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第二十章:宴と女難

夜叉王丸が斬った男が妖狸の王で大将を失った妖狸族は戦える兵も僅かであった事から全面降伏して雇われ兵だった妖狼族も降伏して一件落着となった。


攫われた娘たちは地下牢から救い出されて親たちの元へと帰って降伏した妖狸族は唯一連合軍に着いた四国狸が厳密な管理の元で拘束され妖狼族は王と家老が自害する事で治まった。


妖狼族の王は、浪費癖が激しく今回も金目当てで雇われた事で兵たちは無理やり徴兵された事で罪は問われなかった。


この戦で風の翼の被害者は各部隊長の報告で合計三百人の死者が出て負傷者は百五十人だった。


軍医がいたので救える命もあった事から軍医が居なければ五百人は死んでいたと言われている。


戦が終わっても夜叉王丸は直ぐに魔界に帰還せずに負傷者の治療と妖鳥族の里を直す為に日本に残った。


軍医であるソフィーは診療所を閉めている訳にはいかないのでシルヴィアとシャルロットが護衛として着いて行った。


日本に残って三か月あまりが経ち漸く復旧の目途も付いた事で今夜は戦勝を祝う事と里の復旧を願い宴が模様された。


「わははは!!もっと飲め飲め!?」


ダハーカが大声を上げて戦友たちに酒を飲ませた。


楽師が演奏を奏でる中で舞姫たちが勝利の舞を舞って、それを酒のつまみとしている者もいれば意気投合して飲み合う者もいる。


重傷を負った風疾は将皇が労わるようにして支えて、それを女中たちが取り囲んでいた。


むろんプレイボーイであるゼオンなども女中たちと楽しげに会話をしてフェンリルやヨルムンガルドも同じだった。


茨木童子は家老たちと釣りの話題で盛り上がっていた。


そんな皆が楽しげに酒を飲み交わす中で一ヶ所だけ険しい空気の元で酒を飲んでいる者がいた。


妖獣大戦の英雄である夜叉王丸だ。


彼の左右には二人の女性が座っていた。


「・・・・飛天よ。妾の酒を飲んでたもれ」


右側に座った赤い十二単を着た月黄泉が夜叉王丸にもたれ掛かるようにしてお猪口で夜叉王丸の盃に酒を注ごうとした。


「そんな女狐より私の酌を受けて下さいよ。飛天様」


左側に朱色の振袖を着た緋夜が月黄泉と同じようにしてもたれ掛かりながら夜叉王丸の盃に酒を注ごうとした。


「小娘の酌などより妾の酌の方が良いじゃろ?」


「ふん。女狐が」


「鳥娘が」


バチバチッと火花を散らす中で夜叉王丸は嘆息した。


戦が終わってから今の状態が続いている。


月黄泉は夜叉王丸の手伝いと称して妖鳥族の里に留まっているが夜叉王丸が目当てだと直ぐに解る。


戦中に夜叉王丸の姿や態度で、どうやら好意を得た様子で緋夜は最初から夜叉王丸に好意を抱いていた。


二人がいがみ合うのに時間は掛らなかった。


『・・・・酒くらい静かに飲ませてくれよ』


切実な願いを叫んだが、その願いは聞き入られずに宴が終わるまで続く事になった。


宴が終わった三日後に夜叉王丸は軍を率いて日本を去り月黄泉も里を出る事になったが去る時も一騒動あった。


「飛天。何か、あれば直ぐに頼りをくれ。主の為なら何でもするぞ」


「飛天様。こんな女より私を頼って下さい。きっと力になります」


その時も互いに言い合って決定的な仲となった。


「・・・とんだ女に惚れられたもんだな。飛天」


飛竜姿になって夜叉王丸を頭の上に乗せて飛びながらダハーカは意地悪な笑みを浮かべた。


「うるせぇ」


不貞腐れた口調で返事をした。


「まぁ、何はともあれ戦には勝利したのですから良いではありませんか」


ヨルムンガルドが宥めるように言った。


「まぁ、な。これに懲りて戦なんて起こさないだろう」


日本の方角を見て喋る夜叉王丸。


「さぁて、早く帰ってジャンヌに報告しないとな」


ダハーカの手綱を強く握り前に向き直る夜叉王丸。


後に月黄泉と緋夜の力を借りる事を夜叉王丸達は知らない。


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