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幻影(旧タイトル:七変の幻影)  作者: 新染 因循
文学フリマ短編小説賞応募作品
2/7

独白

<1>


午後十時四十三分。

マンションの四階の

窓の金属枠に腰かけ


まばらな街灯光の中

ふと誰かの影は伸び

窓辺から跳ぶカラダ


僕の手の記録帳は

三途の川でぬれて

ぼろぼろによれて

白紙になり損ねた

ゲンコウヨウシ。



<2>


口だけがやたらめったら気取り

encyclopediaが縫われている目の

四肢を欠如した僕のからだ。


石の頭だけを大きくして

あらゆるものを知っていると

古ぼけた紙のにおいを吸いこんだ。


欠落した五感の愉悦さえもが

文字列として脳にinputされ

僕には四肢が欠如したままだ。



<3>


黄ばんだ写真に

奥行きだけ姿をみせず

感性の焚いた閃光が

いま一つの詩に


朧な記憶が

燭台のうえに

霧のように

揺れている


戦慄くのは

僕の口か脳か四肢

製糸の女工のように

欠落を縫う


きのう書いた詩は

今日の紙くずになり

きのうへ祈って

花束となる



<4>


滔々と流れる

記憶の分岐。


畔にたたずむ

所在なき僕。


水面にうつる

かつての僕。


石にぎる指に

思いが白む。


寂しげな音に

波紋は一つ。


()()()に崩れ

水面は不定。


沈みゆく石は

やがて流れ。

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