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星空の下で君の笑顔を思い出す  作者: 今宵 涙愛
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エピローグ いつだって、この場所で

 エピローグ いつだって、この場所で

 

     *****

     

「ねぇ、見て見てお父さん。綺麗な天の川が見えるよ。」

「……ああ。晴れてきてよかった。」

 星見丘で微笑み合う伸弥と夏月。私はそれを見て顔がほころぶ。まだまだぎこちない二人だけど、これならきっと大丈夫だね。……ほら、伸弥。早くあれを渡さなくちゃ。

「……夏月。」

「ん?」

 伸弥は自分のポケットからあるものを取り出そうとしたが、途中で手を止め、夏月を見る。

「そ、そういえば兄さんから何か貰っていただろう?開けてみたらどうだ?」

 もう、なんで早く渡さないの!じれったいなぁ!![#「!!」は縦中横]

 ぷぅ、と頬を膨らませて怒る私。それを他所に、夏月は自分のポケットを探り出し、小さな紙袋を開けてみせた。

「わぁ、綺麗な髪ゴム……!光ってる……。」

 中に入っていた髪ゴムを夜空に掲げ、キラキラと光る粒子に目を輝かせる夏月。それを微笑ましく見ていたら、夏月は紙袋の中にまだ何か入っていることに気がついた。

「……手紙?えーっと、『誕生日おめでとう、なっちゃん。シンはきっとヘタレだからまだあれ(、、)を渡してないよね。という訳で、僕のとは比べ物にならないほどの物を買ったであろうシンからプレゼントがあるよ!シンにおねだりしてみてね!』……だって。ねぇお父さん、プレゼント頂戴。」

「おまえ兄さんとつるんでからノリが良すぎるぞ。……頑張って渡そうとしたのに。無駄なこと書きやがって。」

 伸弥はブツブツと呟きながらやっとポケットから豪華なミニサイズの包装に包まれた何かを出して、夏月に差し出した。

 夏月は嬉しそうに袋を開け、中身を取り出す。

「これ……。」

「うさぎのシルエットが入った月のペンダントだ。夏月はファイルもヘアピンもうさぎと月のものだろう?だから、好きなのかと思って……買ってきた。学校では付けてはいけないから、休日にどこか出かけるときに付ければいい。」

 夏月はさっそくペンダントを首から下げる。月をかたどったものが、星の光を浴びてキラっと光った。

「ありがとう、お父さん。大切にするね。」

 ニコッと夏月が笑うと、伸弥は目を逸らした。照れ隠しだな〜。かっわい〜。

 ……ん?ところでおまえは誰かって?私はねー最初らへんにも出てきた謎の女でございます。

 ……ていうのは建前っていうか冗談。私は沙月。伸弥の妻であり、夏月の母。ついでにタカちゃんの先生だった。もう死んじゃったけどね。

 同じ場所にいるけど、違う世界にいる。決して交わることはない生と死の世界。夏月は私たち死者の姿は見えないけど、私は夏月の姿が見える。と言っても死者も思い入れの深い者しか見えないけどね。私は伸弥と夏月とタカちゃんと優弥くんとおねーちゃんしか見れない。後はすべて、空白。私たちは死者が見ることの出来る灰色ばっかりの世界しか見えないのだ。だから、私は夏月たちが見ている美しい光景はまったく見えない。ただ、記憶を頼りにどんな感じか想像するだけ。それに私たち死者は、結局のところ生きている人たちには触れられない。どんなに、虚しくても。

 でも今はそれでいい。私はそっちに行けないし、夏月たちがこっちに来るのは早すぎる。だから、今このとき夏月たちが幸せに暮らしていれば、それでいいんだ。

「星に手が届きそう。」

「……そうだな。」

 夏月は空を仰ぐ。そして、空に手を伸ばした。まるで私には見えない星たちを掴むように。

 不意に、伸弥がこちらを向く。バチッと目があった。そんなはずはない。だって、伸弥に私は見えていないのだから。そのはずなのに───

 ───……ふっ、

 伸弥は微笑んだ。愛おしそうに、微笑んだ。絶対に見えていないのに。それでもなお、その瞳には私が映っていた。

 ───ああ、私たちはまた出逢えたんだね。織姫と彦星の奇跡のように。

 私は伸弥の手に触れようとした。でも、触れられない。通り抜けるだけ。硬い床のようなものに手がついて、それが伸弥の感触ではないことに涙が出そうになった。虚しい。悲しい。さっきちゃんと大丈夫だって自分に言い聞かせたのに。だけどそんな中、たしかに伸弥の温もりを感じた。懐かしい、あの温かさに私は泣き出した。天の川は、私たちの奇跡を運んだのだ。

 私は涙を拭って笑ってみせた。

 ずっと、この家族と一緒にいよう。ずっとずっと、君のそばで───

 この星空の下で、君の笑顔を見ていよう。

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