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第二十七章:皇女のお披露目

母子ともに健康な女の子は真夜と名付けられて大切に育てられた。


真夜の容姿は黒髪に金眼で両親の容姿を均等に受け継いで赤ん坊ながら将来美人になる事を約束された娘であった。


城の者からは魔界の天使などと言われて溺愛されてベルゼブルの愛情は半端ではなかった。


そんな真夜を貴族たちに対して披露する披露目会が今夜、魔天楼で行われるのだが・・・・・・・・・


「ほぎゃ!!びぇえええん!!」


控えの間で大声で泣く赤ん坊がいた。


地獄帝国皇女、真夜だ。


「あー、よちよち。泣かないで。真夜ちゃん」


必死に泣き止まない真夜を抱きながら宥めようとする美夜。


「ほら?パパだぞ?」


ベルゼブルが笑顔で真夜を覗き込んだ。


「びいやぁぁあああん!!」


真夜は更に泣き声を大きくした。


「陛下っ。真夜様を泣かせてどうするんですか?!」


「そうだぞ!我が子を泣かせるなんて最低だぞ!?」


外野のビレトやルシュファー達が口々に避難の声を上げた。


それに拍車を掛けるように真夜の泣き声も大きくなった。


「どうしたら泣き止んでくれるの?」


途方に暮れる大人達を尻目に真夜は泣き続けた。


「どうかしたのかい?美夜ちゃん」


扉を開けて軍服姿に身を包んだ夜叉王丸が入って来た。


今夜の疲労会でも護衛という事で出るために出席したのだ。


「あ、飛天さん。真夜ちゃんが泣き止まないの」


美夜が助かった、という表情をした。


「どうせ、そこの馬鹿が泣かせたんだろ?」


ベルゼブルに呆れた眼差しを向けながら美夜から真夜を受け取るとさっきまで泣いていた真夜が泣き止んだ。


「おお、よしよし。良い子だな」


抱きながら真夜の頭を優しく撫でた。


「うー、きゃあきゃあきゃあ」


真夜は嬉しそうに笑った。


「真夜ちゃんはお兄ちゃん子ね」


美夜が紫色の瞳を細めて笑いながら真夜の指を撫でた。


ベルゼブルと式を上げてから美夜は魔族になった証として瞳の色が変化して黒から紫色になっていた。


「何で、俺の子供なのに・・・・・・・・」


ベルゼブルは完全に不貞腐れて夜叉王丸を睨んだ。


「子供は本当に優しい奴を理解するんだよ。なぁー真夜」


夜叉王丸が笑い掛けると真夜は頷いた。


「そ、そんな・・・・・・!!」


ベルゼブルは奈落の底に落とされたように呆然とした。


真夜が泣き止んでから十分後に披露会に出た。


護衛をする予定だったが真夜が夜叉王丸から離れるを泣いて嫌がったので夜叉王丸が抱いた状態で披露目する事になった。


「この方が真夜様だ」


侍従頭が夜叉王丸を促して一段高い場所に立たせた。


『何で俺がしなきゃいけないんだよ』


嘆息しながら真夜を高々と上げた。


「きゃあきゃきゃ」


真夜は高い高いをされたと思ったのか嬉しそうに笑った。


その笑顔を見た貴族たちはほうと溜め息を吐いた。


赤ん坊ながら類い稀なる容貌と純粋な笑顔に癒された。


物の数分で披露は終わり宴が幕を上げた。


何時もなら風のように立ち去る夜叉王丸だったが真夜を抱いたままで帰る訳にはいかない事から宴に残る事になった。


「皇女様の誕生、御喜び申しあげます」


「可愛い姫様ですね」


「夜叉王丸様って子供好きなんですか?私も子供好きなんです」


何人もの貴族が真夜を抱いた夜叉王丸に言葉を掛けて自分を売り込んでいた。


エレナ嬢との婚約を破棄したが、逆に誇り高い皇子と取られてしまって人気が更に高くなった。


「あうっ。きゃあきゃあ」


夜叉王丸が作って渡した風車を持ちながら笑顔を振り撒いていた。


その間ベルゼブルは不機嫌を通り越して不貞腐れた状態で美夜が宥めていた。


「なぁ、真夜。そろそろ帰っていいだろ?」


些かうんざりしてきた夜叉王丸は真夜に話しかけた。


「むぅー、めっ!!」


言葉を理解したのか不明だが、真夜は頬を膨らませた。


「・・・・勘弁してくれ」


項垂れて嘆息する夜叉王丸。


「皇子様」


落ち込む夜叉王丸に軍服姿に身を包んだシルヴィアが話し掛けてきた。


「悪いな。シルヴィア。護衛をすっぽかして」


「本来なら皇子様も参加する筈だったのですから構いません」


事務的な口調で話すシルヴィアに夜叉王丸は苦笑した。


「そんな態度だと真夜が怖がるぞ」


抱いていた真夜を見せる。


「臣下である私が皇女様に馴れ馴れしく出来ません」


あくまでも事務的な態度を取るシルヴィア。


「やれやれ。このお姉ちゃんは駄目だな」


夜叉王丸は真夜に話しかけた。


「めっ、めっ」


真夜はシルヴィアを小さな乳白色の指で指した。


