ジーナ
「ジーナ!!」
俺は駆け寄り、ジーナを揺さぶった。
ジーナはもう既に虫の息だった。
「大輔……」
「ジーナ! 喋るな! 今治してやる」
実は俺はボノの治癒魔法をスキル吸収でこっそりパクっていた。
まさか使えるとは思ってもいなかった。
だが……
「クソッ!! 全然治らねぇ! どうなってんだ」
「大輔、もういいの」
ジーナは小さな声で呟いた。
「いや、まだだ! まだ何かあるはず……」
「もういいの。私はあなたを守れた。恩返しが出来て私は満足だよ?」
恩返し……?
恩を貸した覚えは……。
その時俺はふと思い出した。
俺が異世界に来た時にいた少女。
それがジーナだとすぐに分かった。
「私はあなたに恩を返したくて、ずっといつ返そうか悩んでて付いてきたけど、やっと返せた」
今昔の事を思い出していた。
ジーナが俺の家に勝手に入ってた事も、名乗ってもないのに自分の名前が分かったことも、異世界から来たと告白した時驚かなかった事も、それらはジーナが異世界に来た瞬間から俺のことを知っている事に繋がっているんだと思った。
毎日知らずのうちにストーカーされて護られてたんだ、俺。
そう思った時、守られるようになったんだと思って目からミネラルウォーターが出てきた。
「ゴホッ…… 初めてあった時、強い大輔を見て何か胸が締め付けられた感じがした」
俺はまだ喋るなと言って治癒魔法をかけたがジーナが手を掴んで除けてきた。
そしてジーナの目からも涙が出てきて、
「死んで大輔に会えなくなると寂しいって思った今やっと、恋してたんだなって気づいた」
俺は声が出なかった。
「ありがとう、大輔」
〈好きだよ〉
そう言ったジーナはそっと息を引き取った。
俺は護るべきものがいたにも関わらず、鍛えもせず気づきもしなかった。
護れたかもしれないのに、俺は強いと勘違いしていた。
それが仇となった。
自分の不甲斐なさに後悔した。
自分が無力なことを憎んだ。
ジーナが死んだことを悲しんだ。
そんな事をいくらしても自分の中では収まりきれない。
溢れ出るものを誰にぶつける?
俺?ジーナ?エシア?
いや違う、あいつだ。
あいつが殺さなければ、俺はこんな思いをする事は無かった。
あいつが殺さなければ、ジーナは俺に気づかせてくれる時間を与えてくれたかもしれない。
あいつが…あいつが…あいつが…あいつが…あいつが…あいつが…あいつが…あいつが…あいつが…あいつが…あいつが…あいつが…あいつが…あいつが…あいつが……………あいつがいなければ、
そうだ、あいつがいなければ良かったんだ。
あいつがいなければ俺はこんな思いをしていないし、ジーナは今でも生きてる。
分かった、あいつが全部悪いんだ。
それなら、殺せばいいんだ。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
「殺してやる!」
こんにちは!Kartianです!
ジーナが死んで大輔が狂ってしまいましたね。
狂う表現が難しくて、結構考えましたが、いい感じになってますかね。
次の投稿は明日10月19日(木)22:00です!
お楽しみに!