外れたんだろうね。そして奇跡的にも二つのユニードはリメイクとカスタム、作り変えて組み合わせるシナジー効果が高いユニオンコードが発動したんじゃないかな。これなら最初の前提をひっくり返せるよ」


 アザトの説明は仮説ではあるがとても本質をついているようであった。


「でも所長、私、これまで何人の人にも触れてきてますよ?」


 アクセリアは疑問を口にする。その理論が正しければレーイチ以外の人にも同じようにアクセスコードが発動することがあったはずであった。


「だって、二つのユニードなんて世界で数人しかいないよ。多分今回のは一生に一回あるかどうかのレアケースだろうね」


「え、つまり、レーイチも私達セブンスコードと同じくらい希少ってこと?」


「そういうこと」


 その結論に視線がレーイチに集まった。そして当の本人は驚きを隠せなかった。神話の力を持つ人間だけが目の前にいるだけでも珍しいが、それに匹敵するものが自分にも存在するなど思いもしなかったのだから当然であった。

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