エピローグ
丘の上に、一人の少年が座っていた。少年は最近この村に来たばかりで、友達も全然いない。同じ年頃の子供達が輪になって遊んでいるのに、彼はその中に入ることができず、逃げるように丘にやって来ては辺りの景色をながめていた。丘からの見晴らしは最高だった。風に揺れる緑の草木、流れる小川、北のトゥーガ連峰、そして、天高くそびえる塔……。「あるものは、ある!」と教えられてきた塔だが、こうして改めて見ると不思議だった。
少年は考えた。あの塔はいつ、誰が、何のために建てたのか? 考えたが、分からなかった。しかし、そうして考えていると寂しさを忘れられるので、少年はそのまま塔のことを考え続けた。
「塔のことを考えてるの?」
しかしその時、少年は不意に後ろから声をかけられた。振り返ると、そこには金色の髪が綺麗な、年も同じぐらいの男の子が立っていた。
「僕、あの塔に登ったことあるんだ。天辺までね……」
「え?」
男の子の言葉を聞いて、少年は驚いた。「あるものは、ある!」が当たり前のこの世の中で、まさか塔に登る人間がいるとは思ってもみなかったからだ。しかし、唖然とする少年に向かって、男の子は言葉を続けた。
「でもね、すごくつまらなかったよ。階段だけで、他は何も無いんだよ。村でみんなと遊んでいる方が面白いよ」
男の子はそう言うと、少年の手を取った。
「僕はニコラ。こっちに来てみんなと遊ぼうよ!」
終わり
ここまで読んでくださった皆様
どうもありがとうございました。
楽しんでいただけたでしょうか?
少しでも心に残るものがあったら嬉しい限りです。
書いていた私は、少し童心に返りました。
一人ぼっちが嫌いなのに、一人ぼっちになりたがる男の子……
どこかにこんな奴いたなぁ、と思ったら自分でした。
もちろん、私は金髪じゃありませんが……。
話がそれましたね。
それでは最後にもう一度、
御愛読ありがとうございました。
そして、お疲れ様でした。
と、忘れてた。
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それでは、またどこかで……。