34.見世物ですか。あれは勘弁。
35話投稿してから、34話投稿していなかったのに気づきました。
うん、かなり忘れていて申し訳ありません。
列車から降りて帝国の首都へと到着する。そして、目の前の人の多さにウンザリしたのは俺だけだったのかな。ミサさんは呆れるように溜息を吐いているし、副団長は慣れたもので何の反応もしていない。
「これは、また盛大なお出迎えで」
確かに帝国側へは来訪する予定は伝えていた。列車が遅延する可能性もあったというのに、これほどの兵や民を待たせていたのはどうなのかと思ってしまう。しかしこれでは勇者が誰も残らないのは沽券にかかわる事態になってしまうな。
「自ら不退転の策を用意するとはね。それとも確定の何かを用意しているのか」
「琴音様。馬車の用意が済んでいるそうです」
「ならさっさと乗り込みますか。見世物にされるのは気分のいい物じゃありませんから」
俺の感想はこれなのだが、彼にとっては別なのだろう。民や兵にこれでもかと手を振りながら、悠々と馬車に乗り込もうとしていた。だが、それを止めるものもいる。どうやら彼の席は別の場所を用意しているようだ。
「うっわ」
「琴音様。慎みを」
「いや、だって。あれは幾ら何でもあり得ないでしょう」
彼が連れていかれたのは一言で言えばお立ち台。馬を六頭も使用しての馬鹿みたいにでかくて高い台に運ばれた彼はそれはそれは気持ちのいい笑顔を浮かべていた。俺だったら苦悶の表情を浮かべていただろう。
「これはもう。彼については諦めるしかありませんね」
「ここまで盛大に公表され、彼自身もあそこまでのパフォーマンスを行ったのでは連れ帰るのは不可能でしょう」
俺とミサさんの意見は同じだな。外でどのようなアナウンスがされているかは馬車の中までは届いてこない。それでも彼が何者であるのかは伝えられているだろう。そして、あそこまで大々的に目立つとね。
「でも、民の表情は何も分かっていないような」
「勇者という存在は民にとっては雲の上のような存在ですから。どのような意味を有しているのか理解していないのでしょう」
「ただの有名人といった感じでしょうか」
「勇者よりも副団長の方が知名度という点では高いでしょう」
「私が?」
ここまで一切の会話に入ってこない副団長ではあるが、あまりこういった話には詳しくないのだろう。戦闘に関しての知識はあるのだが、政治とか外交とかの方面には疎いんだよな。
「ちなみに副団長は他の国からどのような評価をされているのですか?」
「狂戦士と呼ばれていますね」
本人は何とも思っていないように言っているが、俺の口元は引き攣っているぞ。俺としてもその呼び名を否定できない。だって訓練中の副団長はまさしく狂戦士のそれだから。それに付き合っている俺も大概だな。
「仮にも騎士団の副団長が狂戦士は不味くないですか?」
「どのように呼ばれようとも役割を全うするのに何の影響もありません」
それはそうだけど。変なところで真面目なのに、どうして戦闘になると豹変するのかが分からない。こういった人は戦闘でも理知的に考えて行動するものだと思ったのだが。見た目とのギャップで先見が難しいな。
「止まった?」
「ちょっと失礼しますねー」
途中で馬車が止まり、その間にフォリアさんが乗り込んできた。なぜ彼女が俺のところにやってきたのかは目的を推測するのも難しい。もしかしたら事前の打ち合わせとかあるのだろうか。
「いやはや、馬鹿達の機先を制するのも大変ですよー」
「なるほど。そういうことですか」
緊急事態を予測して彼女がやってきたと。本来であれば、フォリアさんではなく誰か他の人物がこの馬車に同乗する予定だったのだろうが、それは彼女の主人としてもよろしくない事態だったと。こっちとしても顔の知れている相手の方が多少なりとも安心できるな。
「琴音さんは気難しい方なので、どこかの貴族と一緒だと一言も口を利かないでしょうからねー」
「気難しいかどうかは別として、相手をする価値があるのか判断してから喋るとは思いますよ」
「私の評価ですけど、同乗予定の方は価値なしですねー」
頭痛くなってきたな。そもそも俺と会話して、何の言質を引き出そうとするのか分からない。現在の状況から彼の引き抜きは成功したと言えるのに、それだけでは満足していないのだろうか。勇者を二人も抱えてどうするつもりなのかな。
「一人いれば十分でしょうに」
「一人よりも二人。強欲なのが上層部の方針なのでー」
「よく国が成り立っていますね」
「下の者たちが頑張っているおかげでしょうー」
途中で誰かが止めない限り、どこまでも値上げ交渉をしそうだな。多いに越したことはないだろうが、それだって限度というものがある。それに俺はこの国に所属する気は一切ないぞ。絶対に俺の性格的に合わない。
「それでフォリアさんが代理でやってきたと。事前の打ち合わせ自体は終わっていますよね?」
「不測の事態は色々とあるでしょうが、そこは琴音さんの臨機応変な対応でカバーしていただくということでー」
自国でフォリアさん側との打ち合わせは完了している。彼女やその上司にとって、今回の勇者勧誘はあまり好ましくない部類のイベントらしい。たった一人の人間を引き入れるために祭りを開くだけの資金を投入するのは頭が痛いよな。
「本当に勘弁してくださいよ。媚薬とかの怪しい薬を使われたら私にだって我慢の限界があるのですから」
「最悪な一手であるのは分かっていますよー。琴音さんに何かあったらお付きの方々が大暴れするのが目に見えますー」
「魔の手が迫る前に琴音様を救出し、あらゆる手を使ってでも自国へ帰らせていただきます」
「私はそれを全力で助力する所存です」
ニッコリと微笑んでいるのに全く笑顔に見えないのはどうしてなのかな。あと、副団長も楽しそうにその展開を想像しないでほしい。この二人が強行脱出を行ったら周囲への被害が甚大すぎる。
「ちゃんと釘を刺したつもりなのですが。それがどこまで効いているのかさっぱり分からないのですよねー」
「一枚岩でないのは把握していますが。やりそうな一派はどの程度いるのですか?」
「沢山ですー」
ほぼ全てと考えておこう。本当に頭が痛いな。つまり、俺は敵の腹の中に招待されたということ。逃げ道はないのだから腹を突き破る以外に方法はないと。だけどそれをやると開戦の火種になりかねない。なら穏便に済ますにはどうすればいいか。吐き出してもらうしかないよな。
作成のナンバリング間違えたと思ったら、投稿し忘れでした。
34話書き終わったの1月なのに、何で投稿してなかったんでしょうね。
本気で忘却していました。




