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第三十三章:激突する戦士達

「天使共を皆殺しにしろ!!」


ビヒモス大将が先頭を切って両手に斧を持って天使軍の歩兵を蹴散らし後に部下達が槍や剣を手に斬りかかった。


対する天使軍も特攻隊長であるメタロンが重武装兵を率いて迎え撃った。


互いに刃を交わして斬ったり斬られたりして大量の血が大地を赤く染めた。


空も飛竜と天馬がぶつかり合い雷鳴や炎が飛び散り、まさに天が割れるかの如く巨大な音が天に響いた。


頭上に降り注ぐ矢の雨、血塗れになりながら剣を振い獅子奮迅の戦いをする兵士に地面に倒れ力なく横たわる兵士。


血で血を洗う修羅場であった。


その中でも夜叉王丸の軍団は一際に目立っていた。


砲弾を撃ち矢を放ちランスで敵陣を貫き剣などで相手を斬り月黄泉の軍団と緋夜の軍団が魔術などで相手を焼き殺し氷漬けにした。


「怖がるな!怯まずに先を進め!!」


朱鷹を片手に持ち夜叉王丸は迫り来る天馬部隊を蹴散らしながら下で戦っている部下達に怒鳴った。


部下達に聞こえたのか更に天使軍達を押した。


飛竜姿のダハーカに乗った夜叉王丸は朱鷹を巧みに操り天馬の翼や兵士の腕を狙った。


朱鷹は十文字槍で、この槍は斬れば薙刀、突けば槍、払えば鎌と万能槍と知られ巧みに攻撃方法を変えて迫り来る敵を薙ぎ倒した。


他の飛竜使いも天馬部隊の兵士を倒したり急降下して爆撃をしたり活躍を見せていた。


戦いは何時間も過ぎて多くの天使悪魔が命を奪い奪われた。


夜になり一時休戦する事にした。


「今の内に武器の手入れや疲れを癒して置け。ただし油断するなよ」


夜叉王丸は地面に腰を下ろす部下達に労いの言葉を掛けながら釘を刺した。


休戦とは言え、夜襲があるかも知れないからだ。


部下達に命令を言うと夜叉王丸も武器の手入れを始めた。


朱鷹は大量の血を吸い槍先が真っ赤になっていたが、刃こぼれ一つなかった。


ミカエルとの戦いで壊れてしまった鎧は新たに新調した鎧で前の鎧に比べて強度から身軽さまで全てが上だ。


背中に背負っている朧月は一度も抜いていないが、いつ抜くか分からない事から手入れは怠らなかった。


武器の手入れをしながら周りを見た。


血を流しながら必死に痛みに耐える者、僅かな休憩の内に睡眠を取る者、酒を飲み恐怖を押し殺そうとする者、大勢の者が入り混じっていた。


軍医であるソフィーは後方で担ぎ込まれてきた兵士の治療に当たっていた。


しかし、大勢のけが人の中には既に手遅れの者もいる。


そんな者たちは戦場において悪魔、天使を問わずに暗黙の了解でスティレットと呼ばれる慈悲の剣で止めを刺す。


ソフィーにもスティレットは渡されている。


どうしても助けられずにいる兵士を一思いに楽にさせる為だ。


医者として邪道ではあるが、少しでも苦しみから解放するためには仕方のない事だと夜叉王丸は考えている。


夜叉王丸も過去に何度か瀕死の者を手に掛けた事がある。


止めを刺すと苦しみから解放されて笑いながら死んでいった。


空しい気持ちになるが、そんな事を気にしていたら戦場では生き残れない。


戦争を経験した事のない者は人殺しや冷酷だと言うが戦争という殺し合いに参加した事のない者に戦争を批判する資格はない。


それなのに、世間は戦争で戦う兵士を批判する。


批判されても文句が言えない戦争もあるが、批判する権利がない者に批判されるのは我慢できない。


