表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

引き裂かれる2人

次に気がついたとき、私はかかりつけの病院のベッドの上だった。

「あ、気がついた?」

「先生・・・・・」

「まだ休んでなさい。多分疲労から来た発作だと思うわ。久しぶりに長い距離を歩いたから疲れたんでしょ。それにしても、彼、すごいわね。あなたの荷物からここの診察券探して、今から救急車呼ぶよりも背負って病院まで運んだほうが速いって判断して、駅からここまでおぶって運んできたんだから。もしかして彼氏?」

「は、はい・・・・・」

私のことをおぶって―――。遼の背中に乗せられて運ばれている自分を想像してしまい、ちょっとだけ顔が赤くなる。

「ま、とりあえずしばらくはまた病院暮らしね。あなたの学校にも近いし毎日寄ってもらえば?」

「そう・・・・ですね。」


一方その頃――――。

遼は病室の外で結那の両親と話していた。

「成程。で、結那をここまで運んできてくれた、というわけだね?」

「はい。」

「ありがとう。君の判断がなかったら結那はどうなっていたか。」

「お父さん。煽てないでください。遼――とか言ったわね。いい、あんたが連れ回したから結那は倒れた。つまりあなたのせい。」

「母さん、それは結果であって遼くんのせいじゃ――。」

「黙っててください。いい、あなたが近くにいると結那は苦しむの。だから今後一切結那には近づかないで。」

一切結那に近づくな。その言葉が遼の胸に突き刺さった。自分のしたことは結那を苦しめていたのか。デートの誘いを断るべきだったのか。いや、その前に――――好きにならなければ、そもそも出会わなければ良かったのだろうか―――――――――。

そうだ、きっとそうなんだ。俺が居なくなればあいつは苦しまないんだ。手を引くべきなんだ。

「・・・・・・・・はい。」

「わかってもらえたようね。」

結那の母親は満足げに言い、席を立った。

残された遼は、静かに立ち上がると結那の荷物を病室の前に置き、静かにその場を立ち去った。


今後一切関わるな。その言葉は結那にも届いていた。そして、遼がその条件を飲むのも。

―――遼が、私の前から消える―――?それが、私のためなの――?私は、遼がいることによって苦しむの―――?遼は、私を苦しめる存在なの―――?

その時、病室の外でガサッという音がした。遼かもしれない―――。逸る気持ちを押さえながら、ゆっくりと病室の扉を開けた。すると、そこにあったのは紙袋だけ。今日、遼と一緒に行った店のだ。

そして、その取っ手の紐にメモが結び付けられていた。

「君を苦しめたくない。さらば、愛した人。ここまでだ。」

これを見て私の迷いは消え失せた。もう言いつけなんてどうでもいい。私は走り出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