表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/39

第十八章:新しい相棒

妖狸の里に着いた夜叉王丸は妖怪王、魎月の陣に向かった。


「地獄帝国から参った飛天夜叉王丸だ。妖怪王、魎月殿にお会いしたい」


陣幕の外で槍を構えていた兵たちは夜叉王丸の名を聞いて急いで陣幕を開けた。


「シルヴィアとシャルロット、それから部隊長は着いて来い」


ダハーカから降りて歩き出す夜叉王丸の後をシルヴィア達が追った。


「おぉ。飛天。よく来てくれた」


中央の椅子に座った赤の大鎧に身を包んだ魎月が立ち上がって夜叉王丸に笑い掛けた。


しかし、どこか影が落ちていた。


左右には妖狐、妖猫、四国狸が座って夜叉王丸達を奇怪な眼差しで見ていた。


「だいぶ手こずっているようだな?」


「あぁ。空堀の連中が思いの外に強くてな」


「こちらの戦力、被害は?」


「使える兵士がざっと三千人。被害は五千人だ」


「敵の方は?」


「こちらの倍で一万五千人だ」


「俺の軍を合わせても遠く及ばないな」


深刻な表情も見せない夜叉王丸に他の武将たちは訝しんだ。


「王よ。この方は役に立つのですか?」


「このような輩などいなくても我らだけで勝てます」


「他種族が割り込んで来るのは余計な気遣いです」


口々に夜叉王丸を批難する武将たちにシルヴィアとシャルロットは青筋を立てていた。


中でも痛烈に夜叉王丸を批判する者がいた。


妖狐族の王、月黄泉だ。


彼女の姿は、とても戦場で動く姿ではない。


赤い十二単に身を包んだ姿は戦場に出る姿とは思えない。


「たかが人間風情の悪魔が妾を助けるなど笑止千万。兵を連れて帰るが良い」


シルヴィアとシャルロットが剣を抜こうとし将皇も怒気を放っていた。


フェンリルなども牙を剥き出しにして今にも跳びかからんとしていた。


しかし、当の夜叉王丸は気にしていない様子だった。


「魎月。俺に何か渡す物はあるか?」


唐突に喋る夜叉王丸に魎月は驚いたが直ぐに理解したのか近くにいた従者に命じて何かを取りに行かせた。


「流石だな。気付いたのか?」


「まぁな。鵺から聞いた」


今頃は城で情報を探しているだろうと笑う夜叉王丸。


他の武将たちは目を見張った。


「あの厳重な警備の城に侵入など・・・・・・・・」


驚きを隠せない武将たちを気に掛けもせずに夜叉王丸は笑っていた。


暫くすると従者が三人係で布に包まれた大きな物を持ってきた。


「一本は俺からで、もう一本は鞍馬天狗からだ」


布を剥ぎ取ると紺色の鞘に収まった大太刀と紅色の十文字槍が見えた。


「・・・・ほぉう。中々の代物だな」


二本から放たれる気に夜叉王丸は目を細めた。


「太刀の名前は朧月。かの蛇神、夜刀神の骨から作り上げた刀だ。槍の名前は、朱鷹。こっちは天狗達の骨などから作り上げた」


朧月と朱鷹を夜叉王丸に向けて投げた。


二本を受け取った夜叉王丸に魎月は語った。


「その二本はお前の為に作った。だが、それを使いこなせるかは、お前の力次第だ」


「手懐かせるのが難しそうだな」


苦笑する夜叉王丸。


「それじゃ、ちょっと軽く使ってみるか」


朧月を背中に背負い朱鷹を右手に持つと夜叉王丸は陣幕を出ようとした。


「少し要塞を一つ壊して来る」


「気を付けろ。妖狼族が護っている」


「金で雇われた狼など犬同然だ」


魎月は苦笑した。


「待て!!」


陣幕から出ようとした時に月黄泉が立ち上がって夜叉王丸に怒鳴り掛けた。


「貴様は妾の言った事が理解できないのか?妾は助けなど要らんと言ったのじゃ。直ぐに帰れ」


金色の瞳に怒気を宿し肩まである灰銀のセミロングを逆立たせて月黄泉は夜叉王丸を睨んだ。



「誰もお前みたいな女狐を助けるなんて言った覚えはない。俺が助けるのは攫われた娘たちだ。それにお前みたいに後ろで陣を構えて呑気にしている大将に指図をされる覚えはない」


