旅路
<1>
遠くにいきてぇよぉ
一発キメてもよぉ
みえてんのは、なぁ
おらぁドブに華をみれねぇよぉ
借金も想像も電波も
およばねぇところに
いきてぇよぉ
めちゃくちゃいきてぇよぉ
そんでなぁ
一杯の晩酌をしてもらうのさ
月が傾いちまうくらいの
美人によぉ
<2>
月にいきてぇんだよぉ
息ができねぇとか
華がないんだとか
雲もうかんでねぇとか
音もないんだとか
どうでもいいんだって!
おれも男だからさぁ、穴が
あったら突っ込みてぇよぉ
って思うみてぇにさぁ
月にいきてぇんだよぉ
だって綺麗だろうがよぉ
仕方がねぇだろうがよぉ
ほら、昔の誰だっけ
文豪もさぁ、月が云々って
言ってんじゃんかよ
美人を抱く夢見るみてぇにさぁ
月まで昇って逝きてぇんだよぉ
熱燗揺れる徳利引っ提げてさぁ
地球を肴にして乾杯してぇんだ
<3>
アダージョ調にあるいていこうか
崖へむかってあるいていこうか
あるかさてる なんていわない
この一歩だっておれの選択、
繰り返し続けた最良の果てさ
穴を掘ることに意味はあるかい
犬じゃねぇし、そこに財宝が
まってるわけでもねぇんだし
まったく今さらファンタジーなんて
いっそさぁ、食ってくれよ悪いドラゴン
後ろからひっしに逃げるおれをぱくりって
そんでもって斬られてくれよ
勇者サマとかいう主人公にさ
人を食ったとかなんだかの咎で
きこえるぜ、おいたてる音がよ
ああ今さら足取りが重いなんて
まったく笑えるよなぁ死神
この期におよんで後悔してっけど
もうついてたみたいだ終の場に
これも、ま、おれの選択だからよ、な
まったく律儀なやつだな
最期まで顔を見せないなんて
たしかにダチじゃねぇけどよぉ
あ、そういえば聞いてくれよ
これからの果てなき旅路の
黒ずくめの ともがら ぁ
さっきガキがおれをみてた
まったく軽蔑しちまった目で
それこそゴミをみるような目で
それでいいんだ、それでいい
それさえ判ってんだったら
やっぱりいいかもしれねぇ
せいぜい悔しがっていろよ
あの子におれは繋げたぜ?
お前にだって、奪えないモンはある
あっ、ちくしょう、
背中を押したな死神め
落ちてくのがこんなに遅いなんて
お。おまえさんよぉ
女だったのかよぉ
だったらさぁ、早くいえよな