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「フィーリア・デイマック公爵令嬢。貴女にはここでそのまま帰られては困りますね」
ため息を吐いたフィーリアの前に、ご学友トリオが立ち塞がった。
「まだ、私に御用がありまして?」
黙って帰っちゃえばよかったと思ったが一足遅かったようだった。
これ以上なにを何癖つけられるのだろうと、フィーリアに緊張が奔る。
「フィーリア・デイマック公爵令嬢、私と結婚してください」
「ずっとお慕いしておりました。殿下との婚約が破棄された今、私の手を取っては頂けないでしょうか」
「フィリを笑顔にできるのは僕だと思うんだ。君の笑顔を、僕に一生守らせて欲しい」
3人が一斉に跪いてフィーリアへの愛を請う。その瞳はそれぞれ真摯な想いに輝いていた。
「そ、そんな。突然いわれましても、私、どうしていいのか判りませんわ」
いきなりすぎる3人からの愛の申し出に、普段の冷静さはどこにいったのかフィーリアは恥じらいに頬どころか首まで真っ赤になって立ち尽くしていた。
不安に揺れる瞳にたまった涙が、紅潮する頬が、はくはくと動くだけで声にならない薔薇の花びらにも似た艶やかな唇が動く様が。
普段の凛としたフィーリアからは想像できないその様子に、館内に動揺が走る。
(──かわいい)
卒業パーティー会場にいるすべての人の心が一つになった瞬間であった。