「あらあら。皇女様に怒られるなんて臣下としてなってないんじゃないですか?」


困惑するシルヴィアにグレーの軍服を着たシャルロットが口端を上げて笑い掛けてきた。


「白豹っ」


シルヴィアは鋭い眼差しをシャルロットに向けた。


「こんばんは。飛天様」


シャルロットはシルヴィアを無視して夜叉王丸に話しかけた。


「おう。警備ご苦労様」


夜叉王丸は労いの言葉を掛けた。


「いいえ。大切な飛天様と皇女様の身を護るためなら何でもありません」


真夜に笑い掛けるシャルロット。


「きゃあきゃあ」


シャルロットの笑顔に答えるようにして笑う真夜。


「まぁ、笑ってくれましたわ」


喜ぶシャルロット。


「くっ」


シルヴィアは悔しそうに歯ぎしりした。


「あら?悔しいなら貴方も真夜様に笑ってもらえば良いじゃない」


「もっとも事務的な口調で臣下の態度しか取れない堅物に真夜様は笑ってくれないでしょうけどね」


「・・・・私に喧嘩を売っているのか?」


低い声で喋るシルヴィアにシャルロットは不敵に笑った。


「別に。ただ事実を言っただけよ」


シャルロットは平然とした態度を取った。


「・・・・・」


「・・・・・」


互いに無言で睨み合った。


夜叉王丸は危機感を感じたのか急いで真夜を抱いて離れた。


「腹が減ったな」


真夜を抱いていると腹の虫が小さく鳴いた。


「何か食物でも調達してくるかな?」


隅っこのテーブルに置かれている食べ物を見る夜叉王丸。


しかし、真夜を抱いたままで取るのは難しい。


「誰か預けられる奴はいないか?」


ベルゼブル達は貴族たちと談笑をしてダハーカ達は屋敷で留守番役。


「あ、あの、ひ、飛天様っ」


背後からリリムが話し掛けてきた。


「リリム。ちょうど良い。真夜を暫く預かってくれないか?」


問答無用でリリムに真夜を抱かせた。


「真夜。少しリリムお姉ちゃんと遊んでてくれ」


ポンポンと優しく頭を叩き食べ物を取りに行った夜叉王丸を真夜は笑いながら手を振った。


「うー、きゃきゃ」


真夜は小さな手でリリムの髪を掴もうとしていた。


「・・・・・可愛い」


リリムは赤ん坊を優しく見つめた。


『飛天様なら子供を優しく育ててくれそう』


夜叉王丸なら自分との間にできた子供を一緒に育ててくれると甘い妄想を描くリリム。


「・・・・こんばんは。リリム様」


妄想していたリリムの頭が一瞬で冷めた。


「あら?貴方も来ていたの?エレナ」


リリムは真夜を抱いたまま振り返った。


「えぇ。夜叉王丸様が来ると聞いたので」


「振られたのに諦めないの?」


「我が家の家訓で諦めは負けを意味するので」


「諦めも肝心って言うわよ」


「そんなものは敗者の戯言です」


「諦めたら負けです。だから、私は諦めません」


真っ直ぐにリリムを睨むエレナ。


「・・・・・・」


リリムは真っ向から受け止めた。


「ん?ひぃ、ひぃんっ」


真夜は二人の険悪な雰囲気を感じたのか泣き出そうとしていた。


「ちょっと真夜ちゃんが泣きそうじゃないの」


紫のロングドレスと着たペイモンと黒のロングドレスを着たベリフェゴールが近づいてきた。


「まったく女の子が赤ちゃんを泣かせるなんて情けない」


ペイモンはリリムから取り上げるように真夜を抱き上げた。


「そんな事じゃ飛天に嫌われるわよ」


ベリフェゴールが眼鏡のズレを直しながら二人を見つめた。


『うっ・・・・・・』


二人は口籠った。


「もっとも貴方達みたいに未熟な娘じゃ飛天は振り向かせられないけどね」


ペイモンが意地悪そうに笑った。


「飛天は“大人”の女性が好みなのよ」


真夜を抱きながら豊潤な胸を強調させるペイモン。


「違うわよ。飛天は“知的”な女性が好みよ」


ベリフェゴールが対抗するように言った。


違うなど違わないなど言い合う二人。


「どっちも大して好みじゃない」


そこへ夜叉王丸が美夜を連れて割って来た。


「俺の好みは優しくて癒される女性だ」


真夜を美夜に渡しながら夜叉王丸は答えた。


「飛天さんって意外と古典的な女性が好みなのね」


美夜が意外そうな顔をした。


「自分勝手な女には散々な目に遭ったからな」


苦笑しながら夜叉王丸は答えた。


「ふぅん。それで、好みの女性は近くに居るの?」


「あぁ。俺の身近にね」


「もしかして・・・・・・・」


美夜が何かを言おうとしたのを夜叉王丸は指を唇に当てて抑えた。


「そこから先は言わないでくれ」


口を抑えられながら美夜は頷いた。


「じゃあ、俺は帰るよ」


夜叉王丸は真夜の頭を撫でると舞踏会場を去って行った。


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