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推敲
1.燦爛たる満月は去れど
いまだ夜の情熱は醒めず
群青は散りてたゆたふ片雲へ。
やうやう彼方へ沈む夢
鮮烈なる輝きは、なれど
流れるそよ風に、とばしらず。
露薫りし草原は何処へ
またたくに及ばざる我を
いざなっているのであらうか。
2.一筆によりて綴らば
我は脳裡で、狂乱に踊れど
なほ気高き女神、その肢体を
雁字搦めに奪い、黒墨が鎖で
紙といふ牢獄へ縛りやり
耀きより編まれた天の衲衣は
はかなき麻布へうらぶれる。
3.今宵 我が 焚火 へ
萎えばみし紙をほうほうと投げ入れば
天へたち昇る一筋の烟。
されど、なほ、人智及ばぬ
曇ることなき八十神が晩餐を思ひ、
我はかの神を陳腐なる風姿より
解き放たむ。
4.ふと木の弾ける音に、異な色気を知り、
芳ばしさ烟る夜、薪ねぶる灯火が一つ
沸き立つやうなる舞踏へ誘って。
狭き現つ世のほか、煤こけし地を踏みて
いま暮れゆく夜闇に、沈黙は猶予ふ。