月黄泉を見もせずに夜叉王丸は陣幕から出て行った。


「妖怪王!あんな奴と一緒に戦うのですか?!」


月黄泉が怒鳴りながら魎月に食って掛った。


「月黄泉殿。奴の強さは本物です。そう怒らないで」


魎月が宥める口調で言った。


その時、城の方で大きな爆発音がした。


城を囲んでいた要塞が一つ炎に包まれていたのだ。


「ほぉう。さっそく使いこなしたか」


ダハーカが目を細めた。


「・・・・な、何じゃ?一体・・・・・・・・」


月黄泉を始めとした武将たちは茫然としていた。


「戦の狼煙にはちょうど良いな」


月黄泉を宥めていた魎月が不適に笑った。


炎に包まれる要塞から黒い翼を出した夜叉王丸が陣幕に向かって飛んで来た。


「よぉ。中々の威力だな」


陣幕に降り立った夜叉王丸は朧月と朱鷹を掲げてみせた。


「よく短時間で手懐けたな」


魎月が感嘆の声を上げた。


夜叉王丸が要塞に行き破壊した時間、僅か三分。


「コツを掴めば簡単だ」


ニヤリと答える夜叉王丸。


身体から放たれる臭いは炎で焼けた者たちの臭いが微かにした。


「諸君。これからは夜叉王丸殿を加えて城を叩く。良いな?」


武将たちは魎月の言葉に頷くしかなかった。


要塞を一つ破壊された妖狸の軍勢は慌てて焼け石に水程度の防御壁を気付いた。


時刻は夕日になり夜になる所だった。


「今日は、ここまでだな」


魎月が従者に退却させるように命令すると兵たちは直ぐに退却してきた。


「明日の朝一に攻撃する」


総大将の言葉に武将たちは頷くと一人ずつ陣幕を離れた。


最後に残った月黄泉は夜叉王丸を力の限り睨んできた。


「・・・・たかが人間風情が粋がるな」


去り際に夜叉王丸を見上げて囁いたが夜叉王丸は気にもしなかった。


「さぁて、俺らも休むとするか」


夜叉王丸もダハーカ達を連れて陣幕を出た。


夜になり夜叉王丸は連合軍と離れた場所に野営陣を築いて軍議を開いた。


「鵺の掴んだ情報によれば攫われた娘たちは城の地下牢に閉じ込められているらしい」


セブンスターを蒸かしながら夜叉王丸は鵺の得た情報を口にした。


「地下牢か。それなら砲弾などで傷つく可能性は低いな」


茨木童子が左手に填めた大砲を撫でた。


「それからもう一つの情報は空堀の長さは二メートル。この距離じゃ騎兵や戦車部隊では突破できない」


「それじゃ、どうするんだ?」


ダハーカが腰に差した大剣の柄を握りながら尋ねた。


この大剣は別名を“破滅の序曲”と言い文字通り使った時に破滅へと誘う剣である。


「どんな城でも必ず手薄だったり脆い所がある。そこを突く」


ゼオンの言葉に夜叉王丸が頷いた。


「これが城の見取り図だ」


夜叉王丸が懐から見取り図を取り出し机の中央に乗せた。


「城の西側には要塞がなく堀だけだ。空堀は深くないし、飛び越えられる長さだ」


「弓弩部隊と突撃部隊はバルト戦と同じく正面から突破してくれ」


フェンリルと弓弩部隊の隊長は頷いた。


「鵺。お前は城に侵入している部下を引き連れて内部から敵を攻撃しろ」


後ろで控えていた鵺に命令する。


「放火、偽情報、暗殺、使える手は何でも使え」


鵺は一礼すると姿を消した。


「将皇殿には妖鳥族の軍を指揮して貰いたい」


「私が、ですか?」


「怪我で大変かもしれないが頼めますか?」


「この命に掛けても・・・・・・・・」


将皇は片膝を着いて頭を垂れた。


「シルヴィアとシャルロットは軍医たちの護衛を頼む」


二人は不服そうだったが頷いてくれた。


「この作戦はスピードが勝負だ。素早く攻撃をして相手に反撃を与えさせず徹底的に叩け」


夜叉王丸の言葉に皆は頷いた。


軍議を終えると各部隊の隊長たちは兵士たちに作戦を説明して明日の準備に取り掛かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