人事部
「少しいいかな?高橋君。」
「いいですよ。徳間次長。」
「君も人事部に入って長くなったね。」
「そうですか?まだ2年目ですよ。次長は人事に入って15年目ですよね。」
「いつの間にか、そんな年になっていたな…。人生あっという間に過ぎていくな。」
「すみません。話というのは何でしょうか?」
「ああ、すまんな。今度の人員の件で話があって。えっと、あの優秀な彼女…、蓮真さんと言ったか。」
「彼女ですね。配属先は営業の2部になっています。元々、経済科を出ている上に、志望も営業でしたからね。外回りとしてはかなりの戦力になると思われます。」
「その彼女なんだが、人事部に配属しようと思っているのだ。」
「…?以前の会議で営業ということで決まったと思いますが。」
「ほら、そろそろうちのメンバーも年を取ってきているだろう。」
「確かに僕が来てから誰も異動していませんからね。」
「そうだ。だから新しい雰囲気の人が要るだろう。」
「…確かに新しい人材は必要かと思います。しかし、人事部の採用はしていませんよ。蓮真さんは優秀ですから人事の仕事もこなすでしょうが、もったいないです。」
「ふむ…、しかしな…。優秀な者が来なくてはいかんのだ。」
「どうしてですか?」
「もうすぐ定年の人が居てな。」
「…田中さんですか?」
「ああ、何とかならないかと思ってな。」
「…無理でしょう。僕に相談することではありません。」
「どうするかな?」
その1年後、高橋は辺鄙な営業所へ移動となり、蓮真は退職した。田中さんは今も働いている。他の社員たちはこの話を話そうともしない。
本部に居なかった社員は話を聞こうとしたが、皆そろっていう。
おとなの事情であると。