武器の手入れを忘れて感傷に浸っていると一人の兵士が近づいてきた。


「夜叉王丸様。皇帝陛下がお呼びです」


「分かった」


朱鷹を杖にして立ち上がると兵士に案内されてベルゼブルの所まで来た。


「その様子だと大丈夫のようだな」


椅子に座りながらベルゼブルは夜叉王丸に笑い掛けた。


皇帝であるベルゼブルは後方で戦の指揮を取る事に徹底していている。


周りは近衛兵がしっかりと護っている。


夜叉王丸の護衛であるシルヴィアとシャルロットには再びソフィーたち軍医の護衛を任せている。


かなり反対されたが、“命令”と称して有無を言わせなかった。


「何か用か?」


夜叉王丸は淡々とした口調で聞いた。


「天界から使者が来て余興を一つどうかと言われた」


「余興?」


「互いに一人ずつ武将を出して戦わせて腕を競い合わせるらしい。そしてお前を志望している」


「まぁ、建前はそんな所だが本当はお前を殺して士気を下げるのが目的だ」


「ふん。随分と遠回りな手を使うんだな」


「大勢の兵士の前でお前を殺す自信があるんだろう」


「その余興、出させてもらう」


夜叉王丸の言葉を聞いてベルゼブルはニヤリと笑った。


「お前ならそう答えると分かっていた」


直ぐに了解したと伝えて来ると言ってベルゼブルは伝令を走らせた。


「相手は空中戦を望んでいる」


「俺に空中戦を挑むとは自信満々だな」


夜叉王丸はゲリラ戦や野戦を得意としているが空中戦でもピカイチの強さを誇っている。


自分の陣地に戻り休んでいたダハーカを起こし余興の事を伝えた。


「・・・・ほぉう。俺らに空中戦を挑むとは、楽しめそうだ」


飛竜姿のダハーカは口の周りの血で染めながら剥き出しの牙を見せて笑った。


牙の間には肉の欠片などが挟まって戦慄を覚えた。


間もなくして伝令が戻って来て夜叉王丸を案内した。


案内された場所に行くと黄金の天馬に乗った真紅の鎧に身を包み金髪を三つ編みにした女性がいた。


歳はジャンヌより少し年上で朱色の瞳が真っ直ぐに夜叉王丸を見つめていていた。


「・・・・飛天夜叉王丸男爵か?」


流れるような綺麗で凛とした声で夜叉王丸に聞いてきた。


「以下にも飛天夜叉王丸だ。貴殿は?」


「私は死天使第七十部隊、隊長レオノチス・ヴィクトリア・ヴァレンタイン子爵だ」


「ほぉう。あの“紅の堕天使”と呼ばれているヴァレンタイン子爵か」


夜叉王丸は眼を細めた。


死天使第七十部隊、隊長レオノチス・ヴィクトリア・ヴァレンタイン。


またの名を“紅の堕天使”と呼ばれている。


死天使部隊の中で唯一の女性隊長を務め愛用の大鎌で何人もの悪魔を斬り殺してきた天使である。


そのヴァレンタインが夜叉王丸の相手をするのだ。


『・・・・・中々の余興だな』


初めは面倒な余興だと思っていたが少しは楽しめそうだと思い直した。


戦に出て強者に会うと血が沸き立ち勝負心が芽生えてくる。


昂る気持ちでいる夜叉王丸にヴァレンタインは右手に持った大鎌を向けた。


「我らが長であるミカエル様を倒した罪により貴様を倒す」


「くっ。随分と勇ましい女騎士様だな」


口端で挑発的に笑う夜叉王丸にヴァレンタインは額に青筋を立てた。


「・・・さぁ?始めようか」


夜叉王丸はダハーカに飛び乗ると飛躍してヴァレンタインも追うようにして天馬に乗って飛び上った。


ここに双方の歴史に残る名勝負が生まれる事になった。


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